2022年F1第8戦アゼルバイジャンGPでは、圧倒的な速さでポールポジションを獲得したシャルル・ルクレールが首位を走行中にトラブルに見舞われた。その前には僚友カルロス・サインツがリタイアを喫しており、フェラーリ勢はまさかの全滅。さらにフェラーリのパワーユニットを使用するアルファロメオとハースのマシンにもトラブルが起きた。その一方でレッドブルはマックス・フェルスタッペンが優勝、セルジオ・ペレスが2位と今季3度目の1-2フィニッシュを達成した。アゼルバイジャンGPのレースを無線とともに振り返る。
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決勝当日は目まぐるしく風向きが変わり、コース上を強風が吹き荒れた。グリッドに向かうドライバーたちが、コース上の状況を報告する。
ジョージ・ラッセル:コース上はかなり汚れている。葉っぱだらけだ
フロントロウのセルジオ・ペレス(レッドブル)に対し、担当エンジニアのヒュー・バードが檄を飛ばした。
バード:ターン1に向けて、全力で行こう
ペレスはそれにきっちり答え、ターン1のブレーキングでシャルル・ルクレール(フェラーリ)から首位を奪った。
4番手カルロス・サインツ(フェラーリ)は、ペレス、ルクレール、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)の上位3台になかなか追いつけない。
(9周目)サインツ:レッドブルが速い
この無線の直後、サインツはターン4で自らマシンを止めた。
サインツ:ブレーキ・バイ・ワイヤのトラブルだ。何かが壊れた
しかし実際には、油圧系トラブルだった。
このタイミングでルクレールはピットイン。ステイアウトを選択したレッドブル2台が、1−2体制を構築する。15周目には首位ペレスとフェルスタッペンの順位が、ターン1で入れ替わった。
(15周目)バード(→ペレス):ノーファイトだ
ルクレール:ペレスはトラクションに苦しんでいる
フレッシュタイヤを履いたルクレールは、1周1秒速いペースでレッドブル2台を追い上げた。しかし20周目、ルクレールにもトラブルが発生し、フェラーリは全滅した。
(20周目)ルクレール:問題発生、問題発生。エンジンだ。ああ〜おしまいだ
マルコス・パドロス:すぐに対処する
ルクレール:いや、もうおしまいだよ
22周目、角田裕毅(アルファタウリ)がオコンを抜き去り、7番手に順位を上げた。
角田:レッツゴー! いい動きだったよね
マッティア・スピニ:いいぞ、ユウキ、行くぞ
24周目、周冠宇(アルファロメオ)はポイント圏内10番手を走行していた。
ヨハン・ベッカー(→周):技術トラブルが出ている。残念だがボックスだ
周:冗談だろ? ええ、またかい! XXXX! こんなふうにチャンスの時に、いつも問題が出る。やってられないよ
28周目、5番手走行中のハミルトンは、背中の激痛に耐えかねていた。
ハミルトン:背中が痛くて、死にそうだ!
そして38周目、スピニが角田にトラブル発生を告げる。
スピニ:クルマを止めないといけない
角田:XXXX!
DRSの不具合でリヤウィングのフラップが破損したが、角田は詳しい説明を受けなかったようだ。
角田:何だったの!?
スピニ:信頼性の問題だ。ここからはDRSは使えない。DRSなしだ
このトラブルを受け、フェルスタッペンにもこんな指示が飛んだ。
ジャンピエロ・ランビアーゼ:ここからはDRSを使うな
レース終盤、フェルスタッペンは独走態勢に入った。昨年のタイヤバーストが念頭にあるのか、担当エンジニアのランビアーゼはさかんにペースダウンを指示する。
ランビアーゼ:ターゲットタイムは47秒5だ
フェルスタッペン:ええ? タイヤ冷やしたくないんだけど
ランビアーゼ:じゃあ47秒0だ
フェルスタッペン:どっちなの? 決めてよ
その後もフェルスタッペンは、1分47秒台を切るペースで走り続けた。
後方では、7番手を走るフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)をダニエル・リカルド(マクラーレン)が抜きあぐねていた。背後にはランド・ノリス(マクラーレン)が、じりじりと順位交替を待っていた。
(49周目)ウィル・ジョゼフ→ノリス:状況を説明する。もしダニエルに接近できたら、そしてダニエルがアロンソに近づけないようなら、そのまま(リカルドを)抜いていい。でもそのあとアロンソを抜けなかったら、チェッカー前に順位を戻すんだ。それでハッピーかい?
ノリス:うん、ハッピーだよ。でも彼にもっとプッシュするよう言ってくれ
結局リカルドとノリスの順位交換はなかった。
(50周目)ジョゼフ(→ノリス):OK、ランド。あと1周だ。ポジションをキープするんだ。チームにとっていいリザルトだからね
フェルスタッペンは昨年の雪辱を果たし、アゼルバイジャンGP初優勝。ペレスが2位、そして3位にはラッセルが入った。
ランビアーゼ:マックス、素晴らしいドライブだった。優勝だ。ナイスジョブ!
フェルスタッペン:ハハハ。いいレースだったよね、いいレースだったろ?
ホーナー代表:すごく成熟したドライブだったぞ。ここぞという時に、すごいペースで走ってた。最高のレースだった
リカルド・ムスコーニ:また表彰台だ。きみの安定した走りには脱帽だよ
ラッセル:素晴らしい結果だ。表彰台は無理だと思ってたけど、最終的に獲得できた。このままプッシュし続けよう
一方でハミルトンは背中の激痛で、コクピットからすぐには降りられないほど。それでも5位入賞の意地を見せた。トト・ウォルフ代表が賞賛と謝罪を表明した。
ウォルフ:ルイス、我々はみんな、運転するにはあまりにXXなクルマだとわかってる。背中のことは、本当に申し訳ない。早急になんとかする。とにかく素晴らしいドライブだった
ハミルトン:みんな、よくやってくれた。素晴らしい戦略だった。とにかく今後は……いろいろ変えていかないとね