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一家4人でコロナ給付金を約9億6000万円も不正受給したというニュースが注目されている。これまでの報道によると、警視庁は5月30日、谷口光弘容疑者を詐欺容疑で指名手配し、三重県に住む家族3人を逮捕した。谷口容疑者はすでにインドネシアに逃亡したという

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不正受給された「持続化給付金」は、個人事業主は最大100万円が給付される。谷口容疑者らは「誰でもお金がもらえる」という内容のセミナーを開くなどして全国から約1780件の名義を収集。他人の名義でウソの確定申告書を税務署に提出して申告書の控えを入手し、不正申請を繰り返したという。

巨額の不正受給に、ネット上では多くの反響があった。

大田区議の荻野稔氏は「持続化給付金、スピード重視で多くの方に行き渡る事が必要だったから、制度の悪用が出て来てしまうのは仕方がないし、それを見込んだ上で後から不正な申請は正していく仕組みが必要だったのだけど、一家4人で960回申請、9.6億円不正受給はちょっとザル過ぎないだろうか」と提起。

確かに、スピード重視で“多少の不正”は目をつぶるしかなかったとはいえ、9.6億円は多少の範囲を超えているように思われる。

作家の橘玲氏も、「『困っているひとがいるのだから、審査を簡略化してすぐに受け取れるようにすべきだ』と騒いで性善説のシステムをつくると、すぐにハックされてしまうという好例です」と述べ、性善説の難しさを嘆いた。

タレントのフィフィ氏は、「事件はマイナンバー紐付けで防げたんじゃないの?まぁ、それ以前になぜ気付かなかったって話だけど」と述べ、住民台帳のデジタル化の重要性を指摘した。日本は諸外国に比べ、デジタル化が遅れていると指摘されている。マイナンバー制度が普及しておらず、個々人のデータを容易に紐づけられないことも、事件の背景にあったのかもしれない。

ただ、他人の名義を集めて不正受給を繰り返すという手口は手が込んでおり、事務局に同情する声も一部にはあった。

最後に大物が逮捕されましたね。名義を借りての申請ですから、事務局の審査がざるの指摘は、あたらない。全件、持続化給付金を支給されたあと確定申告されてるか確認してるから逮捕

9.6億円の原資はすべて税金であり、納税者が全員がドロボーに遭ったようなものである。

フリー編集者の前田隆弘氏は、「コロナ予備費使途不明金11兆円も4630万円振り込まれ男も、事業化給付金9.6億円不正取得一家も、そして我が国の主要産業である『中抜き』と『詐欺』も、『真面目に働くことのバカバカしさ』を世間にアピールするという点で共通している」と述べた。

日経新聞によると、政府がコロナ対策として用意した「コロナ予備費」と呼ばれる予算のうち、約11兆円が使途不明金となり、使い道が分からないという。ウィズ・コロナへと時代のフェーズが切り変わるなか、ピーク期の諸問題を振り返る必要もありそうだ。