F1第13戦ハンガリーGPのレースで、レッドブルとフェラーリの明暗を分けた最大のポイントは、2回目のピットストップ時に履いたタイヤがレッドブルがミディアムで、フェラーリがハードだったことだ。
当初、レッドブルも今回のレースでハードを使用することを考えていた。なぜなら、前日の予選でレッドブルのふたりは11番手と10番手に終わっていたため、ハードを装着してスティントを長くしたかったからだ。ハンガロリンクはオーバーテイクが難しいため、コース上ではなく、ピットストップ戦略でポジションを上げようとしていた。
しかし、レコノサンスラップ中に多くのドライバーがソフトを履いていたにも関わらず、グリップが不足していることを無線でピットに報告している状況を確認して、ハードの使用をグリッド上で見送った。
「僕もグリッドに向かう際にソフトを履いて出ていったけど、ソフトでもグリップがひどかったから『今日のレースでハードを履くなんてなんてあり得ない』と思って、チームの戦略変更を全面的に信用した」
F1のレースはドライコンディションの場合、最低でも2種類のコンパウンドを装着しなければならない。ハードを捨て、ソフトとミディアムで戦うことを選択したレッドブルのピットストップ戦略はおのずと2ストップになった。
そこで重要となるのが、スタートで履くタイヤだ。レッドブルがソフトだったのに対して、フェラーリはミディアムだった。
フェルスタッペンのレースエンジニアを務めるジャンピエロ・ランビアーゼはその理由をこう説明した。
「スタートでソフトを履いてしまえば、残りのレースは本命のミディアムだけを使えばいい。でも、もしミディアムでスタートすると、必ずどこかのスティントでソフトを履かなければならなくなり、戦略に柔軟性がなくなってしまう。だから、フェラーリがミディアムを履いてスタートしたときは『やった!!』と思った。だって、彼らはどこかでソフトかハードを履かなければならないことがわかっていたからね」
フェラーリのマッティア・ビノット代表は敗因を戦略のせいだけにはせず、日曜日のコンディションでマシンのペースが遅かったことが最大の敗因だったと説明した。確かにシャルル・ルクレールはハードを履いて失速したものの、チームメートのカルロス・サインツはミディアム-ミディアム-ソフトという戦略を立て、それ自体は2位に入ったルイス・ハミルトン(メルセデス)と同様だった。ただし、その場合は最後のソフトをできるだけ短いスティントにするため、第2スティントを長めに走らなければならない。
しかし、フェラーリは異なるタイヤでポールポジションからスタートしたジョージ・ラッセル(メルセデス)を意識しすぎたのか、あるいはフェルスタッペンのプレッシャーに負けたのか、早めに動いてサインツに最後のスティントをソフトで23周走らせる戦略を与えてしまった。これにより、サインツはフェルスタッペンやラッセルを追うことができなかっただけでなく、残り8周でハミルトンにもオーバーテイクを許し、フロントロウスタートから4位に終わった。
F1では予選ポジションはマシンの性能で決まり、レースは戦略が大きく結果に影響すると言われる。ハンガリーGPの予選でフェラーリに歯が立たなかったレッドブルが、日曜日に大逆転優勝できた最大の要因は、戦略だった。
「サーキットだけでなく、イギリスのミルトンキーンズにある我々のファクトリーにも、素晴らしい戦略部隊があり、そこで優秀なストラテジストが常に最適な戦略を更新している。今日の戦略は完全に命中した」(クリスチャン・ホーナー代表)