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クルマは顔で語る!! レクサスの歴史を紡ぐ糸「スピンドルグリル」の変遷

 レクサスといえば真っ先に浮かぶのはあの独特な顔だろう。スピンドルグリルといわれる個性的なフロントマスクは、たとえ「L」のエンブレムがなくてもレクサスだとわかるほど浸透している。

 しかしそんなスピンドルグリルも代を重ねるごとに新しい要素を加えて進化を続けている。そこでカーデザインといえばおなじみの清水草一氏に、歴代スピンドルグリルを評価してもらった!

文/清水草一、写真/Lexus、清水草一、ベストカー編集部

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■進化を続けるスピンドルグリル

スピンドルグリルの新境地を開いたレクサス LX

 このところ、レクサスのデザインアイコンであるスピンドルグリルが、急速な勢いで進化している。

 レクサスLXでは、宙に浮かんだようなぶっといメッキの横桟で新境地を開いたかと思えば、EVのRZでは、グリルを反転させたような「スピンドルボディ」を採用。新型RXは、開口部のあるグリルのまま、上部をボディに溶け込ませた「スピンドルボディその2」とも言うべき形状で登場した。

 思えば、スピンドルグリルが登場して、今年は10年の節目に当たる。そこで今回は、スピンドルグリルの歩みを振り返ってみよう。

■ドイツ御三家を超えるためにデザインされた「ブランドの象徴」

グリル上部をボディに溶け込ませたようなデザインのレクサス RX

 高級車の世界に新たな基準を持ち込んだレクサスブランドだが、スピンドルグリルが登場するまで、デザイン的には地味で、象徴となるアイコンを持たなかった。

 このままではドイツ御三家を超えることはできない。熟慮の末に投入されたのが、スピンドルグリルだ。

 スピンドルとは「糸巻き」のこと。糸巻きを横から見た形状だ。トヨタの前身は豊田自動織機、つまり糸巻きの会社。そのルーツを示した形状という理由は後付けで、実際は、エア導入口をバンパー下まで広げる過程で出てきた形状だったという。

 それがわずか10年で大いなる発展を遂げ、レクサスブランドの象徴になることに成功したわけだが、仕上がりにはモデルごとにバラ付きがある。順を追って採点して行こう。

●4代目レクサスGS(2012年)/40点

 記念すべきスピンドルグリル第1号だが、その出来は、褒められたものではなかった。

この時点ではまだ、スピンドルグリルの中央をバンパーが横切っており、今見ると迫力不足で中途半端。よく見ればバンパー下まで形状はつながっているが、上下に分断されているので、開口部も小さく感じる。

 しかも、全体のフォルムを無視してムリヤリ後付けしたような印象も強く、大方の反応もネガティブだった。

このように、スピンドルグリルの第一歩は、さんざんなものだった。

●3代目レクサスRX後期型(2012年)/50点

 同じ年、マイナーチェンジに伴って、RXにもスピンドルグリルが導入された。

 中央のバンパーが奥に引っ込み、グリル全体の輪郭がはっきりわかるようになったが、しょせん後付けであり、この時は「マイチェン前のほうが上品でいいデザインだったのに」と、マイナスに評価された。

●初代レクサスNX(2014年)/75点

 当初からスピンドルグリルが組み込まれてデザインされた、最初のレクサス車。いま見るとインパクトはイマイチだが、基本形はこの時すでに完成している。

 バンパーによるグリルの上下の仕切りは完全に消滅。最大のポイントは、スピンドルグリルがフォムル全体になじんでいることだ。それによって、印象的かつ威圧的な、いい意味でのオラオラ感を獲得している。

●現行レクサスLS(2017年)/65点

 先代LSは、2013年のマイナーチェンジで、スピンドルグリルが後付けされたが、後付けの悲しさで、この時もフォルムから浮いていた。

 2017年のフルチェンジでは、繊細かつシャープなイメージのスピンドルグリルで登場。全体にはフィットしているが、LSのデザインそのものが、無理にスポーティに振りすぎたきらいがあり、スピンドルグリルも、ヘッドライト形状とともに、小細工に走っている印象だ。

 レクサスESも、LSの相似形でいまひとつだが、2020年にマイチェンされたISは、グリル内部がブラックアウトされ、形状もスッキリして力強さが増した、こちらは85点。

●現行レクサスLX(2022年)/92点

 従来のスピンドルグリル形状を継承しつつ、よりシンプルに、開口部はより大きくなった。しかもグリルの縁をなくすことで、輪郭ではなくグリル内の横桟による立体感で見る者を威圧し、すさまじい迫力だ。

 LXで走っていると、周囲の通行人やクルマから、痛いほど視線が突き刺さる。それでいてレクサスらしい気品も保っているのだからスバラシイ! LXのスピンドルグリルは、大きなブレイクスルーを達成している。

●レクサスRZ(2022年)/88点

 前述のように、従来のスピンドルグリルを反転させた「スピンドルボディ」に進化している。これにより、EVらしさとレクサスらしさを同時に表現。LXとは真逆の方向性ながら、こちらもシンプルかつ大胆でインパクトは十分。脱帽だ。

●新型(5代目)レクサスRX/75点

 グリルの縁をグラデーション的に曖昧にし、上部はボディに溶け込ませるようにしている。こちらも「スピンドルボディ」を名乗っているが、LXやRZのシンプルで大胆な手法に比べると文字通り曖昧で、インパクトも完成度も曖昧だ。

*   *   *

 このようにスピンドルグリルは、LXとRZで新境地を見い出し、今まさに伸び盛り。

 現在の勢いは、巨大化を進めているBMWのキドニーグリルを凌ぎ、袋小路感のあるアウディのシングルフレームグリルや、停滞気味のメルセデスのグリルをはるか後方に置き去りにしている。現時点では、デザインアイコンとして、ドイツ御三家を超えるパワーを感じる。

 レクサスは、今後もスピンドルグリルを大胆に進化させ続ける方針と思われる。常に成功し続けることは難しいが、小細工を捨て、「シンプルかつ大胆に」という姿勢を貫けば、世界に冠たるデザインアイコンのひとつになるのではないだろうか!

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