もっと詳しく

 7月9〜10日、宮城県のスポーツランドSUGOで開催されるENEOSスーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook第3戦『SUGOスーパー耐久3時間レース』。このレースは7クラス49台が2グループに分かれ3時間ずつのレースを戦うが、ST-Qクラスでは、28号車ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptが参加しないことになった。この理由について、スポーツランドSUGOでチームに聞いた。

 2022年からORC ROOKIE Racingは、ST-Qクラスに水素エンジンを積むORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptとともに、カーボンニュートラルフューエルを使用し、1.4リッター3気筒ターボエンジンを積むORC ROOKIE GR86 CNF Conceptを投入。第1戦鈴鹿では同じくカーボンニュートラルフューエルを使うTeam SDA Engineering BRZ CNF Conceptに対し速さで先行した。

 ただ、第2戦NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レースでは、レース中にミッショントラブルが発生。修復しチェッカーを受けたが、Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptに対して15周の差をつけられることになった。

 迎える第3戦はスポーツランドSUGOで7月9〜10日に行われるが、この大会のエントリーリストには28号車ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptの名が記されていなかった。この欠場の経緯についてチームに聞くと、トヨタ自動車からROOKIE Racingに欠場が打診されたものだという。

 この欠場についてチームによれば、「車両素性の把握のため欠場」というのがその理由。ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptは1.4リッター3気筒ターボを積むなど「エンジンをはじめ、ベース車両とくらべ数多くのアイテムを織り込ませていただいたが、レースの厳しい状況で走らせる中で、トヨタ自動車として、設計意図どおりとなっていないことが分かってきた部品もあり、一度立ち止まって素性の確認をしっかりとすることが必要と判断」したものだという。

 具体的には「ボディの骨格から操縦安定性、ブレーキなど多岐にわたる部品の課題が、これまでの2戦で浮き彫りとなった」としている。その一例が富士で起きたミッショントラブルで、当然レースへの対策をしていたものの、負荷が大きいターボエンジン導入などもあり、「改めて根本的なレベルアップが必要と感じた」という。

 参戦コンセプトにもあるとおり、ORC ROOKIE Racingはスーパー耐久参戦で『モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり』に取り組んでおり、レースを通じて人とクルマを鍛えている。「今回の課題もレースの過酷な状況に置いたからこそ見えてきたと考えている」としつつ、「ただ現状では素性の把握が十分でないまま進めているため、課題に対し、効果的な打ち手となっておらず、アジャイルな開発ができていないと判断した」と敢えて欠場に至ったとした。

 富士では同じGR86でデビュー戦となったST-4のTOM’S SPIRIT GR86やTeam SDA Engineering BRZ CNF Conceptにもミッショントラブルが起きていたが、破損部位や理由は異なるという。既存のミッションでも今後のスーパー耐久のレース距離では十分対応は可能だというが、他チームとも情報共有を行いながら、根本的な対策を進めていくとしている。

 ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptは一見すると通常のGR86のレーシングバージョンだが、先述のとおりさまざまなアイテムが盛り込まれ、『もっといいクルマづくり』のためのトライを続けながらスーパー耐久を戦っている車両だ。今回の欠場はファンとしては残念なところではあるが、「アジャイルな開発」を通じたさまざまな改良は、今後に活かされていくはずだ。