教習所で安全運転にかかわる様々なことを教わるが、その中に「キープレフト」というのがある。これには二つの意味があることはご存じだろうか?
一つはバイパスや高速道路など2車線以上の道路で使うもの。もう一つは片側1車線の対面交通の道路で用いるもので、安全上必要とされるものだ。
ところが最近は後者の方にはリスクがあり、必ずしも正しいとは言えないようだ。今回はその理由について考察する。
文/藤田竜太、写真/AdobeStock(トップ画像=thongchainak@AdobeStock)
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■「2つのキープレフト」を再確認する
教習所では耳にタコができるほど何度も言われた「キープレフト」。このキープレフトには下記の二つの意味があります。
・片側二車線以上ある道路(車両通行帯の設けられた道路)では、左側の車両通行帯を通行しなければならないというルール(道路交通法第20条 車両通行帯)。
・センターラインのある片側一車線の道路や、センターラインのない道路、境界線のない一方通行道路では、道路の左側端に寄って通行するというルール(道路交通法第18条 左側寄り通行等)。
前者のキープレフトは、高速道路や郊外のバイパスなどで守ってもらいたいルールで、一番右側の車線は追い越し車線として空けておくことが、渋滞の発生を防ぐ意味でも重要。
だが、後者のキープレフトの必要性は、教習所卒業後、感じている人は少ないのではないだろうか。というのも同一車線内のキープレフトは、安全上のメリットよりもむしろデメリットの方が多いからだ。
1)出会い頭の事故が増えるリスクがある
片側一車線の道やセンターラインのない道、一方通行の路地などは、道幅が狭く、左側の側道から出てくる車両や歩行者の発見が遅れがち。そうした道で、左側に寄って走っていると、クルマや人が左側から飛び出してきたとき、接触する可能性が高まる。
見通しの悪い角での死角を減らすためにも、狭い道でのキープレフトはおすすめできない。
2)左折のラインが苦しくなる
左寄りで走っていて左折する場合、エントリーがタイトになるので、出口側で膨らみやすくなる。それを嫌って逆振りあるいはあおりハンドルを行なうと、左折のウインカーを出しているのに、クルマが右に振るため、後続車や対向車をヒヤッとさせることに……。
アウト・イン・アウトとはいわないが、自車線の真ん中からゆっくりハンドルを切りだした方がはるかに安全。
教習所では左折時に、自転車やバイクなどを巻き込まないために(道交法18条に則って)キープレフトを重視しているが、逆振りをやられると自転車だって譲られたと勘違いするかもしれないし、そもそも自転車もすり抜けられないほど左に寄る人は稀なはずだ。
3)異物を踏みやすい
道路は排水性を考えて両端がなだらかに下がる構造になっている。そのため道路上に落ちたゴミや石、埃などは、道路の両脇にたまりやすい。踏めばパンクの原因になる、釘やガラス片なども道路の端に集まっているので、キープレフトに徹するとそうした異物を踏むリスクも増える。
4)視界が狭まる
前走車が車線の中央付近を走っていて、自車がキープレフトしていたら、前方の視野はかなり狭まってしまう。また対向車からも、自車の存在は影になって見落とされやすい。とくに前走車が大型車で、対向車が右折待ちをしているようなシチュエーションでは、ヒヤッとする場面が多くなってリスキーだ。
5)水はね、泥はねで歩行者に迷惑をかける
歩行者に水や泥をかけてしまった場合、「泥はね運転違反」で反則金6000円の罰則をとられることもある。JAFのテストでは、水深1cmの水たまりを時速40キロで通過すると、側方に約2mも水しぶきが飛んだとのこと。
前記のように道路の両脇には水がたまりやすく、水深も深めになるので、雨の日のキープレフトは水はねの原因になりやすい。
6)追突事故やオカマを掘られたとき、ドライバーが怪我をしやすい
前走車が車線中央を走っていて、自車がキープレフトという状況で追突事故を起こすと、運転席側だけ前走車に直撃する可能性がある。同じ衝突エネルギーでも、フルラップクラッシュよりオフセットクラッシュの方が乗員の被害が大きくなる可能性は高い……。
* * *
というわけで、自転車などの巻き込み防止や、対向車との接触を防ぎ、追越しや右折等がスムースに行われるためという道交法18条の趣旨はわかるが、路上の現実に対しては無力というか、かえってデメリットが目についてしまう。
結論からすると、キープレフトではなく、車線内の真ん中付近を走るのが、合理的だといえるだろう。
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