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 韓国第二の都市釜山(プサン)で開催された「釜山インターナショナルモーターショー」は2022年7月中旬の7日間、市内のBEXCというメッセ会場で行なわれた。以下、現地を取材した石川真禧照氏によるレポートをお届けします。

文、写真/石川真禧照、ヒョンデ

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■チェスと将棋の駒のカタチの違い

「釜山インターナショナルモーターショー2022」の会場は、6つの催し物会場で構成されていた。期間中にはオフロードコースや市販車試乗会、クラシックカー走行会、オートバイ試乗会などが行なわれ、来場者は実体験でクルマの楽しさを味わえるイベントに仕上がっていた。

写真はヒュンデ(現代自動車)ジェネシスG70 シューティングブレイク。全長4685×全幅1850×全高1400mm。2Lと3.3Lガソリン使用があり、価格は4310万ウォン(約430万円)から

 クルマの展示は1、2ホール。会場内に入ってみると新車メーカーのほかにEV専用メーカー、チューニングカーメーカー、クラシックカー販売業者などがブースを構えていた。規模は違うが東京モーターショーとオートサロンとオートモビルカウンシルが一体となったモーターショーという印象だ。ただし規模感は日本のショーの1/4ぐらい。会場はじっくり見学しても3時間もかからない。

 とくに自動車メーカーは、ヒョンデグループとBMWグループが展示スペースを確保しているだけ。実際に、韓国では自国資本の自動車メーカーは(現在は)ヒョンデだけ。ブランドでいうとヒョンデ、ジェネシス、キアの3ブランドなのだ。

 今回のショーではBMWグループがBMWのほかにMINIとロールスロイスの3ブランドを別のスペースに展示していた。BMWは韓国市場にも力を入れているということだ。

 会場は入口を入ると左右にヒョンデとキア、奥にBMW/ミニとジェネシスが大きく陣取るというレイアウト。ちなみにジェネシスというのはヒョンデの高級ブランド。トヨタのレクサスのような存在。キアはファミリー向け大衆車ブランド、日産のダットサンのような位置付けと思えばよいだろう。

 日本ではほとんど知られていないが、ヒョンデ、ジェネシス、キアともにセダン、SUVなどを販売している。サイズも日本の軽自動車のような軽車(排気量1.0L以下)にはじまり、小型車(排気量1.0L~1.5L)、準中型車(同1.5~2.0L)、中型車(同1.5~2.5L)、準大型車(同2.4~3.5L)、大型車(同2.5~5.0L)と幅広い車種が生産されている。ただし、クーペやコンバーチブル、スポーツカーは生産していない。韓国のモータリゼーションがそこまで成熟していないからだ。

 近年では電気自動車にも力が入っているようで、ショー会場では既存モデルのEV車やEVのショーモデルも展示され、話題になっていた。

 筆者にとって大半のクルマが初対面だったが、ボディデザインはかなり斬新であったり、工作精度もしっかりとした感じのクルマが多い。とくにボディデザインに関しては、日本車よりも個性を生かすようなデザインが多く見られた。かつては日本車的なデザインのクルマも多かったが、最近の韓国車は、ドイツやアメリカ車とは違う方向性のデザインを取得したような気がする。

キア「スポルテージHEV」。フロントマスクが特徴的

 ヒョンデは2000年代後半にアウディやBMWからチーフデザイナークラスを引き抜き、デザイン部門の責任者にしている。その効果が、市販車に表れている。
 デザインに関しては、今回の取材のなかで、ヒョンデの車に関して、最近のヒョンデ車のフロントマスクは、全車に同じイメージの形を揃えるのではなく、それぞれの性格に合ったフロントマスクをつくる、という旨の発言をしている。

 それは例えていうと、チェスはそれぞれの駒が異なる形をしており、それで全体を構成しているのと同じだ。一方、日本の将棋の駒はすべて同じ形をして、それぞれの役目を持っている。グリルが共通というヨーロッパ的な考えから距離を保った考え方と言える。日本車もどちらかというと、全車同じ方向性のグリルで統一しようとしている。独自の表現で進んで行こうというのが、ヒョンデの最近のデザインテイストに関しての日本車との違いだ。

 そのことを如実に表したのが、アイオニックシリーズだ。

■日本でヒットを狙うが「強力なセールスポイント」が必要

 最新のヒョンデのクルマで「アイオニック」という名前を持つシリーズは、すなわちEVのことを表している。

 日本でも販売を開始したアイオニック5がその第1号だ。

 今回の釜山インターナショナルモーターショーの目玉のひとつに、アイオニックシリーズ第2弾のワールドプレミアがあった。世界で初めて新型車を公開するということだ。

 発表は午前11時。ショー会場のヒョンデブースには10時ごろから韓国メディアが多く会場に陣取っていた。

 ハデなステージ演出の中でクルマが登場。ヒョンデモーターカンパニーの社長が自らハンドルを握って、舞台に走り出して来た。「アイオニック6」の登場だ。

 この新EVは4ドアのセダン形状をしていた。全体のフォルムは、曲面を多用した、どちらかといえば、卵型のセダンだ。

釜山モーターショーで世界初公開された、ヒョンデ初のEVセダン「アイオニック6」

 直線を主体としたアイオニック5とはまったく異なるデザインをしている。これがヒョンデのいうチェスのような車種体系なのだろう。

 ショー見学の前日、ナムヤンにあるR&Dセンターを訪問したとき、デザインスタジオで、何台かのプロトタイプモデルが並べられてあった。そのなかには、今後、日本への展開も考えているモデルもあり、日本向けへのアドバイスも求められた。 

 なかには魅力的なモデルもあったが、日本車との競合となると、強力なセールスポイントが不可欠。現時点ではそれがどこのあるのか、見出すのがむずかしい。

 確かにアイオニック5はクルマのクオリティも高いし、EVとしての性能も、同じカテゴリーのトヨタbZ4Xやスバルソルテラよりも上だ。スタイリングも室内のデザインも個性的だし、先進技術も新しい。価格も国産EVと十分に競争できる。

 でもいい車が売れるとは限らない。ユーザーが購入する動機がポイントになる。オンライン購入した後のサービスやメンテナンス、さらにリセールなど気になることはいくつかある。こうしたことを解決するのは時間かPRへのお金の掛け方だろう。

 果たしてヒョンデは日本市場でEV先駆者のテスラを上回ることができるか。7月には中国の自動車メーカー大手のBYDもEVでの日本市場参入を2023年から行なうことを発表した。日本市場でのEV戦争は激しさを増していきそうだ。

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