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 2022年7月15日、トヨタは16代目となる新型クラウンを発表した。発売開始は2022年秋を予定している。16代目の新型クラウンは、従来までのセダン専売という位置付けから、大きく路線変更が図られ、ボディは4タイプを展開する。1955年の初代クラウンの登場以来、これまで15世代、約70年余に及ぶクラウンの長い歴史の中でも、最大の変革といって過言ではないだろう。

 パワートレインが従来までのFR駆動から決別したことも、新型クラウンの大きなトピックスだ。全モデルで4気筒の横置きエンジン+モーターを採用し、リヤ側にも駆動モーターを組み合わせるハイブリッド4WD車になる。そのため、往年のクラウンファンが気になるだろう“クラウン=FF”という構図には当てはまらないが、長年にわたって後輪駆動にこだわっていたクラウンとしては、革命的な変化だろう。

パワートレインは、THS IIを用いる2.5リッターのハイブリッドと、ターボエンジンにeAxleが組み合わされる2.4リッターターボのデュアルブーストハイブリッドのふたつを設定。共にリヤに駆動モーターを配置する4WDモデルのみとなる。2.5リッターのハイブリッドは、扱いやすさと燃費に優れた普及仕様という位置づけだ。
パワートレインは、THS IIを用いる2.5リッターのハイブリッドと、ターボエンジンにeAxleが組み合わされる2.4リッターターボのデュアルブーストハイブリッドのふたつを設定。共にリヤに駆動モーターを配置する4WDモデルのみとなる。2.5リッターのハイブリッドは、扱いやすさと燃費に優れた普及仕様という位置づけだ。

 新型クラウンはプラットフォームも刷新され、トヨタ/レクサスの主力モデルに採用が進んでいるGA-Kの最新型を採用している。

 トヨタのGA系プラットフォームは、モデルごとに細かく設計できることが特徴で、新型クラウンのGA-Kもリヤ側は完全に新規設計となる。後輪側にも左右の操舵機能を持たせたDRS(ダイナミック・リヤ・ステアリング)が標準装着されるなど、シャシー性能の大幅向上も間違いない。

トヨタ・カムリやレクサスESに採用されているGA-Kプラットフォームを最適化。ボディにLSW(レーザースクリューウェルディング)構造や構造用接着剤を用いることで高剛性ボディに仕上げている。
トヨタ・カムリやレクサスESに採用されているGA-Kプラットフォームを最適化。ボディにLSW(レーザースクリューウェルディング)構造や構造用接着剤を用いることで高剛性ボディに仕上げている。

 目玉のハイブリッドシステムは、ふたつのタイプを用意。ベーシック仕様は、従来のTHS IIをベースに改良された2.5リッターのハイブリッド(システム最高出力234ps)。注目は、新開発2.4リッターターボにeAxleを組み合わせる2.4リッターターボデュアルブーストハイブリッド(システム最高出力349ps)だ。

 このeAxleは、モーター&インバーターにトランスアクスルを組み合わせた最新の電動駆動モジュールのことで、BEVのトヨタbZ4XやレクサスRXにも採用されている最新メカニズムとなる。

2.4リッターのターボデュアルブーストハイブリッドは、ターボエンジンとフロントモーターを直結させるTHS Ⅱとは異なるメカニズムを採用。トランスミッションは6速ATを組み合わせる。よりレスポンスに富んだ挙動が楽しめる、スポーツタイプのハイブリッドといえるだろう。
2.4リッターのターボデュアルブーストハイブリッドは、ターボエンジンとフロントモーターを直結させるTHS Ⅱとは異なるメカニズムを採用。トランスミッションは6速ATを組み合わせる。よりレスポンスに富んだ挙動が楽しめる、スポーツタイプのハイブリッドといえるだろう。

■3つのSUV系ボディは先代“アスリート”の系譜。セダンは王道のロイヤルを継承

 新型クラウンのなかで、最初に投入が予定されている新型クラウン・クロスオーバーは、セダンとSUVを巧みに融合させたボディデザインが特徴。ボディサイズは全長4930mm、全幅1840mm、全高1540mm。全高1540mmも最低地上高145mmという数値は、“SUV”と主張するには低めの設定となっている。後ろ姿はリヤに向かってなだらかにシェイプするファストバックスタイルで、顔つき以上に個性的なもの。

新型クラウンは左右のヘッドライトにバーライトで繋げ、大きく口を広げた開口部を配置している。従来までの堂々としたクラウンのイメージとは異なる、未来的なフロントフェイスを獲得している。
新型クラウンは左右のヘッドライトにバーライトで繋げ、大きく口を広げた開口部を配置している。従来までの堂々としたクラウンのイメージとは異なる、未来的なフロントフェイスを獲得している。

 新型クラウン・クロスオーバー以降、順次投入される3モデルは、2023年中の発売が予告されている。登場順は明示されていないが、プロトモデルを見る限り、ショートボディ(全長4710mm)の『スポーツ』とロングボディ(全長4910mm)の『エステート』のふたつのボディの正式発売は、かなり近そうだと予想される。

 『スポーツ』と『エステート』の2台は、ボディは各々が異なる独自のデザインが与えられているが、シャシーやメカニズム、パワートレインは『クロスオーバー』から水平展開される可能性が高い。

 『スポーツ』は高次元の走りを求める層向けに、『エステート』はレジャー&アウトドアなどを目的にしたファミリー層をターゲットにするなど、上手に棲み分けされることだろう。

新型クラウン・スポーツは全長4710mm、全幅1880mm、全高1550mm。ボディサイズからして2列シートになるだろう。“スポーツ”に相応しい走りの魅力に富んだ1台に仕上げられるだろう。
新型クラウン・スポーツは全長4710mm、全幅1880mm、全高1550mm。ボディサイズからして2列シートになるだろう。“スポーツ”に相応しい走りの魅力に富んだ1台に仕上げられるだろう。
新型クラウン・エステートは全長4930mm、全幅1880mm、全高1620mm。全長とホイールベースは、新型クラウン・クロスオーバーと同サイズ。
新型クラウン・エステートは全長4930mm、全幅1880mm、全高1620mm。全長とホイールベースは、新型クラウン・クロスオーバーと同サイズ。

 『セダン』は全長5030mm、全幅1890mm、全高1470mmとシリーズ最大のボディサイズを誇る。SUV系の3モデルが『クラウン・アスリート』の系譜を受け継ぐ存在としたら、新型クラウンの『セダン』は、王道のロイヤルシリーズを継承するイメージだ。

 新型クラウン・セダンのホイールベースは3000mmと、既存のGA-Kシャシー採用車を含めて最大級の長さになる。この設計面から推測すると、後席乗員の快適性を重視したショーファードリブンに仕立てられる可能性が高い。

 なお、新型クラウン・セダンはボンネットからピラー部にかけてのデザインが他の3モデルとは異なる。そのため、キャビンまわりのレイアウトやパワートレインは独自のシステムという可能性も十分に考えられる。

新型クラウン・セダンは全長5030mm、全幅1890mm、全高1470mm。新型クラウン・クロスオーバーと同じくリヤを絞り込む流麗なスタイリングを採用している。セダンの方がホイールベースが長い分だけ後席の居住性を重視した設計になることが予想できる。パワートレインの設定を含めて、今後の動向が気になる存在だ。
新型クラウン・セダンは全長5030mm、全幅1890mm、全高1470mm。新型クラウン・クロスオーバーと同じくリヤを絞り込む流麗なスタイリングを採用している。セダンの方がホイールベースが長い分だけ後席の居住性を重視した設計になることが予想できる。パワートレインの設定を含めて、今後の動向が気になる存在だ。

■新型クラウン・クロスオーバー購入ガイド

■新型クラウン クロスオーバーのグレード解説&購入ガイド

■車両価格:435万円〜640万円

 新型クラウン・クロスオーバーのグレードは、2.5リッターのハイブリッド車を5タイプ(X、G系)、2.4リッターターボハイブリッド車を2タイプ(RS系)で、合計7つで構成される。全車リヤ側にも駆動モーターが配置される4WD車のみとなる。

 最上級モデルのため、どのグレードも装備の充実度は十分以上。トヨタセーフティセンスやDSRなどは全グレードに装着されている。グレード同士の違いが出るのは、内装やシート仕様と、安全運転支援装備や利便装備の上級機能の設定。

トヨタセーフティセンスやアドバンスパークなど、最新の機能装備も抜かりなく充実。このあたりもクラウンらしい美点。
トヨタセーフティセンスやアドバンスパークなど、最新の機能装備も抜かりなく充実。このあたりもクラウンらしい美点。

 “G”(475万円)もしくは“RS”(605万円)の標準仕様系でも上級車らしい雰囲気が楽しめるが、カラーヘッドアップディスプレイやデジタルキーなどの先進装備も欲しいならば、ひとつ上の“Advanced系”を選択することをおススメする。

 なお先代クラウンは、2.0リッターターボ車と2.5リッターハイブリッド車に加えて、V6 エンジンを搭載する3.5リッターハイブリッド車も選べたため、車両価格が700万円を超えるグレードも存在していた。

 しかし、新型クラウン・クロスオーバーのなかで最も高いグレードはRS“Advanced”で、車両価格は640万円。一番の売れ線と目されるG“Advanced”でも車両価格510万円。最新メカニズムと装備がふんだんに盛り込まれている割りには、車両価格はかなり戦略的に設定されているといえるだろう。

 ちなみにAdvanced系以外のグレードの生産開始は、2023年1月とアナウンスされているので、現段階で注文したとしても納期は相当遅くなってしまう。トヨタのディーラーで試乗車が用意されるのは、2022年秋頃が目処になっているようだ。

『クロスオーバー』は横から見るとセダンだが、大径タイヤ(225/45R21)の採用やモール部にクラッディングパネルが配置されるなど、SUVらしい演出が施されている。
『クロスオーバー』は横から見るとセダンだが、大径タイヤ(225/45R21)の採用やモール部にクラッディングパネルが配置されるなど、SUVらしい演出が施されている。
ダッシュボード中央にモニターを配置する、落ち着いた雰囲気を持つキャビンは、全体的に質感の高さが感じられるつくり。内装色はブラック系とベージュ系を中心に4つの仕様を用意。
ダッシュボード中央にモニターを配置する、落ち着いた雰囲気を持つキャビンは、全体的に質感の高さが感じられるつくり。内装色はブラック系とベージュ系を中心に4つの仕様を用意。
左から、クロスオーバー、スポーツ、セダン、エステート。いずれも「クラウン」の名を冠して世界の主要市場においてグローバル展開されることになる。国内ではクロスオーバーは今秋にデリバリーが開始され、残りの3台も2023年中の発売が予定されている。
左から、クロスオーバー、スポーツ、セダン、エステート。いずれも「クラウン」の名を冠して世界の主要市場においてグローバル展開されることになる。国内ではクロスオーバーは今秋にデリバリーが開始され、残りの3台も2023年中の発売が予定されている。