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 みなさんこんにちは。路線バス運転手の運屋フランクです。私は多い時で1日約200kmバスを運転しているのですが、当然ながらバスの走行距離はどんどん伸びています。

 いろいろな乗務員が1台のバスをシェアしているので、月5000kmのペースで走ったとしても、年間6万km。乗用車なら乗り換えを考える人もいる5年目で30万kmに達するのです。

 30万kmという走行距離は乗用車なら勲章に値するようなオーナー愛の産物ですが、一般的な乗用車はその前に廃車になっている個体がほとんでしょう。ですが路線バスが5年ごとに廃車になっているという話は聞きません。

 となると、バスの耐用年数はどれぐらいなのかというのが今回のお話。長期の使用を前提に設計された、バスの丈夫さには驚くばかりです。

文/運屋フランク、写真/Adobe Stock(トップ画像=udonsuki@Adobe Stock)


■行き届いた整備も長寿の理由

大きなバス会社の場合、社内に整備部門があり、整備士が日々点検と修理を行っています(scharfsinn86@Adobe Stock)

 年間6万kmという走行距離は一般の乗用車では間違いなく過走行レベルですが、1日200kmというのはかなり走っている計算。平均をとると、おおむね年間5万kmでしょう。ただ、それでもプライベート用途の乗用車から見たら圧倒的に多いですよね?

 そのペースで走り続けるとバスの車体にどんな影響が出るのでしょうか? 結論から言えばまったく問題ありません。整備士のメンテナンス努力とバス車体の設計の賜物なのですが、驚くほど痛みや「ヤレ」はなく元気に走ります。

 バスは乗用車よりも短いスパンでの点検が義務付けられていて、車検は年1回、法定点検は3ヶ月に1回です。細かく点検をしているからこそ、よく走ってくれるというわけです。新車のバスも例外なくオドメーターが爆上がりしますが(それも万単位で!)、車体はビカビカのまま。それぐらい整備が行き届いているのです。

■走行距離200万kmオーバーのバスが現役!

 私の勤務先では新車と中古車を定期的に購入しています。とはいえ、予算が無限にあるわけもなく動くバスはとことん現役で働いてもらいます。

 私の事業社では1990年初期の三菱ふそうのバスが今も現役ですが、走行距離はなんと200万kmオーバー! 実際に運転した印象は、30年選手とは思えないほどピンピンしています。特にエンジンの調子が良く、豊かな低速トルクもそのまま。ベテラン運転手、新人を問わず乗りやすいと評判です。

 しかし、車体が錆などでボロボロになり、車検取得に問題が出てくると、いよいよ運行不可になる運命もあります。ただ、ここでもバスは廃車にはならずに新たな買い手の元へ嫁いでいきます。その嫁ぎ先は東南アジアなど。インドネシアなどで余生を過ごしているようです。恐るべきタフネスぶりですね。

■バスの耐用年数はずばり、エンドレス

 先述の200万km走破の三菱ふそうのバスは都市部ではあまり見かけないと思います。三菱ふそう自体が路線バスの製造を縮小したこともありますが、年々厳しくなる環境性能に合わせて、Jバス(現在の路線バスの主要メーカー)の新型車に順次置き換わっているからです。

 地方のバス会社が新車を導入する場合も、Jバス製が主流です。その新型車の耐用年数は、正直わかりません。何せ導入されて数年しか経っておらず、100万kmを超えるようなバスは稀だからです。

 ただ、メーカーもバスの耐用年数については多くのシミュレーションをしており、耐用年数は乗用車の比ではありません。Jバス製の新型車も10万km、20万km、30万kmと元気に走っています。経年劣化による故障や寿命なんて、とても考えられません。

 もちろん新型車の整備のスパンも従来の通りで問題ないようです。トラブルで整備のピットに長く寝ているようなこともありません。当然昔より製造技術も整備技術も進歩しているので、従来型車よりもビンビン走ってくれます。

 運転手も安心してハンドルを握れるというわけです。何より新型車を使うと、子供たちが喜んで乗ってくれるような気がしますね。

 長くバスに乗っていると、愛着が湧いてきますし、洗車をしてあげると、バスも喜んでいるような気がします。バスの耐用年数はエンドレス。きちんと手をかければ、300万kmオーバーも夢ではないでしょう。

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