2022年7月15日に千葉県幕張メッセで行われた新型クラウンワールドプレミア。4種類の16代目クラウンが公開された。
そして、ワールドプレミア開催と同時に、北米トヨタのプレスサイトには「クラウン・リターンズ・トゥ・the US」というタイトルが流れた。クラウンが50年ぶりにアメリカ市場に戻るのだ。
日米での16代目クラウンの立ち位置について考察する。
文/桃田健史、写真/TOYOTA、撮影/三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY
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■クラウンのグローバル化がいよいよ再開! 北米では50年ぶりの復活へ! やはり、噂は本当だった
2022年7月15日、千葉県幕張メッセでの新型「クラウン」ワールドプレミアに合わせて、北米トヨタのプレスサイトには「クラウン・リターンズ・トゥ・the US」というタイトルが流れた。
それによると、アメリカでクラウンが発売されたのは1958年から1972年。クラウンは50年ぶりにアメリカに戻ってくる。
また、北米トヨタのユーザー向けサイトでは、2022年モデルのアバロンが掲載されているが、クルマとしてのスペックから考えて、アメリカではクラウンがアバロンに対するリプレイスメント(入れ替え)になることが確実な情勢だ。
■北米トヨタの象徴はアバロンからクラウンへ
北米トヨタとして、そのようなアナウンスメントはないが、アメリカの主要な自動車メディアは、そう伝えている。
こうしたアメリカでのトヨタの新しいモデルラインナップ戦略を見ることで、トヨタが新型クラウンに対してどのようなグローバル戦略を打ってくるのかが想像できる。
それは、どういうことか?
ワールドプレミアで、豊田章男社長が改めて紹介したように、クラウンといえば「いつかはクラウン」。そんなキャッチコピーに見られるように、クラウンは高度成長期からバブル期、そして2000年代に入ってからも、日本を代表する高級車であった。
それが今回、クロスオーバー、セダン、スポーツ、そしてエステートの4車系となり、世界約40カ国で年間販売台数20万台規模で展開予定のグローバルカーとして生まれ変わったのだ。
■「せざるを得なかった」クラウンの大転換
これまでクラウンは、一時期に中国などで販売したことはあったものの「ほぼ日本専用車」だったので、今回の経営判断は極めて大胆である。
その経緯については、今回の記者会見のなかでのミッドサイズ・ヴィークルカンパニーの中嶋裕樹プレジデントと豊田社長のやり取りに詳しいが、結果的にクラウン史上最大ともいえる大きな変化が生まれた。
見方を変えると、クラウンはこうした大転換を「せざるを得なかった時期」だったとも言えるだろう。
その要因は、大きくふたつあると筆者は見る。
ひとつは、国内市場でのユーザーの高齢化問題。ふたつ目は、海外市場でのDセグメントセダンの製品としての整理整頓に関する課題である。
では、順に見ていこう。
■平均年齢は65歳からの脱皮
先代の15代目をプロトタイプとして2018年に静岡県内で試乗した際、トヨタ関係者から聞いた、当時のクラウンユーザーの年齢はなんと65歳である。また、同じ時期に首都圏内でのトヨタ大手販売店によるデータでは、当時68歳という数字も出てきた。
単純計算すれば、それから4年経った2022年では、クラウンユーザーの全国平均年齢は、ほぼ70歳に到達してしまう。
だが、2018年当時で15代目クラウンの使命は30代~50代のユーザー獲得であり、そのために直4ターボを採用のスポーティなグレードを設定したり、クラウンとしてはエクステリアとインテリアのデザインをかなり若返らせたりした印象があった。
現時点で、そうした15代目によるクラウンユーザー若返り作戦に関するトヨタ側からの正式データを、こちらでは持ち合わせていない。
だが、16代目クラウンの製品企画が、中嶋プレジデントが初期提案したマイナーチェンジではなく、最終的にTNGA-Kプラットフォーム(北米トヨタのWebサイトでの表記に基づく)を採用してFF化するという超フルモデルチェンジを選択したのは、国内でのクラウンユーザー若返りは並大抵のことでは実現できない、というトヨタとしてのクラウンに対する理解なのだと思う。
■単純なカムリ改良の限界
次に海外に目を向けると、北米では2010年代以降に従来の市場中核だったC/Dセグメントセダンから急速なSUVシフトが進んでいる。
そもそも北米でのSUVシフトは、1990年代後半にジープ「チェロキー」、GMシボレー「タホ」、フォード「エクスプローラー」などによって起こり、2000年代に入ってもBMW「X5」、ポルシェ「カイエン」などが登場した。
これらに対してトヨタを含めた日系メーカー各社が乗用車ベースのSUVや、いわゆるクロスオーバーを多発するようになる。
それでもなお、トヨタでいえば、「カローラ」と「カムリ」という、CセグメントとDセグメントのセダンが稼ぎ頭だったのだが、2010年に入ってからは「RAV4」へのシフトが強まっていく。
SUVでみればトヨタは、「ハイランダー」と「フォーランナー」もあるが、上級クロスオーバーについては、プラスアルファがあってもいいのではという印象があった。それが、カムリ改良というイメージが強いアバロンではなく、クラウンなのだと思う。
こうした日米での新たなるクラウンの立ち位置と、北米市場の影響と自国文化が融合するという特殊市場である中国と、さらに「フォーチュナー」などIMV(イノベーティブ/インターナショナル・マルチパーバス・ヴィークル)対応の中東、南米、東南アジアでも、クラウンの活躍の可能性があると、トヨタは判断したのだと思う。
果たして、世界市場は新型クラウンをどう評価するのか、今後の動向を注視していきたい。
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