政界を勇退することから、7月の参院選に出馬しなかった二之湯国家公安委員長について、岸田首相が次の内閣改造まで民間人閣僚として続投を決めたことに対し、立民の西村幹事長が先ごろ「警察を管理下に置く方が民間人では荷が重い」と批判した。
しかし立民の源流である民主党は政権与党時代、防衛相や法相といった要職を民間人に起用した経緯があり、ネットでは、西村氏の発言の整合性が問われている。
西村氏の発言があったのは、2016年に当選した議員が任期満了を迎えた2日後の先月26日。時事通信によると、参院選に出馬しなかった二之湯国家公安委員長と金子農相について内閣改造まで続投することについて、西村氏は記者団に「警察を管理下に置く方が民間人では荷が重い。(国会議員の)バッジが付いていない方がやるのは問題がある」と述べた。
この日は磯崎仁彦官房副長官の記者会見で、民間閣僚としての起用継続が話題になっており、西村氏は報道陣の問いかけに素直に応じてしまった可能性があるが、民主党の野田政権では2012年6月の内閣改造時に、自衛隊OBの森本敏氏を史上初めて防衛相に民間登用している。西村氏の言葉をそのまま踏襲すると、森本氏が著名な安全保障の専門家として知られるとはいえ、「自衛隊を管理下に置く方が民間人では荷が重い」という批判を招きかねない。
また、前任の菅直人政権時代の2010年7月には、参院選で落選した千葉景子法相を9月の政権退陣まで民間閣僚として続投させてもいる。しかも千葉氏は参院議員の任期が切れる前日の7月24日、死刑執行に署名している。
その4日後の執行時には、千葉氏は現職法相として初めて東京拘置所での死刑執行に立ち会って話題になったが、署名時はまだ国会議員の大臣だったとはいえ、これも「死刑執行を決めて見届ける責務は民間人では荷が重い」という批判の余地がないとはいえない。
憲法68条では、国務大臣の過半数は国会議員とすると定められているが、民間人の起用は法的には問題なく、先述の森本氏まで戦後24人が就任されている。小泉政権の竹中平蔵氏は民間から経済財政担当相に入閣したが、途中から参院議員となり大臣職を続けた。