一般の人はあまり関心ないかもしれませんが、トラックの荷台の床材にもSDGsの波が押し寄せています。
これまでトラックの床材といえばアビトンが定番だったのですが、アビトンは伐採による環境破壊が深刻で、生育にも時間が掛かる南洋材。
そこで代替材として、比較的生育の早いアカシアの集成材や計画植林の北欧のバーチ材(シラカバ)などが注目されてきたわけですが、ここにきて持続可能なSDGsにぴったりの床材として「竹」が脚光を集め始めました。
日本人は古来より竹と密接に関わり、暮らしのなかで活用してきました。その歴史は古く縄文時代から竹製品を作っていたとされる遺物も出土しています。
そんな竹はトラックの荷台の床材としても、軽くて丈夫で長持ち、環境にもやさしいとして近年注目されつつある部材なんですね。
ここでは、日本にトラック用竹床材をもたらしたパイオニア、信和自動車工業の竹床シリーズの秘密に迫ってみたいと思います。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
■信和自動車工業の竹床材
今から13年前の2009年。信和自動車工業は、海上コンテナメーカーのCIMC新会中集木業有限公司の海上コンテナ用竹床材に着目し、同床材を国内向けに改良した日本初の中・大型車用竹床材「グリーンボード」の製造販売を開始する。
グリーンボードは、竹を張り合わせてプレスし板状にした集成材で、軽く積載量が多く取れる特徴をもつ。一般的なアピトン材より約10%比重が軽いため、大型車の場合は約40kgほど軽量化、また硬い繊維質の竹は集中荷重にも強く耐久性も高いとされている。
その後、徐々に竹床材の認知が広まると、2017年に小型車専用竹床材「かぐや姫」を発売。
床面積の小さい小型車では竹床材の軽量化のメリットは活かしにくいが、かぐや姫では竹を三層構造にして強度を上げ、薄肉化と大判化(一枚物)を実現。小型車で一般的な合板の床板比でも約10%の軽量化、アピトン材と同等の耐久性を実現している。
こうした車両へのメリットがあるいっぽう、竹はエコな部材でもある。日本のカーゴ系トラックの床材に使用しているアピトン材の原木は、成長するのに何十年もかかるのに対し、地下茎で育つ竹は植林せずとも4~6年で成木へと成長。
竹を使うことで森林破壊も減少するだけでなく、安定した部材供給にも貢献できるのだ。
現在、多くの架装メーカーに供給されており、グリーンボードの累計販売台数は8万台、かぐや姫は1万5000台を突破している。
■ラインナップと近日発売予定の重機運搬車専用竹床
標準仕様のラインナップは、三層構造のかぐや姫が板厚14mmで、(W)1805×(L)3140mmと(W)2100mm×(L)4500mmの2サイズを展開。
グリーンボードは板厚18mmと21mmまでが単層構造で(W)300×(L)4500~9700mmのサイズ。板厚25mmと30mmは三層構造で、前者が(W)300×(L)6500~9700mm、後者は(W)200×(L)6500~9700mmのサイズとなっている。
このほか鹿児島県の孟宗竹を使用した「薩摩竹床」(単層構造)や、「竹製横根太」「鉄製アオリ用竹板」「竹製枕木」「竹製リン木」なども展開。
また先頃開催されたジャパントラックショー2022では、近日発売予定である重機運搬車専用の竹床「YOKOME」も発表された。
重機運搬車はトラックの前方をアウトリガージャッキで持ち上げ荷台を傾斜させて重機を積み込むが、竹床の場合、従来の縦目方向だと繊維質が影響し無限軌道(キャタピラ)が滑るという不安があったそうだ。
そこで横方向に竹材を敷いたところ摩擦係数がアップし、不安が軽減。その名が示す通りYOKOME(ヨコメ)として製品化される。YOKOMEの登場で、さらに竹床材への注目も集めることになりそうだ。
投稿 厄介者の竹がトラックの荷台の床材に大変身! 累計9万5000台分超を販売したエコロジーな竹床材の秘密 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。