アップルは先月のWWDC 2022(世界開発者会議)にて、次期iOS 16ではU1チップを統合したサードパーティ製アクセサリーが、iPhoneアプリがバックグラウンド動作であっても通信可能になり、新たな「ハンズフリーユーザー体験」を実現すると発表していた。
これを受けて半導体メーカーのQorvoが、この新機能を使って、U1対応アクセサリーがiOS 16アプリと連動し、ユーザーが部屋に入ると照明をつけたり音楽を再生したり、アプリがアクティブでないときも正確な位置情報に基づいてリアルタイムに反応できるようになると発表した。
ここでいうU1とは、アップル独自開発のUWB(超広帯域)チップのことだ。iPhone 11シリーズ以降に搭載されているほか、HomePod miniやApple Watch Series 6以降、さらに忘れ物トラッカーであるAirTagにも内蔵されている。
またQorvoは、同社のUWBチップがアップルのMFi(Made for iPhone)プログラムの認定を受けたことも発表している。つまりサードパーティのアクセサリー企業が、Qorvo製チップを使ってU1対応のアクセサリーを作り、MFi認証を受ける道が開かれたものと思われる。
2019年のiPhone 11シリーズとともに登場したU1チップは、GPSの信号が届かない室内でも使用でき、誤差10~20cm程度と高精度な位置検出を可能にする。
当初こそU1チップは「AirDropを送る相手を探す精度が上がる」以外の使い道がなかったが、その後iOSのアップデートやU1搭載アクセサリーが投入されたことで、実用性は大きく向上した。実用性が上がったことには、通信相手のデバイスもU1チップを搭載しないと意味がなく、対応気機が増えたことも寄与している。
たとえばiPhone 11以降をHomePod miniに近づけると、オーディオ再生を引き継がせる「ハンドオフ」をビジュアルやサウンドなどの効果付きで行える。またU1搭載のiPhoneでは、AirTagの正確な位置のほか、距離や方向も読み上げられる「正確な場所を見つける」機能も利用できる。
アップルはしばらくU1チップや、深く関わる「探す」アプリの使用を自社製品に限っていたが、徐々にサードパーティにも開放しつつある。
かつて忘れ物トラッカーのTile社は、同社がUWBシステムの使用を許可しないことを指摘していたが、MFi認証を受けたサードパーティ製品が増えれば増えるほどアップルの利益も伸びていくはず。今後は、この動きが加速していくのかもしれない。