【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第8回前編】予期せぬトラブルで獲れるはずのポイントを逃したケビン。最高速不足も痛手

 2022年シーズンで7年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。F1第8戦アゼルバイジャンGPは、前戦モナコに続く市街地コースが舞台となる。モナコで大きなクラッシュを喫したミック・シューマッハーには早く自信を取り戻してもらいたいと小松エンジニアは語るが、FP1でトラブルに見舞われ走行時間を失ってしまった。またケビン・マグヌッセンにはトラブルが発生し、獲れるはずのポイントを逃すレースが続いている。

 コラム第8回は、前編・後編の2本立てでお届け。前編となる今回は、アゼルバイジャンGPの現場の事情を小松エンジニアが振り返ります。

「黄旗や赤旗を出した人の予選タイムは削除するべき」とアルボン。アゼルバイジャンGPでのアロンソを批判

 アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)は、2022年F1第8戦アゼルバイジャンGPの予選Q1でフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)が故意に黄旗を引き起こすことで自らのアタックを妨害したと批判し、黄旗や赤旗の原因となったドライバーの予選タイムを抹消するようにルール変更すべきだと主張した。

 F1アゼルバイジャンGPの予選Q1終了間近、各車が最後のアタックに差し掛かったタイミングでアロンソはターン15のエスケープに飛び出した。

サインツ、フェラーリはF1タイトルを争えると自信「Wリタイアから学び、繰り返さないようにすることが必要」

 フェラーリはF1第8戦アゼルバイジャンGPで今シーズン初めてのダブルリタイアを喫したが、少なくともドライバー側はパニックになっていない。シャルル・ルクレールとカルロス・サインツはふたりとも、アゼルバイジャンGPでフェラーリが味わった残念な結末に対して非常に冷静に反応した。

 ルクレールは優勝の可能性を失ったが、サインツの方ははるかに保守的な戦略をとっていた。チームは彼に第1スティントを非常に長く走らせ、レース終盤により新しいタイヤを用いてレッドブル勢を攻撃しようとしていたのだ。

【F1第8戦無線レビュー】「ここからはDRSが使えない」入賞圏内を走行中の角田にトラブル発生、緊急ピットイン

 2022年F1第8戦アゼルバイジャンGPでは、圧倒的な速さでポールポジションを獲得したシャルル・ルクレールが首位を走行中にトラブルに見舞われた。その前には僚友カルロス・サインツがリタイアを喫しており、フェラーリ勢はまさかの全滅。さらにフェラーリのパワーユニットを使用するアルファロメオとハースのマシンにもトラブルが起きた。

 その一方でレッドブルはマックス・フェルスタッペンが優勝、セルジオ・ペレスが2位と今季3度目の1-2フィニッシュを達成した。アゼルバイジャンGPのレースを無線とともに振り返る

F1技術解説:第8戦(2)レッドブルのフロア周りのアップデートとフェルスタッペンが今年苦労している理由

 2022年F1第8戦アゼルバイジャンGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察し、印象に残った点などについて解説。第1回「フェラーリの速さに貢献した新リヤウイング。馬力優先の結果、トラブル続出のパワーユニット」に続く今回は、レッドブルのアップデートを紹介するとともに、今年マックス・フェルスタッペンがマシンに苦労している理由を探る。

元F1王者ヒル「アロンソはアルピーヌのために結果を出しているトリックスター」。衰えた様子は見えないと語る

 1996年F1世界チャンピオンのデイモン・ヒルは、41歳を目前にしても若い頃と変わらない「ずる賢さ」とパフォーマンスを併せもっているアルピーヌのフェルナンド・アロンソが大のお気に入りのようだ。

 2022年F1第8戦アゼルバイジャンGPの予選で10番手に入ったアロンソは、翌日の決勝レースでは、マクラーレンのふたりとチームメイトであるエステバン・オコンを抑えて7位入賞を果たした。これで3戦連続のトップ10入りとなったアロンソにとって、F1やドライビングに対する情熱が今も変わっていないことを示すパフォーマンスでもあった。

【全ドライバー独自採点/F1第8戦】試練のなか完璧な走りを見せ続けるルクレール。好走も残酷な結果に終わった角田裕毅

 長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価する。

 2022年F1第8戦アゼルバイジャンGPでは、シャルル・ルクレール(フェラーリ)が圧倒的速さでポールポジションを獲得。しかしレースで再びトラブルが発生、ノーポイントというむごい結果となった。フェラーリのダブルリタイアで、レッドブルが1-2を飾り、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がシーズン5勝目を挙げ、ポイントリードをさらに拡大した。

 アゼルバイジャンGPでのそれぞれのドライバーたちの戦いぶりを、バスコンセロス氏が振り返る。

F1技術解説:第8戦(1)フェラーリの速さに貢献した新リヤウイング。馬力優先の結果、トラブル続出のパワーユニット

 2022年F1第8戦アゼルバイジャンGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察し、印象に残った点などについて解説。第1回では、フェラーリの向上に一役買った新たなローダウンフォース・リヤウイングと、懸念されるパワーユニットの状況について分析する。

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 アゼルバイジャンGPでのフェラーリは、少なくとも理論上は、優勝する可能性が高かった。

 強大なダウンフォースを発生するF1-75は、バクー旧市街の低速コーナーが速く、フロントタイヤの温度も早く上がった(シャルル・ルクレールは第2セクターでセルジオ・ペレスに0.327秒差をつけた)。さらにフェラーリはここで今シーズン初めて、低ダウンフォースのリヤウイングを装着した(マイアミにも持ち込んだが未使用だった)。

メルセデスF1、スペイン後に新たな問題が浮上。バクーでは「行き過ぎたセットアップでドライバーを苦しめてしまった」

 メルセデスF1チームは、アゼルバイジャンGPでパフォーマンスをできる限り引き出そうとするなかでW13に実験的なセットアップを試し、それによってドライバーに大きな不快感を与えることになったと認めた。

 2022年の新世代F1マシンの特徴的な問題であるポーパシング現象(空力に由来する激しい縦揺れ)に、他チームより悩まされてきたメルセデスは、スペインGPでその理解を進めることができ、これをコントロール下におくための取り組みに進歩があったと述べていた。

ラティフィ、重すぎるペナルティに納得できず。違反の内容は「マシンを後ろに押しただけ」/F1第8戦

 ウイリアムズのニコラス・ラティフィは、F1第8戦アゼルバイジャンGPでスチュワードが彼に科したペナルティは、レース前のグリッド違反にしては重すぎると述べている。

 アゼルバイジャンGPでレースのフォーメーションラップが始まる前、ラティフィは後ろから2列目の18番グリッドに並んでいた。その後ウイリアムズのメカニックがラティフィのマシンを数インチ引き下げたが、それは15秒のグリッド退避信号が出ているなかでのことだった。そのような違反には、通常は違反者に対してピットレーンスタートが申し渡されるが、ラティフィは18番グリッドからレースをスタートした。