ETC非対応の有料道路はもちろん、商業施設や遊園地などの駐車場、ドライブスルーやガソリンスタンドでスマホ決済のようなクルマにいながらにして自動決済できるETCXというサービスがあります。
このETCXとはどんなものなのでしょうか? ETCと何が違うのでしょうか?
文/柳川洋
写真/ETCソリューションズ、アネスト岩田ターンパイク箱根、AdobeStock(トップ写真=west_photo@AdobeStock)
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■いまだに現金払いしかダメな料金所で「ETCで払えれば楽なんだけど」と思ったことありませんか?
バイクでETCの使えない料金所を通るときは憂鬱だ。料金所ブース横でギアをニュートラルに入れてバイクを止め、グローブをつけたままの手でジャケットのポケットから不器用にお札を取り出して係の方にお渡しする。
後ろのクルマから「早くしてよ」という無言のプレッシャーを感じつつ、強風でお札が飛ばされたらどうしよう、お釣りを道路に落としたらバイクを降りて拾わなければいけないし、などとビクビクしながら、現金で通行料金を払うというのはかなりのストレス。
雨が降っていたりしたらまさに苦行と言ってもいいだろう。バイクに乗ると、通行料金をETCで支払うことができれば本当に楽だといつも思う。
バイク乗りだけではなく、クルマに乗っていても、一人乗車の時や、雨の日や冬寒いとき、財布に一万円札しかないときなど、「窓開けて現金をやり取りする代わりに、ETCで払えれば楽なのに」と思ったことがおありだろう。
先日バイクで伊豆に向かい、箱根ターンパイクの料金所の手前に赤字で「ETCX車はこちらへ」と書かれた黄色い看板を発見。いつものように千円札を出して450円のお釣りをポケットに押し込みながら、「ETCXって何? ETCと何か違うの? ETCで払えれば本当に楽なんだけど」と改めて思った。
■追加コストゼロで高速道路以外でもETC決済が可能な「おサイフケータイ」ならぬ「おサイフクルマ/バイク」サービス、ETCX
では、本題に入ろう。ETCXとは何か?
クルマの90%超に装着されているETCを、高速道路での支払い以外でもより幅広く活用し、有料道路や駐車場、ガソリンスタンドやファーストフードのドライブスルーなどの支払いの際、クルマやバイクに乗っているだけで、ETCで決済できるようにするサービスだ。
通常のETCと違うポイントは、ノンストップでは利用できず、高速道路のスマートIC利用時と同様に、一旦停止が必要なこと。
通常のETCを利用するには、ETCカードの年会費やETC車載器購入費、セットアップ費用を支払う必要がある。だが、ETCXの場合、登録だけすませれば年会費などの追加費用はかからない。ETC2.0車載器でなくても利用可能だ。
登録には、クレジットカードとETCカードの情報、本人の情報が必要だが、審査もなく5分もあれば入力は終了する。登録完了のメールが送られてくれば、すぐに利用が可能だ。
このサービスは、Felica技術を使った非接触型IC決済のパイオニアであるソニー傘下のソニーペイメントサービス株式会社が主要株主となっているETCソリューションズ株式会社により、NEXCO中日本などと提携して運営されている。
もともとは2013年、第2次安倍内閣時代に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」の中で、「駐車場等、高速道路以外の施設でもETC等のITS技術が利用可能となる環境を整備し、利便性の向上を図る」とされたところから始まっている。
だが、3年後の2016年に変更された同宣言からは、「ETCの活用」という文言がひっそりと消えてしまった。
■ETCXが利用可能な場所は?
2020年8月からの4ヵ月間、ケンタッキーフライドチキン相模原中央店のドライブスルーでETCXが試験運用された時の動画(現在は試行期間終了)を、運営会社であるETCソリューションズ株式会社の出資者のうちの1社であるOKI公式チャンネルで見てみたが、確かに便利そうだ。
ETCXのホームページを見ていると、「有料道路はもちろん、商業施設や遊園地などの駐車場、ドライブスルーやガソリンスタンド、さらにはカーフェリーやEV充電スタンドまで、あらゆるスポットへとサービス拡大中」と書いてある。
だが、現在ETCX決済に対応しているのは全国でわずか6ヵ所のみ。有料道路はアネスト岩田ターンパイク箱根(小田原料金所)、伊豆中央道(江間料金所)、修善寺道路(修善寺料金所と大仁料金所)、鳥飼仁和寺大橋有料道路の5ヵ所。ガソリンスタンドはオイルバンク新城店の1ヵ所と伸び悩んでいる。
ETCXをさらに普及させる現実的な施策としては、現金でしか料金が支払えない、都道府県などの道路公社が管理している有料道路から導入を進めていってほしいところだ。
ドライバーやライダーが小銭を準備せずにスムースに通行できるようになり、利便性が高まって渋滞も減ること、料金所に釣り銭補充や売上金の回収のため、現金を運搬する手間が減ること、料金所での人件費節約などのメリットが考えられる。
地元の有料道路でETCXが活用されれば、周辺の住民の利用が増え、近隣の商業施設などでもETCX決済を利用したいという声も増えると思われる。
しかし、料金徴収係の方の雇用の維持や、非接触型ICカード、モバイル決済など他の決済サービスとの当初設置費用や決済手数料の競合なども含め、「大人の事情」もたくさんあるのかもしれない。
ETCXのサービスを提供しているETCソリューションズ株式会社では、2024年までにETCX対応施設・店舗を100カ所まで増やし、将来的には全国10000カ所での利用を目指すとのことなので、これからのサービス拡大に期待しよう。
国土交通省によると、2022年4月現在、ETC利用台数は1日あたり771万台、利用率は93.9%にも達している。また首都高速では、現在35ヵ所の料金所がETC専用となっており、2025年度中までにETC専用の料金所は全体の約9割まで拡大されるという。
近い将来、ほとんど全てのクルマにETCが搭載されることを考えると、追加費用なしで利用可能なETCXはもっと普及の余地があるように思われる。有料道路を管理している自治体の首長に積極的に働きかけるなど、まずは公的なルートを活用して、利用可能な場所を増やしていってほしい。
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投稿 もう入った? お財布カーETCXってなんだ? メリットとデメリットとは は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。