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 世界中で開催されるWRC。その取材で世界中をめぐっていると、目にするのは競技の現場だけでなく、その国々の文化だ。特に食事は欠かせないだけに、訪問国の食文化との出会いがある。

 今回は佐久間健氏がアルゼンチンで楽しんだ「アサード」をご紹介しよう!

文・写真/佐久間健

【画像ギャラリー】アルゼンチンで開催されたWRCで出店されていた名物料理「アサード」を画像でチェック(9枚)画像ギャラリー


■ラリー観戦のお供にアサード!!

ラリー・アルゼンチン開催中は、コース横に出店が出る。机の上にはワインとピーナッツが山積みで、BBQの網の上にまでピーナッツの袋が乗っているのはご愛敬

 世界を転戦するWRCのなかで、日本からの移動時間が一番長いのがアルゼンチンだ。何せ日本から見ると地球の裏側、ちょうど真反対の南半球にあるのだ。

 日本からはいろいろな行き方はあるが、アメリカあるいは南アフリカ経由がポピュラーだろう。

 飛行機で首都ブエノスアイレスにつくとまた乗換で、西の町コルドバまで行くことになる。このコルドバの近くにあるカルロスパスが、ラリー・アルゼンチンの開催地だ。

 このラリー開催地で今回注目したいのが、「アサード」と呼ばれるアルゼンチンのBBQだ。え? BBQ? そうBBQだ!!

 ラリー当日の早朝にSSへ向かうと、ギャラリーの集まる様な場所ではあちこちに白い煙が漂っている。これは朝靄ではなく、焚火の煙なのだ。ギャラリーが観戦場所に到着してまず最初にやることは、ラリー車がくるまでの間にBBQの準備なのだ。

 当然ラリー開催中は出店も出ていて、テーブルの上にワインとピーナッツを積み上げて並べ、その横にアサードの網が準備される。上記の写真では網の上にまでピーナッツの袋が並んでいて、商売っ気はあまり感じられない(笑)。そうかと思うと、焚火のわきに網を3つも広げて大量の肉を並べているような熱心な店主もいたりする。

■焼いた肉とソーセージの香りが漂うラリー会場

肉は骨付きのバラ肉やリブロースで、肉がついたまま骨に対して直角に切るため、肉骨肉骨と交互につながった状態となる

 アサードの基本的なやり方はまず焚火をして消し炭を作り、その炭でじっくりと時間をかけて食材を焼く。肉は骨付きのバラ肉やリブロースで、肉がついたまま骨に対して直角に切り分けるため、肉・骨・肉・骨と交互についた状態となり、なんともうまそうなのである。

 また網のすぐ横では補充用の消し炭を作るための焚火がある。アサードでは肉以外だけでなく、ソーセージが欠かせない。これには2種類あり、色が薄いのはふつうソーセージで、色が濃いのは血の詰まったソーセージだ。一緒にパンを焼き、これでソーセージを挟んだ「チョリパン」も地元の名物だ。

 他には子豚の開きなども出てくる。鰺の開きなど魚の開きは今まで見たことがあるが、子豚の開きはアルゼンチンで初めて見た。蚊取り線香の様に巻かれたソーセージと子豚の開きが網の上に並んでいたりするのだ。

 ラリー期間中は、取材仲間みんなでよくカルロスパスのアサードの店に通った。今でもよく覚えているのは、その安さ! まずビールで乾杯して、赤ワインを飲みながらたらふく肉やサラダを平らげ、最後にデザートまで食べて、当時一人5ドル(米ドル)ちょっと!!

 まさにアルゼンチン万歳だったのである!!

カルロスパスのアサードの店。山ほど食べてたったの5ドルという安さだった!!

●解説●

 ラリー・アルゼンチンはコルドバ州で開催されてきたラリーで、1980年に初めてWRCを開催した。美しい景観の中を走るグラベル(未舗装路)のタフなコースが特徴。

 1991年にカルロス・サインツがセリカGT-FOURで日本車として初めてこのラリーを制した。最近では2018年にオィット・タナックがトヨタヤリスWRCで優勝している。

 2020年のラリーがコロナ禍によって中止されて以来、残念ながらWRCは開催されていない。

1996年のラリー・アルゼンチン優勝、トミ・マキネンのランサーエボリューション

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