テレビ朝日系「報道ステーション」(報ステ)の16日夜の生放送で、NHK党の立花孝志党首が、“強制退場”させられる騒動があった。この日、行われたのは参院選(6月22日公示、7月10日投開票)に向けた各党党首による党首討論。自民党総裁の岸田首相をはじめ、9党の党首が参加してのものだった。立花氏は、別室からリモートで出演した。
立花氏「テレビは国民を洗脳する装置」
大越健介キャスターから、「国民の安全をどう守る」というテーマで指名された立花氏は、次のように発言した。
テレビは核兵器に勝る武器です。テレビは国民を洗脳する装置です。テレビは国民が知るべき真実を隠しています。本日お昼過ぎ、テレビ朝日のプロデューサーから手紙を頂戴しました。手紙には『テーマから逸脱する発言は控えていただくようお願いいたします。万が一、そのような発言があった場合は、しかるべく対応をさせていただく場合もあることをご承知おきください』とありました。
発言中から幾度も大越キャスターから、テーマと関係ない発言を止めるよう注意を受けていた立花氏。それでも話を止めずに立花氏は、「プロデューサーから電話で、番組から追い出されると言われた」と発言。「追い出される前に」と自身のユーチューブの告知をしようとすると、大越キャスターは「発言を止めていただきましょう。申し訳ありません。その発言は認められませんので、打ち切らせていただきます」と強制終了。その後も党首討論は続けられたが、そこに立花氏の姿はなかった。
過去には国家転覆呼びかけも
参院選は衆院選に比べて、ユニークな政党、候補者が多い傾向にあるが、今回は特にその傾向が顕著だ。中には、ユーチューブのノリで政見放送を行いそうな候補者も少なからず見受けられる。
政見放送の始まりは半世紀前にさかのぼる。元東京都知事で、作家・タレントだった青島幸男氏が、1968年の参院選に初当選した直後、当時の佐藤栄作首相に提案して導入されたが、これまでにも数々の「伝説」を生んできた。
今も、一部好事家の間で語り継がれているのが1991年の東京都知事選に出馬した、歌手の内田裕也氏の政見放送だ。冒頭、ジョン・レノンの「Power to the People」とエルビス・プレスリーの「Are You Lonesome Tonight(今夜はひとりかい)」を歌い上げた内田氏。その後、自身の生い立ちや東京都知事選に出馬する理由などをスピーチしたのだが、すべて英語。もちろん、日本語字幕などない。政見放送を見た人のうち、何人が理解できたかか不明だが、面白がった都民の支持を得たのか再選した当時の鈴木俊一知事以下、主要政党が擁立した4人の候補者に続き、無所属無党派では最多の54,654票を集めた。
今世紀に入ってからは、政治活動家の外山恒一氏が、2007年の東京都知事選に出馬した時の政見放送を覚えている人も多いのではないか。外山氏は政見放送で、国家転覆を呼びかけるために都知事選に出馬したと述べた。
もうこんな国に何も望まない。残された選択肢はただ一つ。こんな国はもう滅ぼすことだ!もはや政府転覆しかない‼少数派の諸君!これを機会に、政府転覆の恐ろしい陰謀を、共に進めていこうではないか。ポスターに連絡先が書いてあるから、選挙期間中でも、終わってからでもかまわない。私に1本電話をいれてくれ。もちろん、選挙権のない未成年の諸君や、東京都以外の諸君でも構わない。我々少数派には、選挙なんか元々全然関係ないんだから。最後に一応言っておく。私が当選したら、奴らはビビる!私もビビる
規定あるものの…、何でもありの政見放送
“伝説”クラスの2人を並べてみると、「政見放送はなんでもありなのか?」と疑問に思う人もいるだろう。実際、何でもありなのだ。
電波法を根拠に、テレビ局は政見放送の内容を編集することはできない。過去に、差別用語を使用して侮蔑的な発言をした候補者が最高裁まで争われた訴訟で敗訴した例があるくらいだ。一応、「品位を保つ」という規定はあるものの、努力義務だ。
政党の大小、さらに政党に所属していようが無所属だろうが関係なく、どの候補者にも平等に用意されている政見放送。インパクトのある候補者が少なくない今回の参院選では、どのような政見放送が見られるか。