8月7日、フィンランドのユバスキュラを中心に開催されたWRC世界ラリー選手権第8戦『ラリー・フィンランド』の競技最終日、デイ4のSS19~22が行われ、カッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)との一騎打ちとなった首位争いを制したオット・タナク(ヒョンデi20 Nラリー1)が総合優勝を飾った。日本人WRCドライバーの勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)は総合6位でフィニッシュしている。
TOYOTA GAZOO Racing WRTのヘッドクォーターがあるユバスキュラにサービスパークが置かれることから、トヨタにとっては“ホームイベント”となる今戦。4日木曜に開幕したラリーはトヨタに所属するフィンランド出身ドライバーたちが速さを見せたが、それに並ぶスピードと安定感で序盤からリードしたのはエストニア出身のタナクだった。
過去に2度ラリー・フィンランドで優勝しているタナクは、金曜のデイ2から連日複数のステージでベストタイムを記録していく。それだけでなく4日間を通じて、ほぼすべてのステージでトップ3以上のタイムを記録する安定感をみせSS2以降、総合首位の座を守ってきた。
一方、このエストニア人ドライバーを追うトヨタ勢では、母国ラリーに挑むエサペッカ・ラッピ(トヨタGRヤリス・ラリー1)が最初の挑戦者としてタナクと接近戦を演じた。両者のギャップは一時は3.8秒にまで縮まったが、競技3日目には徐々にその差が開いていく。さらにラッピはフロントガラスに跳ね上げた石がぶつかり、ウインドウにヒビが入って視界が悪化するアクシデントにも見舞われ後退を余儀なくされた。
代わってデイ3にポジションを上げてきたのは、同じくフィンランド出身のロバンペラだ。前日の金曜は不利な出走順の影響もあり4番手となったロバンペラだが、3日目の競技では出走順の不利もなくなり持ち前のスピードを発揮していく。
午前中のループで総合3番手のエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)をかわすと、午後にはラッピを抜いて2番手に。デイ3最後のSS18ではこの日6本目のベストタイムを記録し、首位タナクとのタイム差を8.4秒として最終日に駒を進めた。
4本のSSで争われるデイ4は、晴天の下でラリーが行われた。最終対決のオープニングステージとなったSS19は、首位タナクが制しギャップを10.3秒に拡げてみせる。続くSS20では優勝を争う2名がまったくの同タイムで最速に。これで勝負は残り2ステージとなった。
■マシンがボロボロでも意地の出走。ラッピが母国で表彰台獲得
総合3番手につけるラッピのマシンが、横方向に3回転するクラッシュが発生したSS21、ここでは逆転優勝を狙うロバンペラがステージウインを果たしたが、タナクも0.3秒差のステージ2番手につけギャップはちょうど10秒となった。
迎えた最終SS22、パワーステージに設定された“ルイヒマキ2”は2番手ロバンペラからアタックを開始。暫定トップタイムより3.1速いタイム記録しタナクのフィニッシュを待つことに。注目のタナクはステージ4番手、ロバンペラより3.2秒遅れたものの総合首位を守ってフィニッシュ。これによりフィンランドで通算3勝目、今季2勝目を挙げた。
母国戦初優勝を狙ったロバンペラは6.8秒及ばず総合2位に。3位にはフロントウインドウやルーフの一部を失った満身創痍の姿ながらパワーステージに臨み、SS21終了時点で26.9秒後方の4番手につけていた僚友エバンスの追撃から表彰台を死守してみせたラッピが入った。
総合4位はパワーステージで2番手タイのタイムを記録したエバンス、総合5位にはティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)が入り、今戦も安定した走りを見せた勝田が総合6位に入った。勝田は開幕戦からの連続入賞を「8」に伸ばしている。
ピエール-ルイ・ルーベ(フォード・プーマ・ラリー1)と7番手争いを繰り広げたガス・グリーンスミス(フォード・プーマ・ラリー1)は総合7位でフィニッシュした。一方、8番手につけていたルーベは、メカニカルトラブルのためSS22のスタートにたどり着けず順位を失っている。代わって8位にはWRC2クラスを制したテーム・スニネン(ヒョンデi20 Nラリー2)が入った。
ドライバー選手権では獲得ポイントを198点したロバンペラが依然独走。タナクが104ポイントでランキング2位に浮上し、1ポイント差で僚友に逆転を許したヌービルが同3位となった。マニュファクチャラーズランキングはトヨタが339ポイントで首位、2位ヒョンデが251ポイントとなり、その差が88ポイントとなっている。
WRCの次戦第9戦『イープル・ラリー・ベルギー』は、8月18日から21日にかけて開催される。