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 北米発の新生ラリークロス選手権として、2022-23年の年またぎによるグローバル戦へと発展を遂げた『Nitro Rallycross(ナイトロ・ラリークロス/NitroRX)』第2戦が、北欧スウェーデンのストレングネース特設トラックで開催され、ドレイヤー&レインボールド・レーシング・ウィズ・JCレーステクニーク(DRR JC)から参戦のアンドレアス・バッケルドが、開幕戦ウイナーの僚友ロビン・ラーソンを従えシリーズ初優勝。この結果、DRR JCは全8台出走のファイナルで1-2-3-4-5フィニッシュを達成し、初参戦のWorldRX世界ラリークロス選手権“4冠王者”ヨハン・クリストファーソンも3位初表彰台を獲得している。

 北米開催の選手権で初代シリーズチャンピオンにも輝くトラビス・パストラーナを発起人に、創設2年目となる2022年から当初計画どおり“グローバル・チャンピオンシップ”へと変貌を遂げたNitroRXは、モーター出力約800kW(約1070PS)、最大トルク1100Nmを誇り、0-100km/h加速はわずか1.4秒をマークするワンメイク・フルエレクトリックSUVによる『グループE』クラスを最高峰に据えた。

 この新開発電動車両の『FC1-X』は「世界でもっとも速く、もっとも有能なラリークロス車両」というコンセプトを具現化させたものとなり、350mmの最大ホイールトラベル量により抜群のトラクション性能も発揮。前述のとおり1000PSを超えるピークパワーにより、最高速は180マイル(約290km/h)をマークするなど、既存のどんなカテゴリーとも異なる性能領域に達している。

 参戦チームも、北米の雄DRRとラリークロス界の強豪であるJCレーステクニークとジョイントしたDRR JCが、2021年のEuroRX王者に輝くバッケルドとラーソンによりモンスターエナジー・RXカルテルのエントリー名で2台体制を敷き、進境著しいジャマイカ出身ドライバーのフレイザー・マッコーネルと、WRC世界ラリー選手権のWRC2に参戦するヒョンデJr.配下のオーレ・クリスチャン・ベイビーに加え、同ラウンドには言わずと知れた世界チャンピオン、クリストファーソンを招聘しての5台体制を構築した。

 さらに名門オルスバーグMSE ABはニクラス・グロンホルムとオリバー・エリクソンの実力者を起用し、エキサイトエナジー・レーシングとして参戦のオリバー・ベネットは、自身の僚友に元F1王者ジェンソン・バトンを擁立して話題を呼んだものの、バトンは「事前の契約上の約束」を理由に3戦の欠場を表明。代わってWRC世界ラリー選手権5勝を記録するクリス・ミークが開幕に引き続いての代役を務める。そして北米からはチャンピオン率いるバーモント・スポーツカーが、パストラーナとコナー・マテルのタッグで挑んでいる。

NitroRX初の海外ラウンドとして実施されたスウェーデンのストレングネース特設トラックには、同国らしく大勢のファンが集った
ジェンソン・バトンの代打として開幕戦に続きドライブしたクリス・ミークだが、トラブルで初日を失うことに
Supercarクラスにもエントリーしたジャマイカ出身ドライバーのフレイザー・マッコーネルは、『グループE』でも大健闘の4位に

■クリストファーソン、初参戦での表彰台を死守

 豪華11名の顔ぶれで初日土曜に用意された2回のプラクティス、そして“バトル・ブラケット”と称されたノックアウト制の3ヒートとブラケットファイナルが実施されると、開幕戦ファイナルではアクシデントに沈んでいたミークが、土曜をソフトウェアの問題でまったく走行することができず。日曜ぶっつけ本番といきなりのビハインドを背負う事態に陥る。

 一方、レースウイークで対照的な活躍を演じたのはオルスバーグのエリクソンで、予選バトルブラケットのトップスポットを獲得し、日曜日のオープニングヒートでも勝利を飾ってみせる。

 日曜セミファイナルや敗者復活LCQを経て8台で争われたファイナルは、そのエリクソンをポールポジションに、フロントロウ2番手にバッケルド、2列目3番手にラーソンが続き、4番手には日曜ヒート1で2位、続くセミファイナル2でトップ通過を決めたミークが薄氷のファイナル進出。以下、マッコーネル、クリスチャン・ベイビー、マテル、そしてアクシデントに見舞われながらもギリギリの通過を果たしたクリストファーソンが並ぶグリッドとなった。

 その6周決勝では2番手のバッケルドが最高のスタートを切り、ポールのエリクソンをねじ伏せるようにターン1へと飛び込んでいく。その背後ではラーソンやミークがお互いのテールとノーズを潰す勢いで肉弾戦を繰り広げると、ポールシッターのエリクソンはコース終盤でマシンの異変からかわずかに失速し、ミークらとともに早めのジョーカーラップ消化に向かう。

 続く周回でエリクソンが、さらに続くラップでミークがマシンを止め、これでバッケルド、ラーソン、そしてクリストファーソンのオーダーへと変わった首位争いは、やがて2台ずつのデュエルへと展開し、先頭を行くモンスターカラーの2台が軽いコンタクトを伴いながらのバトルを繰り広げる。

 すると4周目に背後のラーソンとクリストファーソンが先にジョーカー消化へ向かい、続く周回で首位バッケルドが応酬。結果、リードを守ったバッケルドが1.963秒差のマージンを維持し、2戦目でのトップチェッカーを達成。2位ラーソンの背後では、本コース復帰時にマッコーネルとの激しい攻防戦を強いられたクリストファーソンが、ドアを擦り付けながらもターン1でのポジション争いを制し、初参戦での表彰台を死守した。

 こうしてDRR JC勢の支配が続くNitroRXシリーズ第3戦は、10月1~2日に母国アメリカはミネソタ州ミネアポリスでの開催が予定されている。

初参戦のWorldRX世界ラリークロス選手権”4冠”王者、ヨハン・クリストファーソンも3位初表彰台を獲得した
ファイナル序盤からランデブー走行となったDreyer&Reinbold Racing with JC Raceteknik(DRR JC)の2台
2021年のEuroRX王者でもあるアンドレアス・バッケルドが、開幕戦ウイナーの僚友ロビン・ラーソンを従えシリーズ初優勝を決めている