日野自動車は普通免許で運転できる車両総重量3.5t未満の電動小型トラック「日野デュトロZ EV」を6月28日に発売した。
「日野デュトロZ EV」は、前輪駆動・超低床荷台のBEVというのがセールスポイントで、中国のメーカー、あるいはファブレスメーカーがターゲットとしているラストワンマイルの集荷集配車に狙いを絞っているのが新しい。
本年度は三菱ふそうのeキャンターの次世代モデル、いすゞ自動車のエルフEV(普通免許対応モデルも設定)なども発売予定だが、果して最大積載量1t前後の「日野デュトロZ EV」に勝機はあるか!? 要注目である。
文/フルロード編集部 写真/日野自動車・ヤマト運輸・フルロード編集部
■1t積み車両開発の狙い
このほど発売した日野デュトロZ EVの価格設定は非公開ながら、フルメンテナンスリースで提供される。車型はキャブから荷室へ直接移動ができるウォークスルーバンと、用途に応じた架装ができるキャブシャシー型を設定。
ラストワンマイルの現場の使い勝手を追求したというZ EVは、前輪駆動且つ、新開発のBEV専用シャシーにより約40cmの床面地上高を実現した超低床構造で、荷役作業性や乗降性に優れ、GVW3.5t未満として新普通免許で運転可能なコンパクトな車体となっている。
ラストワンマイル専用とも言える車両開発の背景としては、ネット通販市場(Eコマース)の急速拡大の影響で、宅配事業における物量が増大するいっぽう、従来の2t車でも重量は平均で1t積まないケースも多くなってきたことや、2017年から始まった新普通免許制度の影響で、なかなかドライバーが集まらなず、新人が入ったとしても準中型・中型免許を取ってからでないと運転できないといった顧客からの声があったという。
開発自体はゼロからフレームも機器の配置もすべて新規制作しており、クリアランス、デパーチャアングル、アプローチアングルを確保しながら、地上から40cmに床面を置くところからスタート。
部品点数が少ないEVとはいえ、こうした制約のライン内に全部の補機を押し込むのが非常に難しかったようだ。
たとえばラジエターは水平に近い状態で配置し、モーターも極力小さなものを採用。アクスル関係はショートストロークのものを新作している。シャシー周りも低床化を達成できるように全て新規に開発。
日野は2013年に同様の前輪駆動・超低床電動トラック(eZカーゴ)の実証実験を行なっているが、そのモニター車と中身はまったく別物なのである。
■日野デュトロZ EVのスペックは?
日野デュトロZ EVの車両スペックは、キャブ直下に配置されている永久磁石式同期モーターの最高出力が50kW(68PS)、荷台床下のフレーム内側に配置されたリチウムイオンバッテリーの容量は40kWhで、一充電走行距離は150km(WLTCモード)となっている。
車体が軽いだけに少なめのバッテリー容量であるが、思いのほか長く走れるようだ。なお、比較としてふそうの現行eキャンター(GVW7.5t)は81kWh、いすゞのエルフEVのモニター車(フォアミリーマートの実証実験車両)は79kWhを搭載して両者共に航続距離100kmほどだ。
車体サイズは、ウォークスルーバン型で全長4695×全幅1695×全高2290mm、最大積載量1000kg、車両総重量3490kg、床面地上高は積車時400/空車時450mmとなっている。
このほか主な安全装備として、自動ブレーキのPCS、誤発進抑制機能、クリアランスソナー、車線逸脱警報、電動パーキングブレーキ、バックアイカメラ、電子インナーミラーなども搭載される。
また、Z EVの発売日同日、日野のグループ会社のCUBE-LINXが提供するサービス「エモプラっと」も始まった。
「エモプラっと」は電動車・充電器などの周辺機器の導入・助成金サポートなどを提供するサービスで、同サービスを通じ、Z EVをはじめとした電動車導入に向けて、必要なハードやシステムをワンストップでスムーズに導入できるようになる。
また、同社は今年9月に稼働マネジメントシステムの「エモ助」のリリースも予定している。
日野自動車ではZ EVの年間販売目標台数を、2022年度は500台、次年度以降は1,000台を超える規模に拡大する見込み。
Z EVが直近まで実用供試実験を行なっていたヤマト運輸の宅配ドライバーからは、超低床構造がもたらす荷役性の高さ、狭い路地でもスイスイ入っていけるコンパクトなサイズが好評を得ており、今後の市場の評価に注目だ。
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