このC5は、シトロエンらしくふんわりとしたものなのだろうか。シトロエンC5エアクロスは、内外装ともに洗練され、これまでと同様に穏やかな雰囲気を醸し出している。レポート。
最近は何でもスポーティで機敏になるのが当たり前で、75馬力のサブコンパクトカーでもミニポルシェのように謳歌することができる。しかしこの4.50mのSUV、シトロエンC5エアクロスは、それとはまったく異なるスタンスの乗り物だ。
「C5エアクロス」はデビューした2018年から同じボディの感じを保っている。そして今、ちょっとした改装の時期が訪れた。フロントは丸みを帯びた形状から角張った形状に、リアはLEDライトのデザインが変更された。インテリアでは、ダッシュボードの2つの吹き出し口の間に設置されていた8インチのタッチスクリーンを10インチに変更し、フランス車らしいデザインに仕上げられている。
その乗り心地は自由に浮いているように感じる。その下には、ナビゲーション、マルチメディア、電話などのショートカットキーを配置している。残念ながら、コントロールパネルは従来と同じ高さにあり、大音量&静音用のロータリーコントロールや、その横にあるフロントウィンドウ&リアウィンドウヒーターのボタンは一見しただけではわからなく、使いにくいと思う。
130馬力の3気筒エンジン
もうひとつの新機能として、8速オートマチックは大きなセレクターレバーではなく、ミニノブで操作するようになった。その隣には、スタート&ストップボタンがある。
試乗車は「エアクロス」の兄弟車「グランドランド」でもお馴染みの3気筒、130馬力の1.2リッターだ。コンパクトなSUVに3つのシリンダーで滑らかな走行は可能なのだろうか? その部分に関しては、実によくできているといえ、実際に230Nmのトルクは、スムーズに泳ぐのに十分だ。
私は個人的に、こういうふんわりとした感じが好きだ。ステアリングやシャーシは、最高の快適性を実現するために設計されている。つまり、短い霜柱や水の波紋の中に、たくさんの幸福があるような優しい感覚ということだ。
2022年9月に市場投入
従来通り、価格は32,550ユーロ(約455万円)からだが、質感は向上した。例えば、アームレスト上部の樹脂部分にはソフトタッチ、その下の棚板にはフェルト、トランク内のサイドパネルにはカーペットを採用し質感アップに貢献している。
市場投入は2022年9月で、131馬力のガソリン車とディーゼル車がある。多くの人は、システム出力224馬力のプラグインハイブリッド43,350ユーロ(約606万円)を選ぶだろう。
テクニカルデータ&価格: シトロエンC5エアクロス ピュアテック130
• エンジン: 3気筒ターボ、フロント横置き
• 排気量: 1199cc
• 最高出力: 131PS@5500rpm
• 最大トルク: 230Nm@1750rpm
• 駆動方式: 前輪駆動/8速オートマチック
• 全長/全幅/全高: 4500/1859/1688mm
• 乾燥重量: 1,505kg
• ラゲッジコンパートメント容量: 580~1630リットル
• 0-100km/h加速: 10.3秒
• 最高速度: 188km/h
• 燃費: 15.3km/ℓ
• CO2排出量: 147g/km
• 価格: 36.250ユーロ(約455万円)より
結論:
今回のマイナーチェンジは、特にマルチメディアの面で「C5エアクロス」に良い結果をもたらしている。この車は4.50mクラスのコンフォートSUVで、レースではなく、のんびりゆったりしたライドを望んでいる。
【ABJのコメント】
「シトロエンC5 エアクロス」も早いもので、マイナーチェンジの時期を迎え、エクステリアデザインにも変更を加えられた。マイナーチェンジ以前のモデルは威圧感のなさとシトロエンらしいデザインであることは評価できたが、なんとなくカバを連想させるようなずんぐりむっくりな、フロントデザインであったことも事実で、そう感じたデザイナーも社内にいたのだろうか、フロントデザインはかなりシャープなものとなった。
もっともその部分よりも気になるのは、さまざまな内容の改善と、エレクトロニクスデバイスなどを含んだ部分のアップデートであることは言うまでもない。昨今のシトロエンはそういう部分にも最先端の技術を投入しているからこそ、日進月歩な技術部分を止まることなく改良していく必要が生まれてしまうのである。それ以外のほかの根本的な部分は、「シトロエンC5」が本来持つ、ふんわりのどかな乗り味はそのままであるようであることがうれしい。シトロエンはそうでなくっちゃと思うような評価であったことに安堵した。
しかし今やこんな大きなディメンションの自動車が1.2リッター3気筒とは、時代も変わったものである(一昔前なら2リッター~2.4リッターくらいが標準なパワーユニットであるはずの大きさである)。そういう観点からみても、まだまだ内燃機関には可能性が残っているんじゃないだろうか、とつい思ってしまう。(KO)
Text: Andreas May
加筆: 大林晃平
Photo: Stellantis N.V.