クルマの注文が取れて嬉しいのは営業マン、納車になると嬉しいのはユーザーだ。それぞれのテンションが高まる時期は違い、その間には、得も言われぬ微妙な空気が流れる。注文から納車まで、この間に発生すると厄介なのが「キャンセル」だ。
クーリングオフ制度の対象外であるクルマだが、法的な売買契約が成立するのは登録・架装・納車のいずれかが発生した中で、一番早い日となっている。注文から売買契約が成立するまでの間に、何か重大な理由があれば、キャンセルが行われることもあるのだ。
本稿では、営業マン的には発生すると非常にまずい、筆者が体験・経験したキャンセル事案を紹介していく。
文/佐々木 亘、写真/AdobeStock(トップ画像=buritora@AdobeStock)
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■登録できないからキャンセルするしかない
前文でも述べたが、クルマの売買契約は基本的に「登録(ナンバープレート発行)」時に成立する。したがって、登録が出来ない状態が未来永劫続いてしまうという場合には、注文をキャンセルする他、進展させる手段が無くなってしまうのだ。
その最たるものが、車庫証明である。
これまで愛用していたクルマと、同型・同系統のクルマであれば、すんなりと車庫証明が発行されるわけだが、車格を上げた際に問題が発生することが多い。大きくなったボディサイズにより、タイヤやバンパーの一部が、道路にはみ出す事例が結構ある。
営業マンもユーザーに「車庫には問題なく入りますか?」と確認はするものの、実際に自宅車庫へ同型のクルマを入れに行くケースは少ない。そのため、契約時に車庫に入らないという事実には気づきにくいものだ。
実際に申請を出したものの、どうしても車庫証明が下りず、キャンセルせざるを得なくなったケースは、筆者も数例経験がある。
書面上では却下されたものの、後日警察立ち合いのもと、同型車を契約者の自宅車庫へ持っていき、何とか車庫に入ることを証明して、苦労の末に車庫証明を発行し、キャンセルを免れたこともあった。
基本中の基本なのだが、その時にならないと確認ができないというのが、車庫証明のつらいところ。車庫問題でのキャンセルは、起こりえるトラブルの一つだ。
■誰も悪くない、責められないキャンセル
長年懇意にしていただいたオーナーさんが突然病気になり、クルマに乗れなくなってしまったケースは、如何ともしがたかった。新型車が出るのをとても楽しみにしていてくれて、一番に契約をしていただいた方の突然の連絡に、胸が苦しくなったのを今でも覚えている。
また、仲良くしていたお客様が、突然の職場の異動でキャンセルというケースもあった。約2年に渡り、「そろそろ異動だから買い替えたいけど、もう少し乗ることにするよ」と話し続けていたお客様。
さすがにクルマもくたびれてきて、2年待っても異動する気配が無かったことから、買い替えに踏み切っていただいたのだが、注文書を取り交わした直後に、海外への異動が決まってしまった。
「さすがにクルマは持っていけない」とキャンセルの申し出があったが、このようなキャンセルでは、誰も責めることが出来ない。仕方のないキャンセルも存在する。
■実際に体験したことは無いが、周囲ではこんなことも
筆者の経験ではないのだが、同僚や他店舗でのキャンセル話は、販売店の中ですぐに広まるものだ。
営業マンが大目玉を食らうのは、クルマの色やメーカーオプションの変更に伴うキャンセルである。事前のやり取りや確認で防げるキャンセルでは、営業マンにペナルティが課される可能性もあるのだ。
最終確認として、注文内容を営業マンが読み上げると思うが、その時は注文者側も、これ以降の変更は出来ないと認識し、しっかりと確認作業を行ってほしい。
また、注文者都合のとんでもない理由もあった。
「家族(妻)にクルマを買うことを言っていなかった(結果、反対されたのでキャンセル)」とか、「他のクルマに目移りしてしまった」という内容では、しっかりと注文した側にも責任を取ってもらう必要が出てくるだろう。
また、登録直前になって「支払うお金が無くなった」というとんでもない話も聞いたことがある。
このようなキャンセル理由でも、販売店では営業マンの聞き取り不足(コミュニケーション不足)を疑われてしまう。キャンセルを受けたことがある営業マンであればあるほど、契約には慎重になるものだ。
営業マンが、少し不躾な質問をしてきても、ユーザーの皆さんには素直にありのままを答えていただきたい。一つの質問が、重大なキャンセルを未然に防ぐことにもなるのである。
* * *
最後に、クルマの契約では基本的にキャンセルをするのは難しいと認識していただきたい。特に個人的な感情や嗜好の変化で、簡単に注文を取りやめることはできないから、契約は慎重に行うべきだ。
それでもやむを得ないキャンセルは発生することがある。困った時には、まず担当営業マンへ直接相談し、協議した上で最善の方法を見出し、解決してほしい。
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