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 横断歩道で歩行者から「お先にどうぞ」とされたクルマがこれに応じて通過してしまうと……違反切符を切られる可能性があるということはドライバーとしては一大事。クルマで走行中に横断歩道で、お年寄りなどが「お先にどうぞ」のジェスチャー。これにドライバーとしては応じていいのか、いけないのかどうかはやはり気になるところ。

 だが、警察側の見解としては歩行者側の事情を聴取する必要性もあるとのこと。これに対し、実際問題としてドライバー側はどのようにすべきなのだろうか。大いに悩まされる問題だが、国沢光宏氏が指南する。

文/国沢光宏、写真/ベストカー編集部、Adobe Stock

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■地方局が島根県警に聞いたら、「歩行者側に事情を聞かないと判断できない」

歩行者が横断歩道を渡ろうとしていたら当然、クルマ側が停止して譲らねばならないということは全ドライバーの鉄則であるのは言うまでもない

 歩行者横断妨害の拡大解釈が大きな波紋を投げかけている。「歩行者に道を譲られても通行したら違反」みたいなことを書く記事も出回っているためか、警察は強気。

 何の事情も考えず、「横断歩道に人がいたらとにかく切符切るもんね!」という流れ。そんななか、明らかに道を譲っている動画を紹介しながら警察に切り込んでいるYouTubeは120万アクセスと話題になっている。

 歩行者横断で止められたらどう考えるべきか? まず必ず必要となってくるのはドライブレコーダーだ。証拠がないと警察にすべてデッチ挙げられてしまう。最近は明らかに「おとり捜査」と思える動画も多く、警察側が準備した証拠を挙げられ、行き詰まる。

 ドライブレコーダーを持っていないなら、すぐにでも導入していただきたい。もちろん前方だけでいい。1万円も出せばけっこう性能の高い製品が買えます。

 ふたつ目は「被害を受けた人の特定」をしてもらうこと。歩行者横断妨害は、被害者がいて成立するものだからだ。地方局の山陰放送は、ドライバーが歩行者から「お先にどうぞ」された場合の違反について島根県警交通部の野坂保則さんに取材しており、「本当にその歩行者がどうしたかったのかを詳しくお尋ねしたうえでなければ判断することは難しいと思います」。

 道交法を考えたら100%正しい解釈です。島根県警しっかりしてる!

■警察は拡大解釈で「横断歩道に歩行者がいたらクルマは止まりなさい」の一点張り

道交法では、横断歩道にはいつでも停止線で止まることができる速度で近づき、歩行者が渡ろうとする意思を見せた場合は停止して譲るとだけ定めている(AdobeStock@xiaosan)

 歩行者横断妨害は「横断歩道を渡ろうとする歩行者に対する加害性」が違反の理由だ。道交法を読むと、横断歩道に「いつでも停止線で止まれる速度で接近」し、歩行者が渡る意思を見せたら停止して譲るよう定めているのみ。歩行者にとって危険な行為じゃなければ違法性すらない。

 しかし、警察は「とにかく横断歩道の近所に人がいたら止まって譲れ!」の一点張り。これ以上の拡大解釈などないほど。

 警察の解釈が正しいなら、横断歩道に人がいたら赤信号と同じ。クルマがいなくなったらノンビリ渡ろうと考えている人の自由意思などない。譲ったり&待っていたりしたらクルマの窓が開いて「とっと渡れ!」と怒鳴られることになるだろう。

 はたまた意地でもクルマを先に行かせたい、と思うガンコな歩行者なら「どうぞどうぞどうぞ」になる。クルマは譲ったら違反だからやはりケンカになりそう。

■歩行者横断妨害は過剰な取り締まりが顕著

違反件数は総数が減っているのに、歩行者横断妨害のみ増えているという背景には過剰な取り締まりがあることを筆者は指摘する

 そうそう。YouTubeはどうなっているだろうか? 警察に対するファーストコンタクトでは木で鼻をくくったような対応をされていた。最新情報だと警察から「是正したい」というオファーを出されたという。

 つまり、この件はなかったことにしましょう、ということだ。警察、もっと突っ張るかと思ったら、案外だらしないです。このままだと「歩行者に譲られたら行ってよし」になる。

 もちろん、それが正しい解釈なのだけれど、すでに拡大解釈して切符を切られているケース多い。もう少し突っ込むと、おとり捜査で歩行者がクルマに道を譲るケースもあるようなのだ。

 警察側の総崩れ状態なる可能性すらある。ただでさえ歩行者横断妨害は過剰な取り締まりが顕著。2021年は2020年と比べて違反総数で5.5%減っているのに、歩行者横断妨害のみ12.1%も増えている。

 違反件数が減っているなか、警察にとっちゃ大切な「しのぎ」の柱にしようとしているのだった。ここで総崩れになるとメンツの問題。ただ、ハッキリしたことは動画が残っており、弁護士を伴って警察に行けば「是正したい」ということになる、いい加減な違反ということ。

 もっといえば、おそらく裁判になったら公判を維持できないと警察側も認識しているんだと思う。繰り返すが超拡大解釈です。

■キップ切るだけでお金を取れるシステムは崩壊へ

筆者はゴールド免許所持ドライバー。正しい応対をしているのに歩行者横断妨害で切符を切られ、貴重なゴールド免許を失うのはあまりに馬鹿馬鹿しい話だ(AdobeStock@umarucha4678)

 ゴールド免許の私は歩行者横断妨害などしないけれど、もし歩行者から道を譲られたら「どうぞどうぞお先に!」と言う。それでも渡ってくれなければクルマから降り、頭を下げて「お願いします!」と頼む。

それでも渡ってくれないなら、しかたなく先に行く。そいつを見ていた警察官が歩行者横断妨害だと言って切符切ろうとしたら、完全否認します。歩行者に聞いて欲しいと言う。

 警察は「裁判になるぞ」と脅すだろうけれど、前述のとおり公判など維持できないのは明白だから、否認したら警察としちゃ起訴猶予か不起訴にするしかない。

 といったことを歩行者横断妨害で捕まった人がすべて主張したら、警察の交通取り締まり担当部署は不起訴や起訴猶予案件ばかりになり、大目玉を食らうことになるだろう。切符切るだけでお金取れるシステムが崩壊しかねない。

歩行者横断妨害で捕まったすべてのドライバーが裁判に応じるようになれば現在のような違反切符切るだけで自動的に反則金が取れる制度ごと崩壊?

 警察官僚は頭脳明晰でまともだ。国民の多くから不満が出れば、デタラメな歩行者横断妨害の拡大解釈は止めると思う。それには皆さんの怒りが必要。不満を表明しなければこのまんまです。

 と思っていたら今年7月29日、弁護士の藤吉修崇氏がTwitter上で歩行者応談妨害について警察側が撤回したことを公表した。 それによると、「警察署に行き、真摯に謝罪を受けました。 回答の要旨は以下のようなもので、今回は違反不成立。一時停止後に歩行者に譲られて進行した場合は違反にはならないと考えている。今後は現場の警察に指導徹底する。ドラレコは今後確認する。これまで撤回した例は少ない」とのことだった。

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