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 2022年RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップ第6戦として、6月17~19日にヒドゥン・バレー・レースウェイにて争われた『ダーウィン・トリプルクラウン』は、名門ディック・ジョンソン・レーシング(DJR)のシェルVパワー・フォード・マスタングが土曜を制圧。ポールシッターの僚友を打ち負かしたアントン・デ・パスカーレ(フォード・マスタング)がレース1を制覇し、DJRがワン・ツー・フィニッシュを達成した。

 続く日曜レース2はキャメロン・ウォーターズ(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)が、最終ヒートのレース3はチャズ・モスタート(ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド/ホールデン・コモドアZB)がそれぞれ制し、ダーウィンの週末はフォード勢が3戦2勝を挙げている。

 オーストラリア北部ノーザンテリトリー州で開催される同イベントでは、例年より地元ダーウィンの先住民族に敬意を表する催しとして、各陣営が任意のスペシャルカラーを採用したマシンを走らせてきた。

 今季はその方針を一歩推し進め、史上初のRSC公式“Indigenous Round(先住民族ラウンド)”と銘打ち、参戦全27台が先住民族特有のアートワークに彩られた特別リバリーで姿を現した。その各車に採用されたカラーリングの背後には、それぞれ異なるストーリーを持つ先住民をテーマとしたデザインが施された。

「カテゴリー全体がこの先住民族ラウンドに敬意を表し、チームがそれを完全に受け入れているのはまるで魔法のようだね。先住民を尊重するのは当然のことだからね」と語るのは、これがキャリア通算500戦目となったウィル・デイビソン(ディック・ジョンソン・レーシング/フォード・マスタング)。

「各アーティストは本当に魔法のような仕事をし、すべてが物語を語っている。それは真に名誉なことで、こうして全車がホームストレートに集合するのは、本当に幻想的な光景だ」

 こうして始まった週末は、WAUのモスタートが最初のプラクティスでトップに立つと、続く2度目のプラクティスはレッドブル・アンポル・レーシングの王者“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(トリプルエイト・レースエンジニアリング/ホールデン・コモドアZB)が最速を記録する。

 先週まで念願のル・マン24時間に初挑戦し、クラス5位フィニッシュを達成した男は、南半球帰りで「まだ時差ボケが残って、満足な睡眠が取れていない」なか、酷暑のダーウィンで奮闘を見せた。

「金曜のこの暑さはフランス帰りには堪えるね(笑)。5月のバサースト12時間(メルセデスAMG GT3で表彰台を獲得)からずっとイベント続きだから、疲れもあるだろう。でも間違いなく、明日のレース当日には普段どおり元気になっているはずさ。9月末にはWRC世界ラリー選手権挑戦も控えているからね!」と続けたSVG。

 そう本人が語るとおり、この週末を前に自身の地元であるラリー・ニュージーランド参戦を明かしたSVGは、ワークス所属経験を持つ同郷のヘイデン・パッドンとともにWRC2クラスにエントリー。2020年にNZ国内選手権でドライブし、ARCオーストラリア・ラリー選手権のデビュー戦でも、ともに表彰台を獲得したシュコダ・ファビアR5のステアリングを握る。

地元出身のブライス・フルウッド(Brad Jones Racing/ホールデン・コモドアZB)は「この地域に長く住んでいる人なら誰でも、先住民とのつながりを理解することが出来る」と語った
2022年のラリー・ニュージーランド、WRC2クラス参戦を明かしたシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(Triple Eight Race Engineering/ホールデン・コモドアZB)
レース1のオープニングラップでは、アントン・デ・パスカーレ(Dick Johnson Racing/フォード・マスタング)が僚友から首位を奪取
ポジション入れ替え時に軽い接触があったものの、DJRのふたりはお互いに「良いレースだった」と、わだかまりは無し

「僕はこのスポーツが大好きで、本当はもっとドライブしたいくらいなんだ。それは大きな挑戦であり、本当に精神的なゲームで、参考文献もなく自分のメモと隣に座る人物を心から信頼しなくてはならない。サーキットとは心底、異なる世界なんだ」と、かつてWorldRX世界ラリークロス選手権のeスポーツ・シリーズ『World RX ESports Invitational Series』でも速さを披露した現RSCポイントリーダー。

 そのSVGだが、土曜午前の予選では4番手に留まる結果となり、その前方2列目3番手には好調アンドレ・ハイムガートナー(ブラッド・ジョーンズ・レーシング/ホールデン・コモドアZB)を挟んで、DJRのデイビソン、パスカーレの2台がフロントロウを固める結果となった。

 そのまま現地午後15時を回って始まったスプリント3連戦“トリプルクラウン”初戦は、レコードタイムでのポールシッターとなったデイビソンが順当にホールショットを奪ったものの、オープニングラップ終盤でチームメイトの急襲に遭い、敢えなく首位陥落。そのままパスカーレが今季初勝利を飾り、デイビソンとSVGの表彰台に。

 ピットストップ戦略で王者SVGとモスタートにも先行されていたハイムガートナーだが、WAUのエースはスタート前のグリッド上で「不適合な送風機を使用した」として失格処分となり、5位には2014年王者マーク・ウインターボトム(チーム18/ホールデン・コモドアZB)が続いている。

 明けた日曜午前の予選では、ふたたび奮起したデイビソンが前日のレコードを更新しての連続ポールを獲得し、最終ヒートの最前列を確保した。この日最初のレース2に向けてはモンスターエナジー・フォードのウォーターズが先頭発進を決めたが、ラップ1のターン6で僚友ジェームス・コートニー(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)がトラックを横切ってのスピンを喫し、複数台巻き込む多重クラッシュが発生。すぐさま赤旗中断となる。

 再開後も首位を守ったウォーターズは、デイビソンとSVGを従え38周を走破して0.617秒差で勝利。続くレース3ではパスカーレを先頭にDJR陣営が隊列を率いたものの、ひとりだけ異なるタイヤ戦略を採ったモスタートが早めのピット作業で2本交換を選択。セーフティカー発動を挟んで首位浮上に成功したWAUのエースは、パスカーレ、ウォーターズ、デイビソンと3台のマスタングを抑え込むことに成功し、前日失格の雪辱を晴らす快勝を決めている。

 この最終ヒートでは、デイビソンへの接触で15秒加算ペナルティを課され21位に終わったSVGだが、スタンディング上では依然として2位パスカーレを214点差で突き放しリーダーの座を堅守。続くRSC第7戦は、7月8~10日にクイーンズランド州タウンスヴィルで争われる。

レース1失格に抗議したチャズ・モスタート(Walkinshaw Andretti United/ホールデン・コモドアZB)だが、裁定は覆らず
レース2でポールシッターとなったキャメロン・ウォーターズ(Tickford Racing/フォード・マスタング)が、そのままレースも制した
スタート直後、多重クラッシュの引き金となってしまったジェームス・コートニー(Tickford Racing/フォード・マスタング)
レース3で戦略勝ちを収め、前日の悔しさを晴らす走りを見せたチャズ・モスタート(Walkinshaw Andretti United/ホールデン・コモドアZB)