新旧問わず「ハチロク」の人気は高いままである。現行モデルもスポーツカーの基本、伝統に従ったレイアウト、スタイリングが魅力だ。
それを遡っていくと、1970年代の魅力的な2台に行き当たる。佳き時代のホモロゲイション・モデルというべき企画も新鮮であった。いうまでもない、「27レビン/トレノ」である。
当時の最量産モデルであるトヨタ・カローラをベースに誕生したこと、それによってイメージリーダー的な役割をも果たしたことなどを考えると、なかなかのヒット企画というものであった。
文、写真/いのうえ・こーいち
【画像ギャラリー】乗用車普及に貢献すると同時にモータースポーツでも注目された27レビン/トレノ(6枚)画像ギャラリー
■二代目のカローラ
カローラはちょうどわが国の乗用車普及の時代に、日産のサニーとともにそのメインとして用意された小型車。1966年10月に、サニーよりひと回り大きな1.1L、Kシリーズ・エンジンを搭載した2ドア・サルーンとしてデビュウした。最初から量産を意識した設計で、ヴァリエイション拡大も折込み済みであった。
4ドア、ヴァンなどにつづいて、1968年にはクーペ・モデルが加えられたが、それに俊足をイメージするカローラ・スプリンターの名称が与えられた。スプリンターの最初はカローラのいち派生モデルの名前だったわけだ。
発売3年半にして100万台販売という記録を達成するほどの好調の売行きとともに、1970年5月にフルチェンジが行なわれ、従来のKE10系カローラはKE20系になった。販売店を増やすという目的もあって、ここで、スプリンターを独立したモデルとするのである。
2ドア、4ドア、クーペ、3ドア/5ドアのヴァンとエステートのカローラに、スプリンター・クーペというラインアップになった。エンジンは1.2Lに拡大、さらに半年遅れて1.4LのT系エンジンも加わり、1971年8月にはスプリンター4ドアが追加される。
ここに至ってカローラ色が一掃されてカローラとスプリンターは別モデル、という位置づけになったのだった。
■T系エンジンの進化
二代目カローラはエンジン系統を加えてKE20系/TE20系と呼ばれるようになった。
先の1.4L用として登場したT系エンジンは、のちのセリカ、カリーナのベイシック・エンジンとして開発されたもので、水冷直列4気筒OHVながら、5メイン・ベアリングを採用するなど、のちのちのチューニングアップも配慮したものとなっていた。
本命のセリカが1970年10月に発売されたとき、その「目玉商品」として用意されたセリカGTは、注目の2T-Gエンジンを搭載していた。そう、名エンジンとして人気の高いツウィンカム・エンジンだ。
1407ccのT型エンジンをベースに、5mmのボアアップをしてφ85.0×70.0mm、1588ccの排気量とし、アルミのDOHCヘッドを新調して水冷直列4気筒DOHCとしたもので、115PSのパワーを発揮していた。同時にOHVのままの2T型、100PSも用意され、充実のラインアップだった。
そのセリカGT用のエンジンをカローラ・クーペのボディに移植することで、TE27型カローラ・レビンは誕生したのだった。
■「レビン」「トレノ」の魅力
セリカに遅れること1年半、1972年3月にカローラ「レビン」は登場した。同時に、姉妹モデルであるスプリンターにも「トレノ」の名前で追加される。レビン(Levin)は英語で稲妻、トレノ(Trueno)はスペイン語で雷鳴を意味することばだ。
セリカGTも人気だったが、そのセリカよりもひと回り小型で軽量なボディに115PSのエンジンは大きな魅力だった。特にセリカのスタイリングや車格を必要としない、モータースポーツを目指す人びとには注目の的になった。
ホモロゲイション・モデルなどといわれるのもそれ故である。当時、若者はスタイリングからセリカGTを選ぶけれど、その素性を見抜いたヴェテランや「通」はレビン/トレノ、といわれたものだ。
登場したカローラ・レビン、スプリンター・トレノは基本的にはそれぞれの2ドア・クーペそのものであったが、幅広のタイヤ装着を見越して、前後にオーヴァフェンダを追加。じっさいにタイヤは当時としては幅広の70タイヤが5Jホイールに組合わされていた。
室内もぬかりなく、電流、油圧、油温計を追加して6連のメーターとしたほか、コンソールボックスも設けられたり、フートレストが追加されるなど、「通」好みを強調した。
レビンとトレノはわずかにフロントグリル、サイドのエア・スクープ、テールランプ部分が異なるだけで、文字通りの双児車であった。またレギュラー・ガソリン仕様、110PSエンジン搭載車も用意されたのは時代を物語っている。
マイナーチェンジが施された1973年4月、レビンJ/トレノJなるモデルが追加される。
人気のレビン/トレノにあやかって、その廉価版が登場したのだ。「J」はジュニアの頭文字で、なんのことはない、2T-Gエンジンに換えて、OHV1.6Lの2T-B型、105PS(レギュラー・ガソリン仕様:100PS)エンジンを搭載したもので、ボディ内外の仕様はレビン/トレノを引継いだ。
面白いもので、近年クルマ好きの間では、程度のいいレビンJ/トレノJを見付けて、2T-Gエンジンに換装する妙案がある、という。いうまでもなく、レビンJ/トレノJの方が乱暴に扱われることなく残っている例が多いからだ、と。なるほど、というものかもしれない。
【著者について】
いのうえ・こーいち
岡山県生まれ、東京育ち。幼少の頃よりのりものに大きな興味を持ち、鉄道は趣味として楽しみつつ、クルマ雑誌、書籍の制作を中心に執筆活動、撮影活動をつづける。近年は鉄道関係の著作も多く、月刊「鉄道模型趣味」誌ほかに連載中。季刊「自動車趣味人」主宰。日本写真家協会会員(JPS)
【画像ギャラリー】乗用車普及に貢献すると同時にモータースポーツでも注目された27レビン/トレノ(6枚)画像ギャラリー
投稿 ハチロク伝説はここから始まる!! 超伝説級のFRスポーツ TE27が凄すぎた は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。