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 2月末に開幕した2022年のNTTインディカー・シリーズ。ロードアメリカが今年の8戦目だった。今年は全17レースなので、次のミド・オハイオが中間地点だが、インディ500はダブルポイントなので2戦分と考えるとちょうど半分が終わった計算になる。

 ランキングトップは293点を稼いでいるマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)。ダブルポイントのインディ500優勝が効いているのはもちろんだが、8戦で表彰台3回、トップ10/6回という安定感、しぶとさが高いチーム力との相乗効果を生んでいる。

 しかし、このまま彼が最後まで逃げ切るという展開は想像しにくい。予選でのスピードもまだ上位で安定……というレベルにはないからだ。チャンピオンになるためには、もう一段ステップを上がる必要があるだろう。

スウェーデン人ふたり目のインディ500ウイナーとなったマーカス・エリクソン
スウェーデン人ふたり目のインディ500ウイナーとなったマーカス・エリクソン

安定した成績を見せるエリクソン。このままポイントリーダーをキープすることができるだろうか?
安定した成績を見せるエリクソン。このままポイントリーダーをキープすることができるだろうか?

 エリクソンのトップと並んで意外に感じられるのが、2番手にウィル・パワー(チーム・ペンスキー)がつけていること。開幕戦で3位に入ると、その後の3戦で連続して4位フィニッシュ。

“らしくない”安定感を発揮した後、GMRグランプリでポールポジション獲得。そして、デトロイトでは作戦を味方につけてもいたが、彼ならではの他を寄せ付けない速さと、タイヤを労わる走りや前車とのギャップのコントロールなど非常にクレバーなベテランらしい走りも実現して今季初勝利を飾った。

インディカー歴代最多ポールにあと3つと迫るウィル・パワー
インディカー歴代最多ポールにあと3つと迫るウィル・パワー

 続くロードアメリカではルーキーにブツケられて上位フィニッシュの可能性を潰され、獲得ポイントは現在266点。二度目の王座を目指せる位置にいるが、不運な面も健在だ。

 ポイント3番手はジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)。テキサスでは最終ラップにチームメイトのスコット・マクラフランをパスして優勝(オーバル)し、ロングビーチではアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)、ロマン・グロージャン(アンドレッティ・オートスポート)とのバトルを制して2勝目(ストリート)。

 さらに、ロードアメリカではアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)を悠々突き放しての優勝(ロードコース)とすでに3勝もしている。三種類のコースで勝って新賞金100万ドル(自分の好きなチャリティに寄付する)も授与された。

3勝を挙げランキング3位につけるジョセフ・ニューガーデン
3勝を挙げランキング3位につけるジョセフ・ニューガーデン

 しかし、ランキングは3番手。エリクソンとの間には32点の差がある。3勝というのはチャンピオンになれても不思議はない数字だが、1勝のライバルたちを相手に追う立場となっている。混戦模様の2022年シーズンだが、8戦3勝のニューガーデンがチャンピオン候補のナンバーワンと見ることができる。

 開幕8戦でウイナーは6人誕生している。ランキングトップ3以外だとマクラフラン(開幕戦セント・ピーターズバーグ)、パト・オワード(第4戦バーバー)、アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアンで走るコルトン・ハータ(第5戦GMRグランプリ)が1勝ずつを挙げている。

 勝っていて不思議はないのに今年まだ勝てていないドライバーとしては昨年度チャンピオンのパロウと6回チャンピオンになっているスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)だ。

 ディクソンはインディ500で2年連続、通算5回目のPP獲得を果たしたが、オーバル以外での予選パフォーマンスは悪くなっている。

インディ500ではミスで勝利を逃したスコット・ディクソン
インディ500ではミスで勝利を逃したスコット・ディクソン

「新しいタイヤへの対応が良くなかった」と言っている彼は、今シーズンはまだ3段階の予選でファイナルへの進出を果たしていない。Q1での敗退も複数回あった。シーズン後半にその辺りを修正して来れない場合、17年続いて来ている1シーズン1勝の記録が途絶えてしまうかもしれない。

 とは言うものの、終盤のピットスピード違反によって21位フィニッシュとなったインディ500をを除く7戦すべててトップ10フィニッシュ、そのうち3回がトップ5という成績はさすが。ベストリザルトはデトロイトでの3位と表彰台が僅か1回というのは寂しいが、ランキングは6番手で、トップとは69点差。2勝を挙げれば即チャンピオン争いに加われるだろう。

 ランキング4、5番手につけているオワード(1勝)とパロウ(未勝利)は、このままでは終わらないはずなので、シーズン後半戦に注目すべき存在となるだろう。

マクラーレンとの契約も延長し、成長を見せるパト・オワード
マクラーレンとの契約も延長し、成長を見せるパト・オワード

ディフェンディングチャンピオンのパロウは未勝利ながらランキング5位に
ディフェンディングチャンピオンのパロウは未勝利ながらランキング5位に

 逆に、チャンピオン争いをするはずだったハータは1勝しているがランキングは11番手と今年のタイトル獲得は難しい状況だ。彼のチームメイトのロッシも復調の兆しらしきものはみえているが、2019年以来となる優勝に今シーズン中に手を届かせることはできるか微妙なところだ。

 チャンピオン争いは現在のトップ6であるエリクソン、パワー、ニューガーデン、オーワード、パロウ、ディクソンに絞り込まれたと見てよいのではないだろうか。

 後半戦、優勝が期待されるドライバーとしては、リナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)、佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)、グロージャン、シモン・パジェノー(メイヤー・シャンク・レーシング)が挙げられる。

 ミド・オハイオからのシリーズ後半戦。チャンピオン争いはさらに白熱していくだろう。

徐々に歯車がかみ合い始めている佐藤琢磨
徐々に歯車がかみ合い始めている佐藤琢磨