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 そろそろ耳にタコができている話題かとは思うが、「第2世代GT-R」の中古車相場が大変なことになっている。

 一番人気であるR34型スカイラインGT-Rは最安値でも約1200万円、最高値になると約3500万円という「……ところで誰が買うんだ?」という相場。

 そしてR32型GT-Rも最安値の個体こそ500万円前後だが、状態の良い個体は1200万円以上がザラとなる。さらに、昔はいまいち人気薄だったR33型GT-Rも800万~1000万円付近のゾーンが中心だ。いやはや……。

 そんななか「けっこう現実的なGT-R」だったのが、2007年12月に登場した“スカイライン”の冠が外れたR35型日産 GT-Rだ。

 ではR35型GT-Rの中古車相場はどうなのか? 数年前に300万円台後半から見つけることができたが、今では500万円台が最安値となっている。

 そこでその500万円台の激安GT-Rは買っても大丈夫なのか?買って安心できるのはいくらくらいからなのか、GT-R専門店に徹底取材した!

※本稿は2022年2月執筆のものです。記事中の中古車相場は執筆当時のものになります
文/伊達軍曹、写真/伊達軍曹、日産

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■R35GT-Rの進化と相場

VR38DETT型3.8L、V6ツインターボでその最高出力は当初480psだった。マイナーチェンジ後550psとなる

 R35GT-Rに搭載されているエンジンはVR38DETT型3.8L、V6ツインターボで、その最高出力は当初480ps。

 2008年12月からは微妙に上がって485psとなり、2010年11月のマイナーチェンジで530psに。さらに2011年11月発売の2012年モデルからは550psとなった。

 2016年7月に発売された2017年モデルではさらに全方位的な進化を遂げ、3.8L、V6ツインターボエンジンは、「GT-R NISMO」の技術を生かした気筒別点火時期制御の採用などにより570psをマーク。

 改良型6速DCTとの組み合わせにより、中速~高速域の加速はさらにスムーズになっている。

 これまでに販売されたR35型日産 GT-Rの主なグレードは下記のとおりだ。

●ベースグレード:いわゆる標準車。2016年7月の改良で「Pure edition」「Black edition」「Premium edition」に名称と内容を変更
●Spec V:2009年2月から2011年11月まで販売された、「ハイギヤードブースト」やブレンボ製カーボンセラミックブレーキ等々を採用したグレード
●Club Track edition:2010年7月に受注受付が行われたサーキット走行専用グレード
●EGOIST:2010年11月のマイナーチェンジ時に発売された上級グレード
●NISMO:2013年11月に発表された、レース活動での知見を生かしたモデル。VR38DETTエンジンに「GT3タービン」を搭載することで最高出力は600psに

 このほかにもさまざまな特別仕様車があるわけだが、キリがないのでそこは省略し、直近の「年式別中古車相場」を見てみることにしよう。

●2007年式:550万~1250万円
●2008年式:560万~1600万円
●2009年式:650万~1800万円
●2010年式:700万~2500万円
●2011年式:800万~1100万円
●2012年式:750万~1000万円
●2013年式:900万~1200万円
●2014年式:930万~1100万円
●2015年式:1000万~1600万円
●2016年式:1100万~1700万円

 2017年式以降は流通量が極端に少なく、価格も「ASK」となっているものが大半であるため、相場は一応、「不明」ということにさせていただく。

 実際には2018年式のPure editionで1500万円前後となる場合が多いようだ。

 だがそれにしても……R35型GT-Rも高くなったものである。

 いや、2011年モデルからの後期型は以前から高かったわけだが、前期型であれば、今から約1年前の調査では「車両300万円台」からR35型GT-Rを見つけることはできた。

 それが、その後のたった約1年で「最安値でも500万円台」という相場に変わってしまったのだ。いやはや……。

 とはいえ車両500万円台であれば、日産 GT-Rという車のクオリティから考えれば“割安”ととらえることはでき、身の回りのさまざまなモノを質屋に売り払えば(?)買えなくはない気もする。

 R34型GT-Rの3500万円というのは天地がひっくり返っても(筆者には)出せない金額だが、500万円台ならぎりぎりイケるはずなのだ。

●500万円台のR35型GT-Rの中古車情報はこちら!
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■スポーツカー専門店『GTNET埼玉』に取材

底値圏のGT-R=500万円台のR35型GT-Rとは、はたして買っても大丈夫なのか? 筆者はスポーツカー専門店『GTNET埼玉』へ向かった

 だが問題は、「底値圏のGT-R=500万円台のR35型GT-Rとは、はたして買っても大丈夫なシロモノなのか?」ということだ。

 買ったはいいが中味はボロボロで、さらには故障続きで、修理代をいくら用意しても足りないみたいなことになるのであれば、いくら安めに買えたとしても意味はないのである。

 ……実際のところはどうなのか?

 そのあたりを確かめるため、筆者は埼玉県さいたま市のスポーツカー専門店『GTNET埼玉』へ向かった。

●スポーツカー専門店「GTNET埼玉」ホームページはこちら!

――ということで『GTNET埼玉』店長の川本雄一さん、いきなりですが「500万円台のR35型GT-R」ってぶっちゃけどうなんでしょう? 買っても大丈夫なものなんでしょうか

川本店長:うーん、少なくとも当店ではお薦めしていませんね。

――その理由は

川本店長:というのも、車両価格500万円台のR35型GT-Rは「買って即メンテナンスが必要になる」という場合がほとんどなんですよ。

――具体的にはどのあたりのメンテが必要になるんですか

川本店長:まずタイヤはほぼ絶対に交換しなくてはなりませんし、それに加えてフライホイールハウジングのガタを修理して、さらにブレーキローターも買って即、交換することになるでしょうね。

――あ、そうか。そういった部分の交換がされていないままだからこそ、再安値の物件は最安値なわけですね

川本店長:そうなんですよ。そしてGT-Rというのは部品代が高い車ですから、そのあたりを交換するとすぐに50万円から100万円ぐらいはかかってしまいます。

そのため、底値の個体を狙っても意味がないというか、それなら最初からもっといいやつを買ったほうがおトクといいますか……。

――なるほどぉ……。そういえばGT-Rはすべての部品が高いですからね。GT-Rの推奨タイヤって、4本交換するといくらぐらいかかるんでしたっけ

川本店長:ディーラーさんで交換するとなると50万円ぐらい、当社で交換する場合でも30万円ちょっとはかかりますね。

――ううむ……。

交換するとなると、専門店でも30万円以上はかかるGT-Rの推奨ランフラットタイヤ。GT NET埼玉が販売するこの2008年式Premium editionのタイヤはまだまだ大丈夫

川本店長:そのほかにも最安値圏の個体は、R35GT-Rの定番的な弱点といえる6速DCTが奇数ギアにしか入らなくなってしまう可能性を抱えていたり、マルチファンクションディスプレイの画面が赤茶けた感じになってしまっていたり、メーターのLEDバルブがあちこち切れてしまっていることもなくはないと思います。

写真は同じく2008年式Premium editionのメーター回り。このメーターは問題なしだが、LEDバルブが切れてしまい、文字欠けを起こしている前期型GT-Rの中古車も多いという

――ちなみにGT-Rの6速DCTって、修理するとなるといくらぐらいかかるんですか

川本店長:分解修理をする場合、軽度の故障であれば40万~50万円ぐらい、重症の場合は100万円少々かかるとお考えください。

――ちょっとシャレになりませんね。

川本店長:ですから、最初の「500万円台のR35型GT-Rは買っても大丈夫なのか?」というご質問に対するお答えは、「やめておいたほうがいいでしょう」ということになるんです。

――ううむ。では今、だいたい、いくらぐらいを見ておけば「悪くないコンディションの前期型GT-R」が買えるんでしょうか? ……やっぱり1000万円ぐらい出さないと無理ですか

川本店長:いえいえ、車両価格で600万円台半ばから700万円ちょいぐらいを目安にしていただければ、「買って即メンテナンスが必要になる」というわけではない、普通に悪くないコンディションのR35型GT-Rをお探しいただけますよ。

――たとえばこの2008年式Premium edition、走行5.4万kmで678万円という中古車とかですね

GTNET埼玉にて販売中(※執筆当時)の2008年式GT-R Premium edition。走行5.4万kmのワンオーナー/禁煙車で、価格は678万円
同物件のインパネまわり。普通にキレイなコンディションだ

川本店長:はい。あくまで一例ですがこの個体であれば、買ってすぐにタイヤとブレーキローターとフライホイールハウジングを交換しないと……みたいなことにはなりません。

――内装も、もちろん「新車同然!」というわけではないですが、十分キレイですね。

川本店長:ありがとうございます。そしてR35型GT-Rというクルマは、エンジン本体はさすがに手組みだけあって非常に頑丈ですし、補機類も特に弱いということはありません。

それゆえ前期型の中古車であっても、先ほど申し上げたとおり「車両価格600万円台半ばから700万円ちょいぐらい」を目安に探していただければ、ある意味普通の乗用車に近い感じで問題なくお乗りいただけるものなんですよ。

――なるほど、それはいいですね

■車体が安くても消耗品は高価なまま

川本店長:ただ……。

――ただ

川本店長:コンディションの良い個体をお買いになったとしても、それなりに維持費がかかる車であることは間違いありません。当店で換える場合でも30万円以上はかかる推奨タイヤは、街乗りメインな場合は2万km持ちません。なかには1万kmぐらいで要タイヤ交換となってしまうお客様もいらっしゃいます。

――泣いちゃいますね……。

川本店長:そのほかブレーキパッドも、普通の車は1万円ぐらいでフロントのパッドを純正相当品に交換できますが、GT-Rの場合は4万円から5万円ぐらいはかかります。

――うむう……。

川本店長いわく、Premium editionに標準装備されていた「BOSEサウンドシステム」のスピーカーが壊れてしまっている中古車も多いとのこと。購入時はラジオをONにするなどして、スピーカーの作動状態も確認しておきたい

川本店長:そういったメンテナンスフィーを受け止める覚悟がおありならという条件付きではありますが、今お薦めできる「手頃な日産 GT-R前期型中古車」の相場は、車両500万円台ではなく「600万円台半ばから700万円ぐらい」であるというのが結論となります。

――なるほど、話の流れとしてめちゃめちゃよくわかりました! 私も、もしも買うのであればそのあたりのゾーンに注目したいと思います。本日はありがとうございました!

川本店長:いえ、どういたしまして!

●600万円半ば~700万円台前半のR35型GT-Rの中古車情報はこちら!

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