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28℃設定の家のエアコンと違うの? 燃費を取るか 車内冷え冷えを取るか? クルマのエアコン最適温度と燃費との関係

 ガソリン価格が相変わらず高値傾向のなか、各地で真夏日が続いています。車内は日差しが燦燦と照り付ける温室状態のため、仕方なくエアコンを18℃に設定して涼しく過ごしている人も多いと思います。

 もちろんエアコンをガンガンにかければ燃費は悪いに決まっています。そこで、少しでも燃費を落とさずに走行するためには、エアコンのベストな設定は? 25℃で一定? それともエアコンをこまめに消す? 悩ましい酷暑日のエアコンの設定に解説していきたい。

文/高根英幸
写真/AdobeStock(トップ画像=vladdeep@AdobeStock)

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■エアコンを効かせつつ燃費を抑えたい

燃費のために冷房を我慢して、十分に身体や頭を冷やせない状態で運転するのは非常に危険。ガソリン代をケチッて意識が朦朧とし、交通事故を起こしてしまっては元も子もない(DimaBerlin@AdobeStock)

 梅雨が明けたはずなのに、雨の日が続き、雨がやんだと思ったら猛暑日……。いかにスーパーコンピュータを使って予測しても、実際の天候はそんな予測などあっけなく覆してしまうほど、複雑で大胆に変貌する。

 気候変動によりゲリラ豪雨が多く発生するようになったことも影響しているのだろう。それでも短時間でも晴れ間が出れば、クルマの室内は一気に気温が上昇する。

 なお今年は家庭の電力消費節約のためにエアコンの温度を28℃にすることを推奨しているが、これはリモコンの温度設定を28℃にするのではなく、実際の室温が28℃になるようにリモコンの温度設定を調整するという意味だ。

 というのも部屋の環境(エアコンの位置、窓の向きや大きさ、壁などの断熱性能……)によって、リモコンの設定温度と実際の室温には差があるため、室温が28℃になるようにリモコンの設定温度を調整するのである。

 一般家庭でもエアコンの調整は天候によって変わる。ましてやクルマは窓が多く、ルーフやドアパネルの断熱もそれほど高くはないし、エンジンルームからはもちろんのこと、真夏はフロアからもアスファルトの輻射熱が伝わってくる。

 四方八方から熱せられているから、エンジンを止めて冷房を切ると、みるみる気温は上昇していってしまうのだ。

 そんな状態だから、冷房を適切に使わないで走るのは非常に危険だ。燃費のために冷房を我慢したり、弱めに冷房を使って十分に身体や頭を冷やせない状態で運転するのは、熱中症になる可能性を高めてしまう。

 熱中症になってしまうと、そのダメージは想像以上に深く深刻なモノになる可能性もある。ガソリン代をケチッたあげく、意識が朦朧として交通事故を起こしてしまったりしたら、元も子もない。

 命に関わる問題だけに、冷房をしっかりと使って、快適な状態で運転や移動をするのは、クルマを操る者の責任でもあるのだ。

 しかしガソリン価格がここまで上昇してしまっては、ちょっとでも燃料を節約したいのも正直なところ。そこで冷房を利用しつつ、燃費を向上させる策を考えてみよう。

■冷房の仕組み、温度調整の仕組みを知ることも大事

クルマ用のオートエアコンは温度設定だけを守って冷暖房しているわけではなく、さまざまな条件を加味し、乗員が設定した温度から調整してくれる優秀なヤツなのだ(Monika Wisniewska@AdobeStock)

 冷房は、コンプレッサーが冷媒のクーラーガスを圧縮・冷却して、液化されたクーラーガスを熱交換器のエバポレーター内に噴射して気化熱で冷気を作るのだが、コンプレッサーがエンジンの駆動力を使って圧縮しているから、その分燃費が悪くなる。

 それでもコンプレッサーは冷房中、常に働いているわけではない。コンプレッサーを駆動するプーリーには電磁クラッチが組み込まれていて、一定の圧力になればクラッチが切れて、駆動損失を減らしてくれる。

 さらに液化した冷媒を噴射するエキスパンションバルブもエバポレーターの温度により噴射量を調整してくれるので、無駄にコンプレッサーが稼働してクーラーガスを圧縮し続けるようなことはないようになっている。

 だから自分でACのスイッチをオンオフすることは燃費向上にはあまり効果がない。オンにした途端に規定の圧力までコンプレッサーが回り続けるだけで、同じ室温にするならむしろオフにしてしまった分、冷房を長く使うようになってしまう。

 そしてクルマ用のオートエアコンは、温度設定だけを忠実に守って冷暖房してくれるわけではない。室内の気温と外の気温、さらには日照の程度により、体感温度は変わってくる。これらの条件を加味して、乗員が設定した温度から調整する空調を実現しているのだ。

 さらに自分にとって快適な温度も、人によって違う。左右のダクトで温度設定を独立させているクルマが増えているのは、暑がりや寒がりが同乗した場合など、好みの室温が違っていても車内を快適に過ごせるようにダクトから吹き出す空気の温度を調整して、乗員に直接冷風や温風を届けられるようにしているのだ。

 その上で、冷房を効果的に使い、できる限り燃費を落としたくない場合はどうすればいいか。オートエアコンの快適さを享受したいなら、25℃前後の室温設定で風量は自動、これに限る。

 風量を調整してくれることでエバポレーターが利用する冷媒の量も調整されるから、コンプレッサーによる駆動損失もそれなりに抑えられることにはなる。

 しかし、クルマの冷房の温度調整はエキスパンションバルブで行なっているのではなく(これは冷え過ぎによりエバポレーターが凍り付いてしまうのを防ぐのが目的)、室温調整のために冷風の温度を調整するのは暖房であるヒーターを併用している。

 25℃より28℃の方が冷房が弱いので燃費が良くなりそうなイメージはあるが、設定温度に近付くと送り出す風の温度を調整するようになるので、よほど陽射しが強い状態でなければ暖房も少しだけ使っているのだ。

 住宅用のエアコンのように設定温度に到達したら停止するようなら節電効果は高いが、クルマの場合は送風を止めてしまうとすぐに温度が上下してしまうので、適温に調整しながら風を出し続けることで快適さを実現しているのである。

 なので、冷風を温めて調整せずに利用した方が、冷房によるロスは減らせることになる。つまり冷房を使う際には温度設定は最低にして、室温の調整は風量を調整することにより行なう方が、燃費は向上することになるのだ。

 しかしこれを実践するには、信号待ちなどで体感温度によって風量を調整する必要がある。最低温度で最大風量のまま走っていれば、燃費はむしろ悪化する可能性もあるのだ。これを煩わしいと思うのであれば、オートエアコンに任せた方がいいだろう。

■クルマの日射&断熱対策をして冷房効果を高める

市販のクルマ用サンシェードも効果的。広げたり畳んだりの手間はかかるが、やらないよりは確実に冷房効率を高める(New Africa@AdobeStock)

 冷房を利用しながら燃費を高めるには、冷房の効果を高める工夫を施すことも効果的だ。まずは日照による温度上昇を防ぐにはウインドウフィルムを利用する方法がある。

 リアドアガラスやリアウインドウはプライバシーガラスで紫外線だけでなく、可視光線もカットされている。

 しかし、フロントドアやフロントウインドウはUVカットや熱線カット機能が盛り込まれている車種(オプション設定の車種もある)もあるものの保安基準上、可視光線は70%以上を透過することが義務付けられており、純正のガラスは80%程度の透過率に設定されている。

 無色透明でUVカットや赤外線をカットするフィルムもあるが、最近はオーロラフィルムというミラータイプのフィルムをフロントウインドウに貼るサービスも登場している。

 これは高層ビルなどの外壁ガラスに用いられる熱反射ガラスと同じように、熱線やUVをカットする機能をもったフィルムで、蒸着された金属コーティングがマジックミラーのように反射させるのだ。室内に入る光を抑えることで、高い透過率を実現しながらプライバシー性も高められる。

 こうした保安基準をクリアしたフィルムを前面3面に貼ることで、陽射しによる温度上昇を抑えて断熱効果(フィルムはガラスより熱伝導率が低い)も期待できるので、冷房の効果が高まり燃費の低下を抑えることが期待できるのだ。

 ただしフィルムは経年劣化が避けられないので、一定の期間が過ぎたら車検に通らなくなって剥がすか貼り直す必要が出てくることも考えておく必要はあるだろう。

 涼しい服装をすることも効果的だ。エアコンがあるからと、1年中同じような服装でいる人もいる。冷暖房によって年中快適に過ごせるのは幸せなことだが、それは真夏ではやはり冷房をより強く利かせる必要が出てくる。

 渋滞を避けたり、発進時にはいきなりアクセルを踏んで加速するのではなくタイヤが一転がりするまではクリープを利用するなど、走り方で燃費を高めたり、冷房の効果を高めることもできる。

 安全のために快適さを維持しながらクルマの負担を減らし、トラブルなく燃費も節約できる。そういう運転を実践しようではないか。

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