タクシーに限らず、セドリックなどの往年のセダンの多くに取り付けられていたレースのシートカバー。一部車種では今なおオプション設定されてはいるが、装着率は右肩下がりといった状況だ。
逆に現在でもほぼ100%の確率で付けられているのがタクシーである。沖縄などの地方ではビニールカバーを装着している場合もあるが、レースの確率が超高い。これは一体なんでなのか!? それに加えてJPNタクシーはなぜレースカバーの採用率が低いのか!?
文/小鮒康一、写真/TOYOTA、AdobeStock
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■レースカバーは高級品の証だった!? 家庭にもレースが溢れかえっていた
クルマのシートに装着するカバー。現在ではシート全体を覆う本革調のものが人気となっており、ミニバンやSUVユーザーが車内のイメージを一新するために装着するというケースも珍しくない。
しかし、ひと昔前のシートカバーといえばヒラヒラとしたデザインが特徴的なレースのシートカバーが主流となっており、それが高級車の証ともなっていたのだ。
若い世代の読者にはピンとこないかもしれないが、昔はテレビや固定電話(もちろん黒電話)といった家電などにもレースのカバーをかけることが一般的で、レースのカバー=高級品、大切に扱いたい品という意識が主流となっていたのである。
となれば家の次に高額な買い物とも言われるクルマにレースのカバーをかけるのは当然の成り行きであり、クラウンやセドリック&グロリアといった真の高級車はもちろんのこと、マーチやカローラ、軽自動車に至るまでレースのシートカバーはオプション設定されていた。
メーカー純正品のレースカバーでは車名のロゴやエンブレムが備わった凝ったデザインのものも存在しており、愛車の所有欲を満たしてくれる大切なアイテムのひとつとなっていたというワケだ。
そんなレースのカバーも時代の流れと共に装着するユーザーは減少し続けており、現在ではユーザーの年齢層が高いセダンなどの一部車種でオプション設定が残るのみとなっているのだが、まだまだレースのカバーの装着率が高い車両がある。それがタクシーである。
■清潔感がキモ! じつは定期的に交換していた
令和の時代になってもレースのカバーを装着する姿を多く見ることができるタクシー。そんなタクシーがレースのカバーを装着する理由のひとつが、清潔感を印象付けることができるためと言われている。
確かに汚れが目立ちやすい“白”というカラーが美しい状態で保たれていれば視覚的にも清潔な雰囲気を感じ取ることができるし、タクシー側も汚れを目視で確認することができるため、キレイに保とうという意識が働く。
そのため多くのタクシー会社では専用のシートカバーを取り扱うリース業者と契約を結んでおり、定期的にレースのカバーを交換することで清潔な状態を保っているほどなのである。
そしてシートカバーを装着しておくことで、万が一シートが汚れてしまうような状況が発生してしまっても、シートカバーを交換することで事なきを得ることができるというのもメリットと言えるだろう(もちろん汚れの度合いなどにもよるだろうが)。
シート自体を取り外して洗浄するというのはなかなかハードルが高い作業となるが、シートカバーであれば比較的簡単に交換することが可能であるし、予備を持っておいてもそこまでコストも場所も圧迫しないというのも理由のひとつと言えそうだ。
■一転! JPNタクシーは装着率が低い!? そのワケとは
2017年にトヨタがリリースしたJPNタクシーは、その名の通りタクシーとして使われることを念頭に置いたまさに専用設計車。現在では首都圏を中心に導入が進んでおり、駅前などのタクシープールでその姿を見ない日はないと言っても過言ではないだろう。
そんなJPNタクシーではあるが、意外にもレースのカバーを装着している車両が少ないという声がある。もちろん新型車であってもトヨタ純正アクセサリーとしてレースのカバーの設定はなされているし、社外品としてもJPNタクシー用のレースカバーは存在しているにもかかわらずだ。
その理由のひとつとして挙げられるのは、JPNタクシーに採用されているシート表皮がある。なんとJPNタクシーのシートには「抗菌仕様合成皮革シート表皮」が全グレードに採用されており、万が一汚れが付着したとしても簡単に拭き取れる仕様となっているのである。
そのため、わざわざシートカバーを装着しなくても清潔な状態を保ちやすくなっており、シートカバーにかかるコストをカットしやすくなったというワケなのだ。
ちなみにJPNタクシーで抗菌仕様合成皮革シート表皮が採用されているのは、乗客が座る可能性がある助手席と後部座席のみとなっており、運転席は通気性の高いファブリックシートとなっている点もさすがタクシー専用車と思えるポイントだ。
このように実は深い理由があったレースのシートカバー。最近ではあえておじいちゃん感を出すためにドレスアップ(ドレスダウン?)パーツとして装着するユーザーもいるようで、カスタマイズの奥深さを感じずにはいられない。
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