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Image:Arm

Armは、「Mali」につづく次世代フラグシップSoC用GPU「Immortalis」を発表。その第1弾となる「Immortalis-G715」において、自社製品として初のレイトレーシング機能をハードウェア上でサポートすることを明らかにした。

レイトレーシングとは、光源の方向やそこからの光量を計算し、水面や艶のある物体の表面などに現実と同様の反射などを再現する技術のことで、身近なところでは最新ゲーム機、PlayStation 5やXbox Series X|Sのグラフィック機能がこれをサポートしている。

レイトレーシング技術を実現するには電力消費量が多いため、モバイル向けでは難しそうな印象がある。だがArmは、Immortalis-G715の同機能について、ハードウェアアクセラレーションによって300%を超える性能向上を実現しつつ、シェーダーコア面積の4%しか使用していないと述べている。Immortalisはシェーダーコア数が10~16で構成され、Mali世代よりも15%の性能向上を実現しているという。

スマートフォンの画面でレイトレーシングによる表示が可能になったとして、ゲーム以外にはどのような活用ができるのだろうか。この点についてArmのポール・ウィリアムソン氏は、「たとえば、画面内の仮想空間における光源(照明)位置を現実空間における環境と合致するように表現でき、特にARアプリに有効」と、その例を挙げている。

ArmのGPUでは、昨年リリースされたMali-G710もレイトレーシングをサポートしていたが、これはソフトウェアによるサポートだった。今回のImmortalis-G715がハードウェアでこれをサポートしたので、来年はじめには各社のフラグシップスマートフォンでハードウェアによるレイトレーシングが実現しそうだ。

なおArmは、ImmortalisシリーズをリリースしてもMaliシリーズが販売終了になるわけではないとしている。今回もMali-G715という機能強化バージョンが発表されており、その特徴のひとつとしてImmortalisも搭載する可変レートシェーディング(VRS)機能を備えている。このVRSにより、ゲームコンテンツにおける秒間フレーム数が最大で40%も向上するとのことだ。またゲーム性能だけでなく、電力効率も15%ほど向上しているという。

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ハードウェアやソフトウェアメーカーのなかで、さっそくレイトレーシング対応を表明している企業としては、MediaTekやUnity、そして『フォートナイト』で知られるEpic Gamesがあるという。ただ、PS5などのゲーム機でも、レイトレーシングを本格的に使用しているゲームはそれほど多くはない。処理の負荷やバッテリー消費がかさむレイトレーシングを大々的にサポートしたモバイル向けゲームやその他アプリが続々と出てくるようになるには、まだしばらく時間がかかるかもしれない。

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