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 路線バスなどの乗車時に聞こえてくるあの独特の空気が噴き出す音。トラックの近くでもしばしば聞かれるこの音の正体はなんなのか? バスを運行する際に欠かせない高圧空気を使用した仕組みを解説しよう!

文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)


実は昔ほどは聞こえない?

 以前は多くのエア音がバスからはしていたのだが、現在ではあからさまにエア音を発することは昔ほどない。それでもバス独特なものもあるので、代表的なものを挙げることにする。

 まずはドアエンジンだろうか。自動扉は空気圧で開閉しているが、貸切車や高速車のスイングドア(1枚扉)は静かにゆっくり開閉するので音も静かめ。対して折戸等の路線車で多用されるドアは乗降時間を短くするために結構勢いよく開閉するためにエア音は大きめだろうか。

ブレーキはエアだらけ

 次にフットブレーキとしてのエアブレーキ。大型車のブレーキは複数あり、乗用車とは桁違いの制動力がある。フットブレーキはいわゆる「オルガンペダル」と称される形式のペダルを踏んで掛ける。乗用車のように踏んでしまえば強力な空気力でピストンを押し、直ちに停車するほどの制動力があるので通常は「舐めるように」踏む。

 でなければ即車内転倒事故だ。油圧を併用せず空気力のみで掛ける形式のブレーキを特に「フルエアブレーキ」と呼ぶこともある。これも最近では昔ほど大きな音はしないが、大きく踏み込んで緩解するときにはそれなりの音はする。

 最近特に大きな音がするのはパーキングブレーキだ。サイドブレーキともいうが、以前は乗用車と同様にワイヤーで引く方式だったが、最近は空気力でホイールロックを掛ける方式なので、停留所停車時や長い信号停車でパーキングブレーキを掛けると大きな音がする。

坂道を下るときは排気ブレーキを使う

 ワイヤーを引かなくても良い反面、アナログ的に無段階ブレーキを掛けることができず、掛けるか緩めるかのデジタル的なブレーキなので、教習所や試験で行う坂道発進時に「じわじわ」と緩めることはできない。

 もっとも大排気量ディーゼルエンジンのトルクは強烈なので、ガソリン車のようにエンストすることはほとんどない。

 都市部の路線車ではあまり使われることはないが、排気ブレーキも空気力とは違うがエア音はする。これは排気管を強制的に弁で閉じることで排気をさせず、エンジンのピストンの動きに制限を加えることで減速させる。これを解除する際に排気管にたまった高圧の排ガスが一気に排出されるため、それなりに音がする。

バスのインパネにはエアゲージがある。排気ブレーキは左レバーで操作する(エアロバス)

 ちなみに排気ブレーキを除くブレーキには必ず圧縮空気が必要なので、コンプレッサーで定期的に作られ元空気だめに貯められる。この圧力が低下するとブレーキが使用できなくなるので非常に危険だ。

 エンジンさえかけておけばコンプレッサーが動作するので問題はない。しかしエンジンを切っているときにブレーキを多用したり、長時間エンジンをかけないでいると自然に圧力が下がっているので、エンジンを始動してコンプレッサーから圧縮空気が供給され、元空気だめの圧力が上がるまでは発進できないようになっている。

マニュアルトランスミッションにも!

 最近のバスはほとんどが乗用車とは多少仕組みが異なるもののオートマチック車になっているのであまり音はしないが、マニュアル車では変速するときにエア音がする。これは変速レバーでギアを変えると電気指令で空気圧により変速機を操作するためだ。

フィンガートランスミッションもエア音がする

 乗用車と同様にAT車の割合が多くなっているが、現在のところ大型免許にAT限定はないので必ずマニュアル免許を取ることになる。しかし近い将来はマニュアル免許なのに乗務するバスはAT車だけという日が来る。

少し昔のバスはエア音だらけだった?

 最後はエアサスペンションだ。かつてのバスは板バネが主流で、空気バネはどちらかというと高級車だった。現在ではエアサス車が多くなり、空気を抜くことにより乗降しやすいように車高を変える、ニーリングやクラウチング機構まで備えたバスが多くなっている。高齢者が乗降するときなどの助けとなる、バスが傾いてステップまでの高さが変わるアレだ。

 昔はたとえば日野のワイドサスと称したエアサスは、エアの出入りの際にかなりのエア音がしたものだが、最近はほとんど聞こえなくなった。むしろ電車のエアサスのほうが大きな音がするくらいだ。

 音はだいぶ小さくなったり聞こえなくなったりしているものの、圧縮空気を多用しているバスでは気を付けて聞いてみると様々なエア音がするので、何の音なのか聞き分けるのもバス乗車時の楽しみだ。

投稿 バスに乗っていると時々聞こえる「プシュッー」という音はなんなのか? エアーを多用するバスならではの装備に迫る自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。