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 日本を象徴するクルマといえばクラウン。現行型の15代目クラウンは歴代で初めてニュルブルクリンクでその走りを鍛えてデビューしたのだが、その思い入れはみごとにはずれ、今回のフルモデルチェンジでは思い切ったコンセプトチェンジが実施されることになる。

 そのなかで注目されるのはクラウンがFF化され、SUV風味のファストバックスタイルを採用すること。そこで、クルマのスタイリングには並々ならぬ思い入れを持つ清水草一氏が持論をぶっちゃけた!!

文/清水草一、写真/トヨタ、ステランティス

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■プジョー408もファストバックスタイルを採用

6月22日に世界初公開された新型プジョー408もSUV風味のファストバックスタイルを採用して登場したのだった!

 明日7月15日、いよいよ新型クラウンが登場する。それは、SUV風の意匠を持つファストバックスタイルになるが、その日を目前に控えた6月22日、プジョーがワールドプレミアした新型408もまた、SUV風味のファストバックスタイルを採用していた!

 プジョー408のターゲットは、従来のセダンではもはや飽き足らないが、SUVには軽い拒絶反応を持つ層だろう。

 プジョー408の開発陣によれば、デザインの狙いは「ドライビング・ポジションは高く、それでもSUVより低く、アスリートであるという印象をもたせること」だという。

 やはり、猛獣は低い姿勢で襲いかからねばならない。そのほうが周囲への威圧感もある。実際、高速道路を走っていると、車高が低いクルマのほうが、車線を譲ってもらえる傾向がある。オラオラ顔のミニバンやSUVよりも、下から遅いかかる猛獣のほうが、人間の防衛本能にダイレクトに訴えかけるのだ。

■全高低めのSUVを狙っているのだが……

新型プジョー408も全高は低めのSUVモデルに該当する

 もはやセダンはスポーツカーに次ぐ少数派であり、その全高の低さはスポーツカーと同類視される。全高の高いクルマ全盛の今、逆にその全高の低さが、一種のエリート感を生んでいる面もある。

 しかし、セダン市場はドイツ御三家以外は総崩れ状態だ。セダンが売れるのはドイツ車だけというのは、世界共通の現象。ドイツ車以外のメーカーは、何か打開策を打たねば、セダン系モデルは死を待つのみ。その答えのひとつが、SUV風味のファストバックスタイルなのだ。

 私が次に狙っているのは、実は全高低めのSUVだったりする。理由は、「セダンよりも視点が高いぶん見晴らしがよく、ヒップポイントが微妙に高いので乗降性も非常にラクで、それでいてセダンに近い操縦性や威圧感が期待できるから」。プジョー408も新型クラウンも、典型的な中高年である自分の志向と合致している。

 ファストバックスタイルも、個人的には非常に好みだ。私が現在セダンに乗っているのは、セダンが好きだからではなく、セダンの中古車が安かったからに過ぎない(スイマセン)。

 本音では、よりスポーティなファストバックスタイルが好みだし、ハッチバックのほうが、セダンのトランクよりも、大きな荷物を積むには便利だと考えている。

 中高年が頻繁に積む大きな荷物の代表がゴルフバッグだが、長尺ドライバーが当たり前の今、ゴルフバッグは、セダンのトランクに横に積むより、後席を前に倒したハッチバック車に縦に積んだほうがラクなのだ。

「クルマはセダン以外認めない!」という層は、70代の後半より上。さすがに免許返納が近い。それより若い層は、中高年でもセダンへのこだわりは薄い。後席専用のVIPなら別だが、まだ自分で運転するかぎり、セダンよりも、ファストバックスタイルのハッチバックのほうがステキに感じるのではないだろうか?

■アクティブでスポーティ、なおかつ構えの低さがナイス!

新型クラウンの特許庁意匠登録に(もちろんトヨタ自動車から)届け出がなされたCG

 つまり、プジョー408や新型クラウンのようなSUV風味のファストバックは、個人的にストライク。特にプジョー408のデザインは、アクティブかつスポーティで、それでいて適度な構えの低さもあって、大いにそそられる。全高低めのSUVよりも、こちらのほうがさらに飲み込みやすいし、デザイン的なバランスもすぐれている。

 一方、新型クラウンは、トヨタが特許庁に届け出た意匠を見ると、プジョー408に比べるとややウエストラインが高い「でぶっちょ」な「おっさん」で、アクティブ&スポーティ感は低めだ。ウエストラインがリアフェンダー付近で跳ね上がっているのは、力強さや重厚感の演出のためだと思われるが、これがまた「でぶっちょ」で「おっさん」なイメージを強めている。

 伝統あるクラウンを、いきなりプジョー408のようにスリークに変身させるわけにもいかなかったのだろうが、もう少しウエストラインが低ければ、断然若々しくなったはず。そこは惜しいと感じるが、クラウンをこういう方向性に持っていったトヨタの挑戦は評価したい。

■ビミョーな中途半端感あり

画像上は現行型(15代目)クラウン。画像下は特許庁に意匠登録された新型クラウンセダンプラス(と言われているCG)

 現行クラウンは、ドイツ御三家のセダンのセンを狙ってスポーティ路線に振ったが、伝統的なクラウンのよさも、ドイツ車的なスポーティな重厚感も、どっちも中途半端になってしまった。

 それでも国内で月に2000台程度売れていたのだから、さすがクラウンだが、このままではジリ貧なのは明白。ならばと失敗を恐れず、別の道へ踏み出したのは、日本最古の伝統を持つモデルだけに大英断だ。

 ただ、この新型クラウンが、どれくらいウケるのかは現時点でまったくの未知数。

 個人的には、どこかクラウンという「古典」を引きずったデザインに見える。もちろん、それも狙ってのことだろうが、思い切ったわりに微妙な中途半端感がある。早く実物に接して確かめたいものだ。

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