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 バスマニアには有名な可変ルートを持つ都営バスの「秋26」系統。一方通行の関係で往路と復路で通行経路が異なる都営バスの路線だ。経路が異なるルートのうち、中央区部分についてはすでにバス停散策記事としてお届けしている。

 今回は千代田区部分の主に神田周辺を散策した。しかも今回はなんと曜日によってバス経路まで変わるという「秋26」系統のマニア心を超くすぐる実態にも触れてみた。

 江戸の歴史も感じる名路線「秋26」の魅力をお届けしよう。

文/写真:小野寺利右
編集:古川智規(バスマガジン編集部)

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一方通行に加えて曜日でもルートが変わる

 前回は中央区部分を散策した都営バス「秋26」系統の一方通行ルート。前回の中央区部分は秋葉原駅前方向、葛西駅前方面とも異なる一方通行道路を行き来するだけだったが、千代田区部分は少しややこしい。

 往復のルートが異なるのはもちろんだが、平日と休日のルートが設定され、曜日によるルートもあるのでややこしいのだ。

秋葉原駅前に到着した秋26系統

 千代田区部分のスタートは秋葉原駅前方向で小伝馬町の次の停留所である岩本町一丁目だ。水天宮通りは中央区では人形町通りともいう。昭和通りの岩本町交差点に向かう北向きの一方通行なので秋葉原駅前方向にしか走れない。

 まず平日と休日でルートが異なる件について。休日は岩本町一丁目に停まり、そのまま直進して昭和通りに合流。そしてダイレクトに秋葉原駅前に至る。

 そのため岩本町一丁目の次は終点の秋葉原駅前になる。反対方向の葛西駅前方面は秋葉原駅を出て昭和通りを下り、岩本町交差点を左折して岩本町駅前に停車して東神田へ至る。文章だとわかりにくいので、系統図を参照されたい。

千代田区付近の路線系統図(都バス運行情報サービスより)

落語にも登場する「お玉が池」は実在の地

 岩本町一丁目バス停から北、岩本町駅からみて南に少し歩くと「お玉ヶ池」のお稲荷さんと種痘所の跡がある。江戸時代にお玉ヶ池と称する大きな池があり、現在の上野にある不忍池より大きかったという。

 元々は桜が池と呼ばれていたが畔に茶屋があり今風に言えば看板娘がお玉さん。二人の男性に言い寄られ選びあぐねた挙句にお玉さんは池に身を投げたとか。

現在も通り名に残るお玉が池

 そこからお玉ヶ池と呼ばれるようになり、お稲荷さんはお玉さんを祀っている。お稲荷さんの南に種痘所の跡がある。お玉ヶ池が幕末にかけ埋め立てられ江戸の文人、学者等が居を構えていて、その一人である伊東玄朴ら蘭方医達がこの地に種痘館を設立したのが始まりという。

お玉が池種痘所跡地

 この種痘所は後の東大医学部の出発点ともいわれ、その碑も少し離れた所に置かれていた。この地に残るお玉の名称は通り名と銭湯に残されている。落語には学者や医者が居住する場所としてお玉が池が登場する。

 演者により異なるが、有名な「紺屋高尾(こうやたかお)」にはお玉が池のヤブ医者先生が登場するので、興味のある方は当時の風景を想像の上で聴いてみると面白い。

神田駅前に停車するのは平日のみ

 秋26系統の秋葉原駅前方向の平日ルートは岩本町一丁目交差点左折して神田金物通りに入る。昭和通りを過ぎ中央通りの今川橋交差点を右折して神田駅前に停車する。そのままJRのガードを通過し、須田町に停まる。

神田金物通り

 この交差点は道路が二又に分かれていて、このあたりは都電の終点だった。余談だが須田町停留所は交差点を過ぎて中央線のガード付近にもあった。これは廃止された「S-1」系統の停留所だ。ポールはまだ残っていたが、ロープが張られ残念な姿になっていた。

S-1系統が停車していた須田町バス停

 反対の葛西駅前方向の平日ルートの須田町停留所はガードの南側に位置する。そのまま南に向かい神田駅前停留所は駅のだいぶ北側に位置する。その理由は神田駅北口交差点を左折するからだ。

 この付近も金物通りと同様に一方通行が存在する。こちらは神田平成通りと称する。左折してガードをくぐったところが神田富山町。

千代田区付近の路線図(都バス運行情報サービスより)

 かつて草28系統という路線があり、当時はここも神田駅前を名乗っていた。この系統は両国駅前発着に短縮された上で「両28」系統として現在も残っている。次は岩本町駅前だ。昭和通りを過ぎ、水天宮通りに戻るという形だ。靖国通りを右折すればバス停があり都営新宿線の入り口も目の前だ。

 ここから靖国通りを走り東神田交差点を右折して、清洲橋通りに出て南に進路を取る。神田駅前を中心とした須田町・神田駅前・神田富山町の各停留所の時刻表の休日欄はバスが通らないので当然ながら真っ白だ。

休日には通らないバス停の休日時刻表は真っ白

昔は対面通行だった!

 現在の一方通行はかつては対面通行だった。昭和46年3月に神田、日本橋地区の大規模な一方通行指定実施により現在の通行方法になった。

 昔の秋26系統は清洲橋通りを北向きに向かい、馬喰町を経由して東神田に出て神田平成通りに入り神田駅に向かっていた。当時はまだ現在の住居表示が実施される前で、当時の町名で停留所が存在した。

 東神田は豊島町、岩本町辺りは松枝町と名乗っていた。秋26系統が誕生したのも古く、当時は秋葉原駅からさらに上野方面まで伸びていたようだ。

神田駅前バス停

 最後に秋葉原駅周辺も紹介しておく。秋葉原駅前方面は万世橋交差点を右折し、昭和通り手前を左折で秋葉原駅前に入る。葛西駅前行きはターミナルがループ状なので、降車扱いをした後にバス停で乗車扱いをした後、ターミナルを左に出て昭和通りに入り万世橋交差点に至る。言わばこの区間は一筆書きである。

 一方通行による常時のルート違い、さらに曜日によるルート違いと、都内でここまでややこしいルートはなかなか見られないのではないだろうか。往復、平日と休日と合計4パターンあるので、4回乗車して隠れたスポットを見つけてみてはいかがだろうか。

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