もっと詳しく
Image:motorsports Photographer/Shutterstock.com

F1は現在、2030年までにネットゼロカーボンを目指している。その一環として2026年を目標とし、F1マシンの燃料を100%持続可能なものに切り替える開発が行われているが、これが順調であることをアナウンスした。この燃料はF1マシンだけに使えるような特殊なものではなく、世界中で走っているほとんどのガソリン車にも使用できるものになるとのこと。

エンジニア、テクニカルディレクターとしてベネトンやウィリアムズといった強豪チームを渡り歩いた経歴を持つF1チーフテクニカルオフィサーのパット・シモンズ氏は、最近の数か月間、この新しい最高品質の燃料を生み出すべく開発チームを率いて来た。

当初は本人もどこから手を付けたものかわからなかったと言うものの、FIAや複数の燃料に関するスペシャリスト、石油企業のARAMCOの協力を得て、新燃料の研究を重ねてきたという。

F1では、今シーズンからガソリン90%とバイオエタノール10%を混合したE10燃料を使っている。シモンズ氏はこのバイオエタノールも、完全に持続可能な「グリーンな」燃料であると述べ、すでに取り組みの一部が競技にも用いられていることを強調した。

またF1のモータースポーツ担当マネージングディレクター、ロス・ブラウン氏は、3年後に導入を予定する燃料について「炭素循環が完全にニュートラルな、エンジンからのCO2排出が大気中のCO2を増やさないような燃料、”E fuel”を生み出すべく取り組んでいる」と述べた。

具体的にE fuelがどのような成分となるかは詳しく説明されていないが、以前のF1の話では、水の電気分解などで得られる水素と、工場などで排出されるCO2からエタノールのような燃料を合成して生産すると説明されていた。この燃料を使えば、F1マシンやその他のエンジン車がCO2を排出しても、そもそも燃料製造時にCO2を回収しているため、全体でのCO2排出量はゼロとみなせるということだ。そしてこの燃料を市販車にも広く使えるようにすることで、特にEVへの切り替えに長い時間がかかると予想される地域での、CO2排出量も削減できるとF1は主張している。

シモンズ氏は、ARAMCOの協力もあり、2026年までにブラウン氏が言うような燃料を作り出すのに、まだ余裕がある状態と説明している。そして「これまでに39種類の代替燃料成分のブレンドを試してきた」とし、この経験がサステイナブルな燃料に使えるブレンドの効果を理解するのに役立っているとしている。

また、現在はARAMCOとの協力で開発をしているため、サウジアラビアとスペインの工場で燃料を生産する予定だが、F1に関わる多くの石油企業も、新しい燃料を生産する能力は十分にあるとしている。

なおF1は、2025年まではパワーユニット(エンジン、ターボ、エネルギー回生などを組み合わせた駆動ユニット)の開発を凍結している。2026年には新規開発されたパワーユニットが投入される予定だ。新しいネットゼロカーボンな燃料も、この新パワーユニットとともにレースで使われるようになるだろう。

ちなみにF1は燃料だけでなく、マシンや機材を輸送機に積み込む際のコンテナの改善や、F1世界選手権全体で使用されるプラスチック製品の削減、効率的な転戦スケジューリングなども通して、CO2排出の削減に取り組んでいるとのことだ。