Twitterは、デラウェア州衡平法裁判所で、イーロン・マスク氏を相手に訴訟を起こした。マスク氏とTwitterの間の買収契約における「義務を果たす」よう求めている。
マスク氏はもともと、Twitter株式全体の約9%を取得して筆頭株主になり、取締役会にも参加するとしていたが、突如取締役会への参加を断り、Twitterそのものを440億ドルという巨額で買収する方針を打ち出した。
これに対してTwitterは、当初こそ対抗する構えを見せたものの、ほどなくして方針を転換し、「株主の利益のため」もあり、提示された440億ドルでの買収契約を受け入れることを決めた。
契約締結後、マスク氏は買収完了後にTwitterの臨時CEOに就任する意向を示したり、サービスから追放されたトランプ前大統領のアカウントを復旧するなどといった物議を醸すツイートを乱発してノリノリだったが、Twitterが公表した「スパム(自動的にツイートを繰り返す)ボットアカウントの割合が5%未満」という報告に対して「少なすぎる」と不信感を示し、その考えはTwitter側がサービスのあらゆるコンテンツにアクセスできるツール「firehose」を提供しても覆らなかった。
そして先週、マスク氏はTwitterの買収から手を引くと米証券取引委員会(SEC)に申告した。一方Twitterは、それを受けてマスク氏には買収契約を完了する契約上の義務があるとして、買収を取りやめないなら裁判に打って出るとの意向を示し、デラウエア州衡平法裁判所に訴え出た。
Twitterは「マスク氏のさらなる違反行為の差し止め、法的義務の履行、およびいくつかの未解決の条件を満たした上での買収完了を強制するため、この訴訟を起こした」と述べている。Twitterのブレット・テイラー取締役会会長は、訴訟は「マスク氏に責任を取らせる」ためのものだとツイートした。
Twitterは、マスク氏がわざわざ1株あたり54.2ドルという高額で条件を提示し、実際に買収契約を結んだものの、その後の特にテクノロジー分野の株価下落により、マスク氏が契約に違反もしくは「重大な悪影響」を及ぼすような、取り引きからの離脱を模索し始めたと述べ、そのため「Twitterがスパムボットアカウントの数を偽っている」との主張をし出したとコメントしている。
なお、マスク氏はスパムボットの数を買収取りやめの理由に挙げているが、Twitterによれば、買収契約が成立するまではそのことについて一度も尋ねることはなかったという。そればかりか「取締役会に対して、事前調査の条件を明示的に撤回することで、オファーを甘く」さえしていたとのこと。
Twitterがマスク氏を訴えたことで、今度はマスク氏が反訴する可能性もあるかもしれない。また、両者間で裁判がどのように展開するかを予測するのも難しい。
裁判になれば、Twitterがマスク氏に十分な情報を開示したかどうかが焦点のひとつになりそうだが、New York Timesが指摘するように、デラウェア州衡平法裁判所は買収取引を破棄しようとした側に厳しく対応する傾向があり、Twitterは当時裁判に関わっていた人物を含む、強力な弁護体制を確保したことを明らかにしている。