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 ちょっと前までトランクなどに積まれていたテンパータイヤだが、今やパンク修理キットが台頭しており、ほとんど見かけなくなっている。でも当然未だにテンパータイヤを装備したクルマが日本中を走っているが、一体新車から何年目まで使えるものなのか!? もしもの時に困る前に知っておきたい知識を大公開!

文/山本晋也、参考/ブリジストン・トヨタ、写真/AdobeStock

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■当たり前だったスペアタイヤもほっそい緊急用に変更

かつてクルマのトランクの床下にはスペアタイヤが収まっているのが当たり前だった

 かつてクルマのトランクの床下に収まっているものといえば、スペアタイヤだった。舗装された道も少なく、タイヤの性能もいまいちで、パンクが日常茶飯事だったころには、まさにスペアとして、標準装着と同じサイズのタイヤが収められていたものだ。

 いまでも商用車やクロカン4WDでは、本当の意味でのスペアタイヤを採用しているケースが見受けられるが、それだけハードな使用状況を想定しているということを意味している。もっともクロカン4WDの場合は、その想定自体がファッション的な要素だったりもするのも事実だ。

 それはさておき、かつては標準サイズと同じスペアタイヤを積んでいることが当たり前だったのに、いつの間にかタイヤのパンクが減ってくると、テンパータイヤと呼ばれる細身の緊急用タイヤが取って代わるようになった。これによりトランクスペースを有効に使えるようになったというわけだ。

 そして、いまではテンパータイヤのスペースさえもったいないと、パンク修理キットによって代替されている。というわけで、あまり見ることもなくなったテンパータイヤについて、あらためて注目してみよう。

■テンパータイヤの使用期限は原則10年! 修理キットはまさかの4年

現在ではパンク修理キットが主流だが、補修液の使用期限は4年。テンパータイヤの使用期限よりも短いのだ。空気を入れるための電動ポンプは壊れるまで使える

 まず気になるのは、その使用期限だ。保安基準などで明確な使用期限が定められていないこともあり、かなり低年式の中古車であっても新車時のままテンパータイヤを積んでいることも少なくないが、緊急用といっても通常のタイヤと同じゴム製品であることには変わりはない。そのためタイヤメーカーでは、製造から10年での交換を推奨している。

 さらにテンパータイヤについては、あくまで緊急用であり、100km程度の走行を前提として設計されている。そのため1~2度使っただけでテンパータイヤの摩耗が進んでしまい、十分な性能が交換すべきという見方もある。いずれにしてもテンパータイヤはタイヤ単体で入手できるため、タイヤショップなどで組み替えてもらうことは可能となっている。

 なお、タイヤについて製造から10年での交換が望ましいというのはテンパータイヤに限った話ではない。新車を買ってすぐに純正装着タイヤを外して、インチアップして乗っていたといった人が、クルマを売却する際に、純正装着タイヤに戻すなんてことは珍しくない。そうした場合、タイヤ自体は新品のようにヤマがある状態だが、ゴムは経年劣化しているので、設計通りの性能を発揮できる状態とはいえない。中古車を購入する場合は、タイヤの状態だけでなく、サイドウォールに書かれている数字を読み解いて、製造年月についてもチェックしたいものだ。

 また、冒頭でテンパータイヤからパンク修理キットへ置き換わっていると書いたが、じつはパンク修理キットにも使用期限がある。空気を入れるための電動ポンプは壊れるまでは使えるが、パンクした穴をふさぐ補修液は有効期限が製造から4年程度となっている。車検のタイミングなどでチェックして必要とあれば新品交換することをおすすめするところだ。

■黄色のホイールには理由あり!? テンパータイヤはメンテもすべし

テンパータイヤのホイールが黄色いのは世界統一のルール。標準装着と明らかに異なる識別色もしくはカラーパターンとすることが定められている

 あらためてテンパータイヤの話に戻すと、じつは日常的なメンテナンスも忘れられているケースが多い。見ての通り、テンパータイヤというのは標準装着タイヤに比べると、かなり細身になっている。これだけ細いタイヤで車体を支えるわけだから、じつは指定空気圧が標準の倍近い数値になっているのだ。

 そして、ご存知のようにタイヤの空気というのは少しずつながら自然に抜けていく。つまり放置されているテンパータイヤは十分な空気が入っておらず、仮に付け替えたとしてもちゃんと走れない可能性があるのだ。

 なかなかトランクの下にあるテンパータイヤをチェックするというのは面倒かもしれないが、この記事をきっかけにテンパータイヤの製造年月と空気圧を確認してもらえると幸いだ。

 なお、実物を見るとわかるだろうが、テンパータイヤのホイールは黄色もしくは黄色のデカールが貼られて、標準タイヤではないことを明示している。これは世界的に、テンパータイヤのホイールには明らかに標準装着と異なる識別色もしくはカラーパターンとすることが統一ルールとして定められているためだ。

■テンパータイヤは駆動輪に使っちゃダメ!? 使用しないのがいいケースも

 さて、実際にパンクしてテンパータイヤを使うときの基本として「駆動輪には使わない」ということがある。仮にFFのクルマでフロントタイヤがパンクしたとすると、リアタイヤを外して、パンクしたフロントに持っていき、リアにテンパータイヤを履かせるというのが理想だ。

 そうはいっても車載工具で何度もホイール脱着をするというのは作業ミスにもつながりかねない。上記の基本を承知してリスクを把握した上で、パンクしたタイヤをテンパータイヤにつけかえて、最寄りのカーショップなどに向かい、できるだけ早くパンクを修理するか、正規サイズのタイヤに交換するようにしたい。

 ただし、機械式LSDをつけているような場合においては、左右でタイヤ外径が異なることでLSDが過熱するなどしてしまい余計な修理がかかることもある。こうしたケースでは、むしろクルマを積んで運ぶことのできるローダーなどを手配してしまったほうがリスクを減らせるかもしれない。

 パンクくらいでローダーを呼ぶというのは気が引けるかもしれないが……いずれにしても、自分で正しく判断できないと思ったらロードサービスを依頼するなりしてプロに見てもらうほうが安心だ。

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