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安倍元首相の銃撃事件が勃発した7月が過ぎ、8月に入った今週は臨時国会が招集される。自民が統一教会問題で揺れる中、攻め時のはずの立民だが、どうも腰が定まらない印象だ。

執行部に公然と反旗を翻し始めた辻元氏の落選(写真:つのだよしお/アフロ)

先の参院選で“復活”を果たした同党の辻元清美参院議員は31日のBSテレ東の報道番組で、泉健太代表ら執行部に対し「人事も含めて刷新されるべきだ」と述べるなど、参院選敗北の責任を公然と追及したことで波紋を広げた。立民は参院選で45議席を獲得し、野党第1党の座を維持したものの、比例票では維新に100万票以上を差をつけられる二番手に甘んじ、改選前から6議席を減らした。

泉氏は7月19日の両院議員総会で「議席を維持することができず、おわびを申し上げる」と陳謝。辻元氏の唐突なテレビでの発言については「参院比例への転出を公認した現執行部に言う言葉なのか」(政界関係者)との疑問の声も出ているが、7月末時点では、新聞各紙とも「泉降ろし」が党内の大勢には広がっていない様子を伝え、執行部の刷新には直結していない。

そうした中で左派系メディアからは、今回の参院選で落選したベテラン議員の存在を惜しむ論調まで飛び出した。毎日新聞は30日、「野党第1党なのに…次々と主力を失う立憲民主党、中堅議員の嘆き」との題で、有田芳生氏や白真勲氏ら知名度の高い候補者が落選。7月の任期まで副議長を務め、引退する小川敏夫氏らの名前を挙げ、「戦力低下」を憂う党内の空気を伝えた。

森氏の落選を「痛手」と報道

この中で特に「痛手」とまでその存在を持ち上げたのが新潟選挙区で惨敗した森ゆうこ氏だ。毎日は森氏について

特に森氏は、森友学園を巡る公文書改ざんや加計学園問題、「桜を見る会」問題などで、故安倍晋三元首相と対峙(たいじ)し、政権の不正疑惑をただしてきた実績があり、政府・与党から最も警戒されてきた議員の一人。党職員は「森さんがいないのは、議員数人分の痛手だ」と嘆く。

などと1パラグラフを裂いてまで落選を惜しんだ。

落選が確実となり、支持者らに挨拶する森氏(7/10夜、編集部撮影)

しかし、この選挙戦で森氏は1人区で野党共闘で臨んだにもかかわらず、自民新人候補に対し、44万対51万と票差を大きく空けられての完敗を喫した。今年3月には、政府の規制改革推進会議の国家戦略特区ワーキンググループ(WG)座長代理を務める原英史氏に訴えられた名誉毀損訴訟の一審判決でも損害賠償を命じる判決を受けた(控訴中)。

さらに選挙戦の中盤には、原氏が毎日新聞を訴えた民事訴訟の控訴審で、原氏の逆転勝訴の判決が下り、毎日の記事を参照しながら原氏を国会やネットで攻撃した森氏の言動が改めて厳しく問われたことも追い討ちする形となった。

しかし、毎日新聞はよほど腹に据えかねたようだ。原氏との訴訟は最高裁に上告しただけでなく、立民が不在を嘆く落選議員の中でも特に記述を割き、「森さんがいないのは、議員数人分の痛手だ」という党職員の嘆きを紹介するなど、尋常ではない擁護ぶりを発揮した。

森氏の地元紙が比例出馬報道

このタイミングに合わせるかのように、森氏の地元メディア、にいがた経済新聞は7月29日、関係者の話として森氏が次期参院選は比例代表に鞍替えで立候補することを検討していると報じた。

冒頭の辻元氏が昨秋の衆院選で選挙区落選してまもなく、全国区の知名度の高さを生かし、参院比例転出に成功した事例を踏襲するかのようなニュースに、森氏嫌いのネット民がこの週末は騒然となった。

毎日新聞、森氏と法廷闘争を繰り広げてきた原氏は30日、ツイッターで「森ゆうこさんには、再起を目指す前に、まずこれまでの活動を省みていただきたい」と、鞍替えの動きを牽制。また、森氏の落選を惜しむ毎日新聞の記事についても「森ゆうこさんを激賞する記事を掲載していますが、森さんとの癒着の疑いの検証はどうなっていますか?」と呆れた様子だった。