Wシリーズの第4ラウンド、フランス大会。30分間のフリー走行を14番手で終えたJuju(野田樹潤)は、手応えをつかんで午後7時25分から始まる予選へ向けて、コーチとともにマシンの調整を行った。
しかし、予選が始まり、アタックするためにコースインすると、マシンは自分が描いていたイメージとは違った感触になっていた。
「コーナーは速かったのですが、ストレートがとにかく遅くて……。なんでだ? という感じでした」
ポール・リカール・サーキットは、セクター1がやや短いストレートを低速コーナーがつないだレイアウトになっていて、セクター2がほぼ直線、そしてセクター3がコーナーが連続するテクニカルセクションとなっている。
「セクター1は真ん中より上くらいのタイムで、セクター3が真ん中ぐらいなのに、ほとんどストレートだけのセクター2だけが話にならないくらい遅かった」と言うJujuの予選は、結局フリー走行と同じ14番手に終わった。
「セクター2さえまともに走ることができていれば、トップ10には行けたと思うので、残念な結果です」と、トップ10を逃したことを悔しがっていた。
ただし、マシンの調子が完璧でない状況で力を出しきれずに終わったこれまでの予選に比べれば、きちんとしたアタックができたことは、一歩前進だったとも言える。
とはいえ、土曜日のレースに向けて、どうセットアップを変えるのかについては頭を悩ませていた。
「思いっきりリヤウイングを寝かせていくしかないのですが、ストレートスピードを上げれば、今度はダウンフォースがないのでコーナーがきつくなるからです」(Juju)
土曜日のレースは気温が高くなることが予想されていた。その状況でマシンからダウンフォースを削るとタイヤが滑ってオーバーヒートしやすくなることをJujuは心配していた。それでも、Jujuは「やるしかない」と覚悟を決めた。
「いまのままだと、たとえスリップストリームについても前のクルマを抜けないから」
決勝レースに向けてストレートスピードが伸びる方向にセットアップを変更したJuju。しかし、同時にタイヤが厳しくなるであろうレース後半に備えたセットアップ変更も施していた。
気温31度、路面温度54度でスタートした決勝レース。ところが、Jujuの目論見はスタート直後に崩れてしまう。他車同士の接触によっていきなりセーフティカーが導入。ところが、そのセーフティカーが明けた再スタート直後に再び他車同士のクラッシュによって、再びセーフティカーが導入される。Wシリーズのレースは30分間プラス1周と定められており、2度目のセーフティカーがピットレーンへ姿を消してグリーンフラッグが振られたとき、時計の針は残り14分を切っていた。つまり、決勝レースは実質、予定の半分以下のレース時間になってしまった。
そのため、Jujuはレースを見据えて行ったセッティング変更を活かすことができなかった。
それでも、この15分間のレースでJujuはこれまでにない経験も味わった。エマ・キミライネンとのバトルだ。キミライネンは2021年のWシリーズ総合3位を獲得。今シーズンもフランス大会前までシリーズ3位の実力者だ。しかし、スタート直後のアクシデントで最後尾に下がっていた。再スタート後、次々とライバルたちをかわしていたキミライネンだったが、そのキミライネンの前に立ちはだかったのがJujuだった。残り2周で惜しくもオーバーテイクを許したが、レース終盤までトップドライバーと堂々と渡り合ったことは、今後に向けて大きな自信となったに違いない。
「そうですね、いい経験になりました。上位陣が見えるなかでレースができたこともよかったです」
次戦ハンガリー大会は、Jujuにとってトップ10を目指した戦いになるに違いない。