先日、信号待ちで、隣に日産「パオ」が止まった。いけないと思いつつも、「やっぱいいよな…」とジロジロ見てしまったのだが、「あんなに細かったっけ!??」と思うほど、ステアリングホイールが細いのに気が付いた。
パオのように、昔のクルマのステアリングホイールは細かったが、昨今の新型車はどれも太い。なぜステアリングホイールは太くなったのだろうか。
文:吉川賢一
アイキャッチ写真:Adobe Stock_あんみつ姫
写真:TOYOTA、LEXUS、NISSAN、HONDA、MITSUBISHI、SUBARU、MAZDA、BMW
軽自動車は細め、欧州系スポーツモデルは太め
ステアリングホイールは、メーカーごとに太さや外径、デザインなどが異なり、同じメーカー内でも車種ごとにサイズが分かれている。大きく分けて、細めのものと太めのもの、その中間の3つに大別され、軽自動車には細めのグリップが多く、欧州系メーカーのスポーツタイプのクルマでは、極端に太めのグリップとなっている。特に、BMWのMスポーツ系は、ステアリングホイールのグリップ部分が非常に太くて驚いた。BMWは、通常モデルであってもやや太めを採用しているようだ。
国産メーカーはどうかというと、トヨタや日産、ホンダは中間の太さで、マツダは比較的、細めのグリップ。マツダは、コクピット周りを「馬に乗ったときの手綱を引く」イメージに近づけているそうで、ステアリングホイールの太さも、手綱を持つイメージで細めにつくり込んでいるため、細めとなっているようだ。また、前述したように、軽自動車はどのメーカーのモデルも細めだが、ステアリングホイールスイッチが付くようになってから、徐々に中間の太さへに近づき始めている(外径は小さめ)。
太いと繊細な操作が可能だが、人によっては疲れやすくも
ステアリングホイールは、外径は、回す量と(アシストが同じだとすれば)重さに関係し、グリップの太さは、ステアリングホイールの繊細な操作に関係する。一般的には、太めのグリップの方が、ステアリングホイールと手のひらが触れる面積が増えるため、滑りにくくなって繊細な操作が可能になり、また、ステアリングホイールを「ぎゅっ」と握らずとも密着するため「疲れにくい」といわれている。一方で、グリップが細いと、軽快な操作が可能だが、細すぎは、ステアリングホイールを指先で握り込まないと力の入れ具合が難しくなるので、長時間の運転では疲れてしまう。
ただ、グリップ太さの効果は、手の大きさや指の長さは人によってだいぶ異なるため、太いことでむしろ「疲れる」という方もいる。特に、手のひらが小さかったり、手の指が短い方にとっては、太めのグリップだと握りにくく、握りが安定せずに滑りの原因となる。また、無意識に指先を開く方向に力がかかっているために疲れやすく、運転がしにくく感じることもあるようだ。
軽自動車で細めのステアリングホイールが多いのは、(軽は日本国内向けであるため)日本人の体型にあわせたサイズにしていることが大きく関係している。逆に、欧州スポーツモデルのステアリングホイールが太いのは、欧州人に合わせていることに加えて、スポーツモデルだけに、繊細なハンドル操作を重要視してのことだ。
「万人に最適」は難しい
シート形状もそうだが、身体のサイズや好みなど、人それぞれに違うことなので、万人にとって「いいステアリングホイール」というのは、なかなか難しい。かつては、MOMOやナルディといった名門ブランド製のステアリングホイールに交換している方も多かったが、現在の新型車は、ステアリングホイールに、エアバッグをはじめとして各種スイッチやバイブレーション機能、ヒーターなど、あらゆる装置が仕込まれているため、好きなメーカーのステアリングホイールへ交換することは非常に困難。チルトやテレスコピックで上下や前後の位置調節はできても、ステアリングホイールの外径と太さは変更が効かない。
そっと手を添えておくだけで、力を入れなくともステアリングの保持ができ、切るときにも滑りがなく、正確に操舵ができる。そうしたステアリングホイールをよく、「ステアリングホイールが自然と手に吸い付く」と表現するが、それには、外径や太さの他にも、表皮の素材が大切。本革巻きやアルカンターラ、ナッパレザーなど、様々な種類があるが、それもユーザーの好みが大きく関係する。
形状に関しては、シートにしろステアリングホイールにしろ、人間工学的に中間をとった形状となっているのだが、人によっては、どうしても合わないこともある。新型車でも中古車でも、クルマを購入する際は、少なくとも運転席には座って、ステアリングホイールのグリップ太さや素材感、シート形状を確認してから購入を決めるようにしてほしい。
消えるのが先か、「万人に最適」が開発されるのが先か!??
昨今は、特定の条件下で「ハンズオフ」ができる機能を有したクルマが登場し始めており、いよいよ合法的に、(ある条件下と特定のクルマにおいては)ステアリングホイールから手を放せる時代がやってきた。しかし本格的な自動運転はまだ遠く、ステアリングホイール自体が不要となる時代は、まだまだ先になるだろう。
ステアリングホイールが消える(自動運転時に格納される)のが先か、どなたにも最適な形状・素材のステアリングホイールが開発されるのが先か、ステアリングホイールの進化も楽しみだ。
【画像ギャラリー】国産主要メーカーの最新車種のステアリングを徹底比較!!(16枚)画像ギャラリー投稿 最近ハンドルが太くなっている!! なぜ? どうして?? クルマのステアリング事情と将来 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。