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新型プリウスでスターに返り咲くのか? 「ハイブリッド」称号を持つクルマの期待と不安

 プリウスが誕生して25年、そして現行の4代目プリウスは、2022年でモデルライフ7年を迎える。6~7年サイクルでモデルチェンジを繰り返してきた歴代プリウスの動きをみると、そろそろフルモデルチェンジへの期待も高まってくる頃だ。

 そこで本稿では、過去にトヨタディーラーでプリウスを販売し、今もなおプリウスに乗り続けている筆者が、そろそろ登場の気配が見える新型プリウスへの期待と不安を考えていく。

文/佐々木亘、写真/TOYOTA

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役割の変化に気づき、対応できるか

2015年に登場した4代目プリウスは、エクステリアデザインが不評だったことやハイブリッド車がプリウス以外でも選べるようになり、3代目ほどのヒットにはなっていない

 エンジンとモーターを駆動させ、走り出すハイブリッドシステム。これが搭載されているだけで、プリウスというクルマの証になっていた時代がある。初代から3代目までは、自動車というよりもハイブリッドカーであることが、プリウスの役割であり、存在意義だった。

 その後、アクア・プリウスαなどを筆頭に、トヨタのほぼすべてのクルマにハイブリッド技術が搭載された。ハイブリッドカー=プリウスではなく、ハイブリッドカー=トヨタというイメージに変化している。

 さらに時は進み、さまざまな自動車メーカーが、当然のようにハイブリッド技術を採用した。かつてはプリウスだけに許された「ハイブリッド」の称号は、今やクルマの代名詞のようになっているのだ。

 2015年に登場した4代目は、当たり前になったハイブリッドカーたちの中に埋もれてしまい、3代目ほどのヒットにはなっていない。現行型プリウスは、自らの役割を見誤ったのではないかと筆者は思う。

 次世代の5代目では、ハイブリッドカーとしての役割ではなく、「プリウス」という存在を、いかに強調し進化させるかがポイントとなるだろう。

4代目から見える進化と改善のポイント

 まずは、プリウスだからこそできる、エクステリアデザインへのこだわりを見せてほしい。

 初代こそプリウスは王道の3BOXセダンだったが、2代目からは2.5BOXの独特なボディ形状をトレードマークにしてきた。セダンともハッチバック(ステーションワゴン)ともいえないカタチは、プリウスでしか成しえない。

 ボディのディテールでカテゴライズできないのがプリウスの強みだ。それだけデザインには自由度があり、プリウスだからこそ、何をやっても許されるといった部分もある。3代目、4代目よりもさらに流麗に、ファストバック風でロー&ワイドを感じられる、スポーツカーのようなテイストを強くしてほしいものだ。

 内装では、伝統のセンターメーターは維持しながらも、ディスプレイからエアコン等の操作系統を1枚のパネルにするような、近未来感が欲しくなる。コンパクトな機能性よりも、3代目プリウスの内装のような、目を見張るデザインを見てみたい。

 そのうえでドライバーは、右手にステアリング、左手でボタン操作という、TVアニメーションに描かれる、宇宙船操縦を疑似体験できるような操作系統になると良いだろう。個人的な好みになるが、現行型ではステアリングの右に位置しているパワースイッチを、3代目のようにステアリング左側に戻してほしい。ボタン操作をするのはあくまで左手だから、日常的に押すボタンは、すべてインパネ中央からステアリング左側に収められると、運転操作もスマートだ。

 エンジンには、ノア・ヴォクシーで採用された新世代ハイブリットシステム(1.8L)を採用するだろう。もちろんこのエンジンで充分だが、欲を言えば排気量をキリよく1.5Lか2.0Lとしてほしいところ。税制としては1.5Lが有利になるし、正直1.8Lハイブリッドではパワー不足を感じる所も多い。

 ハイブリットの先駆者としての余裕や優雅さが見えてもいい。難しい選択になるが、排気量を大きくすることで燃費が犠牲になるが、車格以上のドライバビリティを感じながら、運転するプリウスも悪くないと思う。

 最後に価格面だが、現行型の259万7000円~364万円から少し上げたいところ。この価格レンジは層が厚く、カローラシリーズやC-HR・ノアなど、トヨタとしても選択肢が多い。ならば、手頃な200万円台後半から400万円前半の価格帯に位置しても良いだろう。

 SUVでいえばRAV4がこの位置に入るわけだが、セダンやステーションワゴンで見ると、カローラシリーズからカムリの間が大きく空いているのだ。ロープライス群は充実しているトヨタラインナップだからこそ、プリウスを高級路線に振り替えて、「ちょっと良いクルマ」を印象付けたい。

 改善したい部分は他にもあるが、まずはハイブリッド群に埋もれたプリウスを引き上げる作業が急務だ。個性的で独自の価値観を作り出し、初代登場のときのようなインパクトを与えることが、次のプリウスには必要だろう。

ライバルはどこへ? 各社のプリウス包囲網

 プリウスのライバルになるはずだったクルマ達が、どんどんと消えていく。スカイラインやインサイトが代表例であり、2.5~3BOXのクルマを作るメーカーも減ってきた。

 売れているプリウスだからこそ、近しいライバルが数多く誕生したが、現在のプリウスではライバル争いも激化しない。ライバル不在の中で、プリウスがどのように新しい市場を開拓するかに注目が集まる。

 日産、ホンダがこの市場に追随する動きはまだない。しかし、虎視眈々と狙っていそうなのが、マツダだ。

 マツダ3・マツダ6にはセダンからステーションワゴン、さらには5ドアスポーツを揃える。高級路線も意識させながら、プリウスに近しいポジションを取っている部分もあり、今後の改良次第では、ぶつかり合う存在になるだろう。

 プリウスが作り上げたステージには、さまざまなスターが登場し、プリウスは主役の座を譲った。しかし、プリウスがもつ25年の歴史と経験は、必ずや新しいステージを作り出し、再びスターダムへ駆け上がるはずだ。

 先駆け、先立つという意味の名をもつプリウス。その名のとおり、大きな変革期である自動車業界の先頭に立ち、引っ張っていく存在になってほしい。今冬から年度末ともいわれる新型の登場を心待ちにしよう。プリウスなら、必ずやその期待に応えてくれる。

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