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 2022年F1第8戦アゼルバイジャンGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察し、印象に残った点などについて解説。第1回では、フェラーリの向上に一役買った新たなローダウンフォース・リヤウイングと、懸念されるパワーユニットの状況について分析する。

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 アゼルバイジャンGPでのフェラーリは、少なくとも理論上は、優勝する可能性が高かった。

 強大なダウンフォースを発生するF1-75は、バクー旧市街の低速コーナーが速く、フロントタイヤの温度も早く上がった(シャルル・ルクレールは第2セクターでセルジオ・ペレスに0.327秒差をつけた)。さらにフェラーリはここで今シーズン初めて、低ダウンフォースのリヤウイングを装着した(マイアミにも持ち込んだが未使用だった)。

フェラーリF1-75のリヤウイング比較
フェラーリF1-75のリヤウイング比較

 そのおかげでF1-75は、ストレートエンドでのタイムロスが通常より少なかった。フェラーリは加速に優れるため、ストレートの立ち上がりではレッドブルより速いが、通常は、終盤にそのアドバンテージを失う。ホンダ製パワーユニットの方が、電気エネルギーを長く使えるためだ(フェラーリ製PUは早く使えるので、排出も早い)。

 しかしバクーで、マックス・フェルスタッペンはDRSの助けを借りたにもかかわらず、ルクレールをパスできなかった。今回のF1-75はストレートでも十分に速く、レッドブルを抑え込むことができたわけだ。

 だが、これまで毎年優勝者が変わっているバクーでは、レースが予想どおりに進むことはほとんどない。今回も波乱の展開となった。9周目のカルロス・サインツに続き、優勝大本命だったルクレールも21周目にエンジントラブルでリタイアを喫したのだ。

■強いが壊れやすいパワーユニット

 昨年より明らかにパワーアップしたフェラーリの066/7は、レッドブル・パワートレインズ(ホンダ)より5馬力、メルセデスより10馬力、ルノーより15馬力優れているといわれる。さらにトルク性能にも優れ、より柔軟なギヤ比に対応できるようだ。

 これまでパワー面で遅れをとってきたフェラーリは、信頼性を犠牲にしてでも馬力を求めるアプローチを取った。しかしその結果、スペインではルクレールがターボとMGU-Hを壊してレースを失った。モナコでは、ハースとアルファロメオのMGU-Kに3つのトラブルが出た。バクーでは、ルクレール以外にケビン・マグヌッセン(ハース)もV6フェラーリのターボとMGU-Hがトラブルに見舞われた。

 現時点で、フェラーリはバクーでのルクレール車のPUトラブルの原因を公開しておらず、どの部品を交換しなければならないかも明らかにしていない。もしV6エンジン、MGU-K、MGU-Hが関係するトラブルだとすれば、エレメント交換によるペナルティを受けるまで、いずれもあと1基の余裕がある。しかしターボチャージャーの交換が必要であれば、すでにに3基使っているのでペナルティを課されることになる。

2022年型フェラーリF1のパワーユニット
2022年型フェラーリF1のパワーユニット

 そうなるとタイトル獲得の可能性が、さらに危うくなってしまうかもしれない。ルクレールはバルセロナとバクーでトラブル、モナコではチームの戦略的ミスのために勝利を逃し、すでにフェルスタッペンに34ポイント差をつけられている。第3戦オーストラリアGP終了後には、同じポイント数リードしていたが、あっという間に立場が逆転した。今季序盤、レッドブルを襲っていた信頼性の問題が、今は一転してフェラーリを苦しめている。