もっと詳しく

自民党の安倍晋三元首相が8日、奈良市の大和西大寺駅近くで街頭演説中に銃撃され、死亡するという衝撃的な事件が起きたが、わが国では銃器による発砲事件はもとより、政治家への襲撃・テロも極めて少なかった。

首相の辞任を表明した安倍氏(20年8月、官邸サイト)

昨年に起きた銃器の発砲事件は10件。発砲事件による死傷数は5人。うち死者1人、負傷者4人となっている。わが国は銃器の取り締まりが厳格であるだけに、欧米諸国に比較すると際立って少ない。

石井紘基氏(旧民主党アーカイブサイト)

一方、近年起きた政治家へのテロとして最も記憶に残るのが、2002年10月に民主党の石井紘基衆院議員が東京都内の自宅前で右翼活動家に刃物で刺されて死亡した事件だろう。現役の国会議員が刺殺されるという衝撃的な事件だったが、さかのぼれば1990年10月に自民党の丹羽兵助衆院議員が陸上自衛隊駐屯地の記念行事で刺殺される出来事もあった。

また、07年4月には選挙運動中だった伊藤一長・長崎市長がJR長崎駅近くの選挙事務所前で、暴力団幹部に拳銃で撃たれて死亡した。銃による犯行という手口や選挙演説中というシチュエーションは、今回の安倍元首相の襲撃を想起させる。長崎市長といえば、1990年1月に本島等市長も右翼団体の構成員に市役所前で銃撃され、重傷を負ったことがある。

このほか、1992年3月には、自民党の金丸信副総裁への銃撃や、2006年8月には自民党の加藤紘一衆院議員の実家と事務所への放火といった政治家に対するテロ事件が起きたが、幸いなことに両名にケガはなかった。

首相経験者が襲撃されて死亡した事件は戦後に例がない。今回の銃撃は日本中だけでなく世界にも計り知れない衝撃を与えている。