大気中から年間3万6,000トンもの二酸化炭素を回収・貯蔵できるという「ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)」プラントを、Climeworksがアイスランドで建設開始した。
Climeworksは、二酸化炭素(CO2)回収技術を開発するスイスのスタートアップだ。そして、2030年までに年間数百万トン、2050年までには年間10億トンものCO2の回収を計画している。10億トンと聞けば、とてつもない量が回収できるようにも思えるが、人類が2021年に排出したCO2の量は363億トンだという。
新しく建設するDACプラントは「Mammoth(マンモス)」と呼ばれ、完成予定は1年半~2年後。操業は再生可能エネルギーを使って行われ、回収したCO2は玄武岩など(に含まれるカルシウム)に反応させて炭酸塩鉱物にすることで固定化し、地下に貯蔵するという。
Climeworksの共同創設者にして共同CEOのヤン・ヴルツバッハー氏は「我々は空気中のCO2をミリグラム単位で回収するところからスタートした」とCNBCに語っており、この会社が過去13年間進めてきた技術開発の進歩は、非常に大きかったとしている。ちなみにClimeworksは、活動初期には資金獲得のためもあり、回収したCO2を炭酸飲料メーカーなどに販売していたが、現在はそのようなことは「ほとんど」ないそうだ。
大気中からCO2を回収するための、最も自然な方法は植林だ。しかし回収量を高めようとするほど、植林に莫大な土地が必要になるほか、山火事や伐採、枯死などで失われたりもする。なにより木々が育つのに時間がかかるため、具体的に植林の効果を弾き出すのは難しい。そこでヴルツバッハー氏らは、技術を用いて積極的にCO2を回収する必要があると考えた。
Climeworksは2016年に、自然界なら数百~数千年はかかるというCO2の無機化を、2年未満で実現できることを実証した。2017年に最初のCO2回収プラントをスイスに建設後、同年アイスランドにCO2の回収・貯蔵プラントを設置。そして2021年にはアイスランドに初の大規模プラント「Orca」を稼働し、年間4,000トンのCO2回収を可能としている。
こうした活動は、それまでの温暖化対策における「どうすれば排出を回避抑制できるか」という発想の方向を大きく変えることになり、CO2を吸収する藻類をはじめ、各国でCO2回収の研究が盛んになってきた。
今年4月には、国連の機関である「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が、地球温暖化対策に関する報告書に「二酸化炭素除去(Carbon Dioxide Removal:CDR)技術は、二酸化炭素と温室効果ガスの排出を正味ゼロにしつつ、緩和しがたい残留排出を相殺するために必要」だと記している。
Climeworksでヴルツバッハー氏とともに共同創設者および共同CEOを務めるクリストフ・ゲバルト氏は、「我々が構築している規模のDACプラントは誰も作ったことがない」と述べ、「成功の秘訣は現実世界に可能な限り速くテクノロジーを稼働させることであり、迅速な技術導入によって、数メガトン規模の堅牢な運用が可能になるだろう」と説明している。