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東京・吉祥寺の老舗のお米屋さん「金井米穀店」が、ツイッターで話題となっている。同店のツイッターの内容を「ヘイトスピーチ」と捉えた人々が、7月30日に抗議活動を行ったという。抗議活動をめぐって多くの意見があがり、8月1日にも「#金井米穀店を守れ」がトレンド入りした。一体何が起きたのか、この日、現場を訪れた。

騒動のあった「金井米穀店」(筆者撮影)

騒動の発端は、7月22日に投稿された同店のツイート。井の頭公園で外来種の水草が急増しているというニュースを提示した上で、こうつぶやいた。

侵略的外来種という存在を知ると、いま人間社会でも同じことが起こっていることに気づく。昨年末、武蔵野市で議論された外国人住民投票権、もし可決されていたらと思うと背筋が凍る

吉祥寺の位置する武蔵野市では昨年末、外国人に日本人と同じ条件で住民投票権を認める条例案が、市議会で否決されていた。

同店のツイートについて噛みついたのが、差別反対を掲げる組織「ノーヘイト武蔵野」。「吉祥寺の街はヘイトスピーチを許しません。プラカを掲げて抗議の意思を示しましょう」と7月30日に抗議行動を行うようツイッター上で呼びかけた。

抗議行動は実施され、店舗前には「TOKYO AGAINST RACISM」と印刷されたボードを掲げる人などが現れたという。

金井米穀店のツイートは外国人を「侵略的外来種」に喩えており、不快感を抱く人や不適切だと考える人もいるだろう。だが、「ヘイトスピーチ解消法」の判例でヘイトスピーチと認められている事例は、在日コリアンの個人を対象に「悪性外来寄生生物種」「在日専用の犯罪用氏名」「チョーセン・ヒトモドキ」などと書き込んだケースなど、極めて直接的で強い差別表現を繰り返しているものだ。金井米穀店のツイートは、表現の自由の範囲と言えるのではないだろうか。

「やり過ぎ」「営業妨害」反発も

問題の発端となった「金井米穀店」は、吉祥寺駅北口から商店街を抜けて、10分ほど歩いた住宅街の一角にある。年季の入った渋い木造の建物で、いかにも老舗という雰囲気。店員に話を聞いたが、取材はNGとのことだった。

ネットに出ている通りです。弁護士とも相談していますが、取材は受けられません。

現場に入ったこの日は、平日とあってか抗議者の姿はなかった。30日に行われた抗議活動は、写真を見る限り、数人の抗議者がプラカードなどを持って店の前の公道上に立っている程度のように見える。

ノーヘイト武蔵野の行動についてネット上では「やり過ぎ」「営業妨害」「威力業務妨害」などと強く非難する声が目立つが、こちらのベリーベスト法律事務所 京都オフィスを見ると、「威力業務妨害罪」については

大声で怒鳴る、過剰に暴れる、危害を加える内容で脅すといった行為のほか、強い勢いで何度もクレームを繰り返すといった行為

が相当すると指摘をしている。この点、ネットの発信を見る限りでは、買い物に訪れた人に対して実力を行使して妨害をしたとまでは確認できておらず、デモ側は「合法の範囲で表現の自由を行使した」との認識なのだろう。

ただし、ノーヘイト武蔵野の行動に多かれ少なかれ嫌悪感や威圧感を覚える人はおり、ネット上では「通報した」との書き込みも相次いでいる。30日午前に現場を訪れた自民党の渡辺友貴杉並区議は「早速、営業妨害を試みる方がいらっしゃいましたが、警察と思われる方が対応されていました」とツイートしており、警察も事態を注視しているようだ。

SAKISIRU編集部は警視庁や武蔵野市役所にも今回の騒動について見解を取材しており、回答があり次第、改めて紹介したい。

なお、「ノーヘイト武蔵野」は今週末にも2時間の抗議活動をする意向をツイートしており、それに反発する人たちも続出している。当事者の金井米穀店のツイッターは現在非公開になっているが、店主は当面発信を控える意向であると示す画像がネットに流れている。いずれにせよ、穏やかに解決するように願いたい。

武蔵野市を含む東京18区を地盤とする自民党の長島昭久衆院議員は、ツイッター上で騒動を提示されると「海外出張中も地元の皆さんと連絡を取り合いながら、最善の対応を心がけてまいりました。引き続きそのように対応します」と答えていた。