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Image:Koshiro K/Shutterstock.com

世界最大手のファウンダリー(半導体受託製造企業)、TSMCのMark Liu(劉徳音)会長は、台湾と中国のいかなる紛争であれ、関係国すべてにとって敗北のシナリオになると警告している。

TSMCは地理的には中国に近い台湾にある一方で、ビジネス的にはアップル等の米国企業からの最先端チップ製造を請け負っており、米中対立や中国が台湾へ武力侵攻するリスクの矢面に立たされている。

そんななかLiu会長は米CNNのインタビューにて、中国がTSMCのチップ製造施設を武力で奪おうとしても、真の競争力は信頼と協力の原則に基づくグローバルなサプライチェーンにあるという司会者の意見に同意している。

ここ数年、TSMCは世界の半導体産業において存在感を増しており、受託製造されるチップの大半を同社が供給している。また、世界でも数少ない高度な製造プロセスを誇る企業でもあり、その施設の評価価値も高く、IT業界の発展に欠かせないことは誰もが首肯するはずだ。

Liu氏は、戦争は全ての面で問題を起こすだけであり、関係者全員にとって負け戦の局面になると指摘。さらに平和であればすべては競争で解決するとして、実業界の人々は誰も戦争が起こるのは見たくない、なぜまた新たな罠に飛び込んでしまうのかと疑問を呈している。

ここでいう「中国の台湾侵攻は、全員が負け戦」とは、他の識者も予想していることだ。最近の日本経済新聞の記事でも、台湾有事の際には鎖国状態への逆戻りや経済制裁により、世界の富350兆円が蒸発すると見積もっていた

さらにLiu氏は、台湾が中国に近いという理由だけでTSMCが差別されてはならず、全体としてフェアプレイであるべきとも付け加えている。

これはおそらく、米国でのCHIPS法(Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors for America Act)の動きを指しているのだろう。中国との半導体競争を強化するために520億ドル以上を投じる法案だが、その3分の1近くを米インテルが獲得し、TSMCのアリゾナ工場は優先されない可能性が報じられている

中国本土の労働力と米国の市場を最大限に活かしてきたTSMCだが、そうした利点をもたらした「米中の狭間にあること」という環境が、今後は重荷となっていくのかもしれない。