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>埼玉県桶川市に3店舗を構える、創業1887年(明治20年)の老舗和菓子店「五穀祭菓をかの」6代目の榊は、その日を心待ちにしていた。榊のアイデアで開発したポップな葛粉のアイス「葛きゃんでぃ」を1年半前に紹介してくれたテレビ番組が、「お取り寄せもできる中山道の新名物ベスト5」というコーナーで、もう一度、取り上げてくれるという連絡をもらっていたのだ。放送時間になり、自宅で父母と番組を観ていた榊は仰天した。ランキング形式の構成で、まさかの1位。その瞬間から店の電話が鳴りやまず、ネットショップにもアクセスが殺到し、1日も経たないうちに2500件の注文が入った。
>それだけの量の注文を一度に受けたことなどなく、「これは大変なことになった……」というのが、家族一同の感想だった。店舗の商品を切らすわけにはいかないから、職人は普段の業務と並行して膨大な葛きゃんでぃを作ることになり、店のスタッフも配送作業に追われた。その過程でミスが頻発し、苦情のメールや電話が止まらない。榊個人もSNSで誹謗ひぼう中傷に晒された。