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 タイヤはフロント、リアともにキレイに均等に減っていくと、ローテーション作業もなく、新品から破棄まで使い切れるのが理想ですよね。

 でも実際はフロント、リアで減り方は違うし、同じフロントでも左右での減り方も違うことが多いんです。特にフロントタイヤはトレッドの端が減る傾向が高いですね。

 フロントもリアのようにほぼ均等に減っていけばいいのに、と考えるのは当然です。しかし道路にカーブが存在する以上、ハンドルを切って曲がらなければなりません。

 そしてカーブを安全に快適に走行できるようにフロントタイヤ(アクスル)にはあらゆる角度がつけられております。

 その代表的な角度がトーイン、キャンバー、キャスターなんですね。これがいわゆるアライメントです。

 アライメントって、意外に大事なんですよ。そこでトラック・バス用タイヤ専門のプロのタイヤマン・ハマダユキオさんにホイールアライメントについて、わかりやすく解説してもらいました。

文・写真/ハマダユキオ


ホイールアライメントってなに?

 アライメントって聞いて「ワッ! ワケ分からん! ムズい!」って思われる方も多いと思いますが、大丈夫です。むずかしくはありません。

 アライメントは日本語で言うならば「整列」「一直線」とかいう意味です。

 自動車の足回り、特にフロントの足回りにはさまざまな意味で角度が付けられております。そのいろいろな角度が付けられるからこそクルマはまっすぐ走り、ハンドル操作も軽くスムーズに行なえます。

 ただ、見た目ではほとんどわからないくらいの角度なので、タイヤが変な減り方をしたりハンドル操作が不安定になってからアライメントが狂ってるかも? となることが多いです。

 車両メーカーによって細かい基準値があり、若干違いがありますが、トーインは約1ミリ前後、キャンバーは0度30分~1度程度、キャスターは2度~3度程度です。鋭い方はこのくらいの角度でも見てわかるよ~っていう人がいるかもですが、左右差とかメーカー基準値より外れてるなんてのがわかる人はなかなかの神です。

 アライメントの数値の単位はミリ、度ですが、日常において1ミリや1度(円が360°なので1/360です)などほぼ気にならない、気にしていない大きさですが、クルマの足回りにはこのわずかな数値により快適に安全に、逆に狂えば不安定な走行フィーリングになります。

トーインとキャンバーについて

 まずトーインについて……。トーとはつま先、インは内側という意味ですね。

 では、なにがつま先で、なにが内側なのか? つま先はタイヤを上から見た場合の前側、つまり人間の足ならばつま先ということです。インはそのままタイヤを上から見て前側がわずかに内側へ向いてるということ。

 そしてこのトーインを設定する意味としてキャンバー角を付ける意味も説明が必要となります。

キャンバーとは、車両を前または後ろから見てタイヤの角度が「ハ」の字、または「逆ハ」の字になっていること。トラックの場合は逆ハの字が一般的です。

 逆ハの字にする意味は、主にステアリング操作においてハブベアリングの負荷を軽減することにあります。

 ハブベアリングの軽減に関しては割愛しますが、車重を支えてるタイヤをロッド、リンク、ギアによって操作をしますが、走行中ならまだしも、停車状態での据え切りは、操作機構(人間も含めて)にそこそこ負荷が掛かります。

 その際、ハンドルを切った場合のタイヤの軌跡はステアリング機構の回転部分を軸として弧を描きます。その時に接地面全体が路面と接しているより接地面が少ない方が軽い力で弧を描けますよね、摩擦力が少ないので……。

 そのいっぽうでタイヤはキャンバーの角度が付いている方向へ進もうとします。逆ハの字では車体より外側、つまり車両からタイヤだけ離れようとします。

 その外側へ逃げようとするタイヤを引っ張ると同時に、走行による抵抗によってタイヤが前開きになるのを抑制するために、トーをイン側へ付けて安定させているのですね。

斜め具合がキモのキャスター

 これ、効力の説明はむずかしいんですが、まず着いている角度がキモになります。

 四輪だと見た目にはわかりにくいと思いますが、バイクやチャリのフロントのタイヤの取り付けてる棒(フロントフォーク)が斜めなのをご存知でしょう? アレなんです。あの斜め具合がキャスター角と思ってもらってOKです。 

 目的は直進安定性とハンドルの直進状態への復元性、路面からの衝撃の緩和になります。

 まず直進安定性の説明ですが、鉛筆等の先端を一本の指で押さえます。垂直なら動かないんですが、斜めにすればスーッと動きますよね、そんなイメージです(説明が雑?)

 ハンドルの復元性は、タイヤの回転軸が垂直ではなく斜めなので、タイヤはハンドルを切った分地面に潜るイメージ、あるいは車体を持ち上げる方向へ力が掛かります。

 でも実際は、車体を持ち上げるよりもハンドルを直進状態に戻す方に力が逃げますので、操舵してハンドルから手を離すとハンドルが元に戻るというワケです。

車検で足回りに異常がなくても……

 車検の際、足回りの状態を総合的に見ていますが、サイドスリップ検査では、サイドスリップテスターが検査ラインに設置され、クルマを走行させながら測定します。

 これは1メートル走行したときのタイヤのスリップ量を見ているのですが、スリップ量がゼロであったのならタイヤはスムーズに回転しており、タイヤの偏摩耗やハンドリングも正常と判断されます。ちなみに5ミリ以上は車検にパスできません。

 いっぽう、アライメント検査では、トーインのトーの値をクルマの静止状態で測定します。キャンバー、キャスターに関係なく個別でトーだけを測定するわけです。

 車検では異常はないもののタイヤが偏摩耗するという事例があった場合、この測定方法の違いが影響している可能性もあると思います。

 トラック関係の足回りに関して各メーカーでのアライメントデータはありますが、多少の違いはあるもののほとんど大差はありません。

 アライメントが正しい状態でもタイヤは偏摩耗する要素はありますので、日常点検により適時なローテーションをお願いいたします。

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