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 ファンのために熱いレースを展開してくれるスーパーGTドライバーたち。SNS等でも散見されますが、所属するチームやメーカーによって差はあれど、多くのドライバーが“繋がり”をもっています。そんなGTドライバーたちの横の繋がりから、お悩みを聞くことでドライバーの知られざる“素の表情”を探りだす企画をお届けしております。今回はTGR TEAM au TOM’Sのジュリアーノ・アレジ選手から、チームメイトであるTGR TEAM KeePer TOM’Sの宮田莉朋選手に繋がりました。

 しばしばSNS等でも見られる、気になる2ショット。「へえ、あのドライバーたち、仲良いんだ」とファンの皆さんも驚くこともあるのでは。そんなGTドライバーの繋がりをたどりつつ、ドライバーたちの“素”を探るリレートークがこの企画です。これまでの連載は、まとめページを作りましたのでぜひご参照ください。

スーパーGTドライバー勝手にお悩み相談ショッキングの連載まとめページです。
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 というわけで、今回は宮田莉朋選手の後編。前編はこちらからどうぞ。まだまだ続きますがお付き合いください。

* * * * *

■副業しなきゃダメですかね?

──そのホントの悩みを言ってみてよ。
宮田さん:本当の悩みはビジネスのことと、あとヒラノさんはご存知かもしれませんが、結婚したわけじゃないですか。そういうこともあり、やっぱり家族をもつと『いつ家を建てるべきなのか』とか、『本当に今のまま生きていていいのだろうか』とかをすごく悩みます。

──家を建てるのは気になるね。
宮田さん:家を建てるとなると、正直今の自分ではまだまだ足りないと思うんです。それこそ、本当に家を建てるのであれば、当然レースは頑張るのは当然なんですが、だったらもっと他のこともやりたいと思います。

──他のこと? 副業的な?
宮田さん:はい。ぶっちゃけた話、自分がいつまでレースをできるかなんて分からないですし、この業界もいつまであるか分かりません。なので、どっちに転がっても大丈夫なくらいにしたいんです。僕はけっこう心配性なので、いつまでも親のスネをかじれるわけでもない。今は昔ほどかじっていないですが、でも両親がいるからこそ僕もここまでできているので、いつ両親の支えがなくなってもいけるくらいじゃないと。正直僕は奥さんに対してすごく申し訳ないなと思っています。奥さんのご実家も立派な経営者なので、お互いに実家の仕事を継げる立場なんです。

 なので、いい意味で他にはない人生を歩んでいる反面、僕がレーシングドライバーというアスリート業で、業種的には変わった業種をしていて、奥さんに対してはいつも家を空けているし、応援してくれているけどいつも心配していると思います。そういう部分で、僕は充実させているつもりだけど、やっぱりもっと恩返しができるくらいじゃないとダメだなと思っています。けっこうその部分の悩みが多いですね。そういう意味でも、人生設計というか、知り合いにビジネスをしている人がいたらいいなと思います。

──ビジネスねえ〜。いるかなあ?
宮田さん:他のGT500ドライバーの皆さんはどうなんですかね。たぶん僕が結婚するのが早すぎたというのがあるかもしれません。実は去年の6月にもう結婚していて、もうすぐ1年経ちます。だからレースに集中できているということもありますが、同じように結婚していて、大黒柱として家族を支えて活動している人で、なおかつレース以外のことをしている僕くらいの年齢のGT500ドライバーはいないんじゃないかなと思います。じゃあビジネスをしていますというドライバーも僕は知らないんですよ。

──そうねぇ。
宮田さん:GT300だと、例えば富田さんにしてもご実家が会社を経営しているという人はいるかと思いますが、そもそも他のプロとしてドライバーをやっていて、ビジネスをしている人を知らないんですよね。

──コソっとやっている人はまあまあいるんじゃないかな? それか、そんなことは気にしないでドライバー業を邁進しているか。
宮田さん:(阪口)晴南ってもう出てるんでしたっけ。

──2回目でもいいよ。
宮田さん:えっ!? 今までダメだったんじゃないですか?

──いや、『いいよ』とは言っていたけど、みんな『やっぱり止めます』みたいな感じになってたのよ。
宮田さん:そうなんですか? でもそういうこともすごく気になります。みんなどうやって考えているだろう。

岡山公式テストでの阪口晴南と宮田莉朋
2021年岡山公式テストでの阪口晴南と宮田莉朋

■お悩みは将来設計ということで

──まあ将来設計は大事といえば大事だが。
宮田さん:僕の奥さんはレースに批判的ではなく、すごく応援してくれるんです。ある意味『こんな女性がいるんだ』と思ったからこそ結婚したんですけど。僕が例えばヨーロッパでレースをするとなったら『じゃあヨーロッパで一緒に過ごそう』とか『むこうで家を建てよう』と言ってくれるくらいなんです。

 でも、実際ヨーロッパで過ごすとなったら、何を元にどうやって生きていくんだろう……みたいな感じです。稼ぎはレースしかないぞと。他の家族を持っている人は、同じ境遇になったり、例えば自分がレースに乗らなくなったとか、乗れなくなった、もうあまり無いとは思いますがまたコロナみたいなことが起こったときに、家族を持っている人はやっぱり仕事がないと生きていけないじゃないですか。

 どうやってその部分を考えているんだろうと思います。もう一度コロナ禍みたいになってレースがなくなるといったら、僕はけっこう厳しいです。シミュレーターやeスポーツで仕事をしていると言っても、リアルのレースほど稼いでいるわけではないんです。本当にみんなどうしているんだろう。

──なるほど。まぁ、端的に45歳のワタクシから言わせてもらうと『心配しすぎ』だと思うんだけど。もうちょっとザックリしていても良いんじゃないかなとは思う。
宮田さん:(笑)マジですか。そうですかね?

──こんな将来のこと考えてる20代なんかイヤだよ……(苦笑)。
宮田さん:本当ですか(笑)? 僕は本当に、この先20年くらい楽に生きられるくらいのことを探したいです。例えば『趣味でレースを始めました』という人は、僕からしたらその能力が欲しいです。だって趣味でレースができるのって最高ですよ。自分のお金でレースができて、私生活も困っていないから欲しい物も買うことができる。僕が例えば、“ドライバー”という能力を引き継いだうえでビジネスの能力を持っていたら本当の勝ち組だと思うんですよ。そういう意味での本当の勝ち組はF1ドライバーなんですけど、日本にいるだけでそういうことを考えている人がいたら本当に話をしてみたいです。

 ただ、残念ながら僕には友だちというものがいないし、友だちを作ることも苦手な部類です。本当におめでたいんですが、今年は晴南が結婚して、同い年でそういうことはどうしているんだろうと思っています。僕は結婚して1年経って落ち着いているし、この先いつ家をたてようとか考えていますけど。あと子どもができたとき、その子どもの将来も自分のなかでは決めています。……気になります?

──……気にしないようにしておく。
宮田さん:そんな! 普通ですよ。レーサーにさせたいだけです。

──“させたい”?
宮田さん:させたい。それは決まっています。でも、それは僕の父親に対しての恩返しという意味でレーサーにさせたいです。父親の夢がチーム監督としてレースをやってみたいというのがいちばんの夢で、僕に投資したお金がすごい金額なので、僕が恩返しをするのにお金は無理なんです。だったらその時間を恩返しの時間にしたいと思っていて、もし男の子が生まれたら絶対にレーサーにさせたいなと思います。

 奥さんは『まあいいけど、私はジャニーズに入れたい』みたいな感じなのですが(笑)、実現できるかは別として、子どもの将来なんかはむしろ考えやすいです。ただ、それを実現するというときには、やっぱりレースだけでは厳しいなと感じます。そういう意味では晴南や、最近では(福住)仁嶺とかはどういう風に考えているのかなと思います。『実家に近いところに住んだ方がいいんじゃない』とかはたまに話しますけどね。みんなどんな人生設計なのか気になります。

■お悩みはアスリート特有?

──じゃあ二度目の登場となる晴南に聞いてみましょう。
宮田さん:良いですか? 初の2回目。

──『笑っていいとも』だっていくらでも2回目なんてあったからね。
宮田さん:あったんですか?

──5〜6回出ている人もいるんじゃないかな(※2)。
※2:Wikipedia調べでは最多は和田アキ子さんの22回だそうで。
宮田さん:本当ですか? そういう意味では晴南もTOYOTA GAZOO Racingの【INSIDE GR】という動画で『結婚しました』ということも話していたので、本人はオープンな気持ちだと思います。

──ちなみ莉朋さんは今いくつになったんだっけ?
宮田さん:僕ですか? 22です。

──22でしょ。オレが22のときは大学で毎日飲み歩いていたからね。
宮田さん:たぶん僕世代はみんなそうです。でも結構僕の周りは結婚している人が多いです。僕の友だちにサッカー選手がいて、年齢はひとつ上なのですが一昨年くらいに結婚していてJ2に出ています(※3)。彼も『いつまでアスリートを続けられるか』というような同じ悩みを抱えています。
※3:サッカーJ2リーグ・ザスパクサツ群馬のフォワード・山根永遠選手

──でもそれはアスリート特有の悩みだろうね。いや〜、世の中の22歳はもうちょっとなんか……なあ。
宮田さん:早く結婚して落ち着きすぎてしまいましたかね。でも少なからず僕が結婚したのもレースが好きだし、レースが自分のなかで収入源でもあるし、それが自分にとっても幸せだから、やっぱりレースに集中したいというところから始まって、それを思っていたが故に今の奥さんと出会いました。

 レースをすごく応援してくれるし、奥さんも学生時代はスポーツをしていた人なので、スポーツに対してはすごく理解してくれています。お互いにペット大好きですし、そういう部分で全部が良い具合に歯車が合った感じですね。

 でも、それがずっと続くわけじゃないと悩みますね。家に帰ってもYouTubeでレースを見たりしますけど、青汁王子なんかを観てしまいます。

──いかに資産を貯めるかみたいな動画を見ている訳だ(笑)。
宮田さん:そうですそうです(笑)。『会社経営とは』とか『日本で稼ぐのは簡単』みたいな動画を見てしまいます(笑)。でも、ドライバーは日本で言うサラリーマンとは少し違うと思います。そういう意味ではビジネスにもチャレンジできると思いますが、そのためには一歩踏み込む勇気も必要ですし、家族を持つと、その踏み込む勇気も失敗も成功も関係なしにやらないと、成功したらいいですし、でもやらずに過ごすと結局後悔が生まれるので、そこはいつも悩みます。

──なんつうか、しっかりしてらっしゃいますよ。宮田さんは。
宮田さん:そういう意味ではレースを一生懸命できます。サッシャともそういう話をします。サッシャの実家はホテルを経営しているので※4。

 でも『サッシャの家はお金持ちだからいいじゃん』と言うと『フェネストラズ家はお金持ちだけど、サッシャはお金持ちじゃない』と言われました(笑)。いつかは経営をしなくちゃいけないという話はしますけど。だからサッシャとの会話も意外とそういった話が多いです。

──とりあえず理解したのは、何かやっぱり“層”が違うね。
宮田さん:仲良くできる人は同い年ではないです。ジュリアーノと仲が良いのも、イタズラは多いけど根は大人っぽいからレースにしても本気の相談ができるんです。だからジュリアーノも僕に相談してくるのだと思うんです。スーパーフォーミュラ・ライツのころは他のドライバーに相談していることを見たことないです。『あのクルマのカラーリングがカッコいいね』くらいしか聞いたことなくて、走りとかはいつも僕に聞いていたイメージです。レースに対する姿勢は僕もそういった方が好きです。そういう部分では、仲が良いのは先輩ドライバーか外国人の同い年ドライバーが多いですね。とりあえず次回は晴南で。同世代でまわします。

──はい。オッケー。今回長すぎた! ふだんだいたいこの取材20分で終わるんだけど、今回37分だよ。
宮田さん:たぶん僕が深く考えすぎているからですかね。悩みなんてそんなもんですよ!

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 というわけで、次回はこの連載初の2回目、阪口晴南選手です。ちなみにこの宮田選手の取材の後、阪口選手にすぐ取材させていただきました。回答はいかに……? 次回もお楽しみに!

2022スーパーGT第2戦富士 KeePer TOM’S GR Supra(サッシャ・フェネストラズ/宮田莉朋)
2022スーパーGT第2戦富士 KeePer TOM’S GR Supra(サッシャ・フェネストラズ/宮田莉朋)