道路の周囲に樹木が生えていたりした場合、伸びた枝の一部が標識を塞いでしまって見えにくくなるケースがある。また道路に描かれた「止まれ」など注意書きも、路面の劣化とともに塗装がはがれるケースがある。
こういった見づらい標識や注意書きを見落とした場合、果たして取り締まりの対象となるのだろうか。実際の判例をベースに解説しよう。
文/藤田竜太、写真/AdobeStock(トップ画像=Paylessimages@AdobeStock)
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■爽やかな季節に生い茂る青葉……のせいで道路標識が隠れてる!
今年は例年になく早く梅雨明けになってしまったが、毎年6~7月にかけては、常緑樹も落葉樹も花木も、新しい枝を伸ばす時期として知られている。一年の中で、一番枝が伸び放題になる時期なので、剪定が間に合わないと、よく伸びた枝で信号や道路標識が見えづらくなることも……。
こうした街路樹などで「止まれ」などの道路標識がドライバーから見えなくなっているところで、一時停止をせずに、警察官に咎められた場合、どうなるのか。
道路交通法には、下記の通り明記されている
「公安委員会が標識を設置し、及び管理して交通の規制をするときは、歩行者、車両又は路面電車がその前方から見やすいように、かつ、道路又は交通の状況に応じ必要と認める数のものを設置し、及び管理してしなければならない」(道路交通法施行令1条の2第1項)
つまり、街路樹などで標識自体が隠れていたり、走行中のクルマからほんの一瞬しか見えないような位置に道路標識が設置されていた場合は、交通違反とは取り扱われない可能性が大きいといえるだろう。
もし道路標識が見えない状態で、一時停止や進入禁止を見落として、それが警察官に見つかり、キップを切られそうになったらどうすればいいか。
まず状況、事情をきちんと説明する。それでも警察官が納得してくれない場合、違反キップにサインをしてもかまわないが(サインを拒み、その場で裁判を受けると主張するのも可)、反則金は納めないこと。もちろんきちんと取り締まりを行った警察署に不服を申し立て、必要であれば裁判で争うことを連絡しなければならない。
そしてドライブレコーダーや、スマホのカメラなどで、街路樹などで運転席からきちんと標識が見えなかったという客観的な証拠を残し、後日、裁判で争うことになる。
客観的証拠さえあれば、泣き寝入りする必要はないし、不起訴になる可能性も高いだろう。
例え裁判になっても、「容易に判別できる方法で設置されていない標識は、適法かつ有効な規制がなされているものとはいえない(違反に当たらない)」という最高裁の判例が出ている(昭和43年12月)ので、大いに勝ち目があるはずだ。
ただし、反則金を納めてしまうと、行政上・刑事上の手続きが全て終了となってしまうので、裁判で争えるチャンスがなくなってしまうので要注意(一度、反則金を納入してしまった場合は、都道府県を相手に交通違反の取り消しを求める訴訟を起こさなければならなくなる!)。
ちなみに直近では、2019年3月に、通行禁止の道路をバイクで走ったとして兵庫県警に摘発されたライダーが、「標識が運転者から見えづらい状態だった」として交通違反取り消しを求めた訴訟を起こした。そして神戸地裁は「標識の設置に問題があった」と、ライダーの訴えを認める判決を下している。
■消えかけた「道路標示」の法的な規制効力は
また、道路標識ではなく、路面にペイントされた「止まれ」などの表示が消えかかっていて、それを見落としてしまったという場合もあるだろう。
路面に描かれた「止まれ」や「速度を落とせ」、「カーブ注意」、「減速」、「追突注意」などの文字は「道路標示」と呼ばれるもの。
「道路標示」は、交通を整理、誘導、規制するために、各都道府県警察によって設置されているものだが、「道路標識」と違ってじつは「法定外表示」という扱いになっている。つまり、「道路標示」には法的な規制効力がないということだ。
しかし、「止まれ」の「道路標示」は、「止まれ」の「道路標識」とセットになって設置されているのがお決まりのパターン。
「道路標識」には法的規制があるので、そっちを見落としたとなると、「指定場所一時不停止等違反」となり、違反点数2点、反則金7000円(普通車)が課せられるので注意が必要だ。
路上のペイント痕を見かけたら、スピードを緩めて標識を探すなど安全を重視した運転をするべきだろう。
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