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 最近では、神奈川県川崎市のコインパーキングでのバス放置がニュースとなったが、全国的にコインパーキングや私有地でのクルマなどの放置が問題となっている。

 以前ベストカー本誌でも、茨城空港の放置車両の現地取材を行ったことがあるが、放置車両でも所有者に無断でレッカー移動ができないし、何かすると逆に器物破損で訴えられる恐れがあるので、根気強く所有者に移動をお願いするしかない……という苦しい事情を聞いたことがある。

 そんな状況が、いま全国で発生しているのだ。なぜ警察は手を出せないのか? そしてなぜそんな状況を変えようとしないのか? やられ損の現状と、法改正の必要性について考察していきたい。

文/高根英幸
写真/AdobeStock(トップ画像=kesuku@AdobeStock)

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■日本の警察は民事不介入! 迷惑放置車両もレッカーできない現実

警察は民事不介入が基本姿勢。私有地での放置車両にはレッカー移動などを行なうことができないのだ(beeboys@AdobeStock)

 クルマは保管場所がなければ所有することができない。新車だろうが中古車だろうが、車庫証明がなければ登録することができない(軽自動車なら車庫証明が不要な地域も過疎地には存在する)。

 それは路上で保管することを法律でも禁じている、国土が狭く道路スペースに限りがある日本ならではの(海外では道路保管を認めている国もあるが、かなりタイト! 風土の違いというか……)法規制だ。

 駐車に関しても、日本の都市部の大部分は駐車禁止となっており、2005年から駐車違反の摘発に民間企業に委託してからは、駐車違反の取り締まりが非常に厳格になり、路上駐車は激減した。

 にも関わらず、クルマを乗り捨てて放置するような輩がいることが最近、問題になっている。無人のコインパーキングや空き地などにクルマを停めて置き去りにしたり、車内にペットを閉じ込めたままどこかに行ってしまう不届きな飼い主もいるらしい。

 警察が取り締まればいいのでは、と思う方もいるだろう。しかし警察は私有地での放置車両は、駐車違反ではないからレッカー移動などを行なうことができないのである。

 警察は民事不介入(刑法以外は警察の管轄外)が基本的な姿勢で、夫婦喧嘩の仲裁くらいには入るかもしれないが、一般の迷惑行為には関与しないようにしている。

 交通事故も事故処理や行政処分は行なうが、民事となる損害賠償などには相談やアドバイスなどもできないのは、そのためだ。行政処分も厳密に言えば警察は手続きを行なうが、処分を下すのは公安委員会であり、その判断は裁判所によって行なわれる。

 警察は刑法の番人であり、そこに含まれない迷惑行為には手が出せないのが実情なのだ。

■迷惑駐車の実体験で感じた警察の限界と親切ぶり

筆者が私有地での放置車両に困り警察を呼んだ時、車両そのものの撤去は当然してもらえなかったが、丁寧で親切な対応をしてもらった(xiaosan@AdobeStock)

 筆者も大昔に私有地での放置車両に迷惑を被ったことがある。小さなシャッター付きの倉庫を借りて、そこにクルマやバイク、それらの整備のためのパーツや工具を格納していたのだが、ある日その倉庫のシャッター前にクルマを駐車されてしまったのだ。

 クルマを出そうとした筆者は、当然ながらシャッター前に横付けされたクルマのためのにそれが叶わず、警察に助けを求めたのだが、パトカーは駆けつけてくれたものの、事態が急転して解決するようなことはなかった。

 まずパトカーに備え付けられているスピーカーで、所有者に対してクルマを移動するよう呼びかけた。しかし、そんな状態では逆に姿を現しにくい、というもの。しばらく待っても、持ち主が現れる気配はなかった。

 そして私有地であるシャッター前の敷地に乗り入れている車体部分と、道路へはみ出している車体部分を測定した。

 これで公道へのはみ出しが大きければ駐車違反としてレッカー移動などもできるのだが、丁度半分くらいの微妙な状態で警察は残念ながら手出しできなかった。このように私有地と公道の境界が意外なほど重要なのである。

 結局、警察は放置車両に対しては何もすることはできなかったが、筆者がクルマを使う用事(友人を送迎)をパトカーで代わりにしてくれて、とりあえずの用事は済ませられた。つまり警察は迷惑行為には手出しできないけれど、迷惑を被っているヒトに対してはできるだけ親身に対応してくれたのである。

 これまでもこうした事案は常々起こっていたのだろう。当時はコインパーキングなどまだ少なく、駐車違反の取り締まりも今ほど厳格ではなかったが、現在の環境そうした放置車両が増えているようなのだ。

 コインパーキングなどの有料駐車場では、精算すればとんでもない金額になるほど長期間に渡って停めっぱなしにして、どうみても不動車になっているようなクルマを見かけることがある。

 レッカー移動するとしても、どこに持っていくのかが問題となるし、移動に伴う作業でクルマが損傷すれば、器物損壊で逆に訴えられてしまう可能性もあるのだから、何ともやり切れない話だ。

 筆者も前述の放置車両の件では、なんだか泣き寝入りのようで納得がいかないため、タイヤの空気を抜いてそのままでは移動できないようにしてやろうか(ガレージ内にはエアーコンプレッサーはあった)と思い、警官に尋ねたところ「止めたほうがいい」と言われて諦めたのだった。

 タイヤの空気を抜くことは器物損壊にあたるとは思えないが、トラブルになりそうな行為をわざわざ行なうことは避けるべき、ということなのだ。

 憲法で法律に基づかない刑罰、つまり私刑は禁じられているから、勝手に処分したりすれば財産権を侵害したと訴えられる可能性もあり、元々自分は悪くないのにあとあと面倒なことになる。

■悪意のある放置と災害被害をどうするか

東日本大震災をきっかけに、災害時の廃車処分などはガイドラインが作成されつつある。放置車両についても法整備が待たれる(Paylessimages@AdobeStock)

 東日本大震災で津波によって流された車両の処分に困ったことから、災害時の廃車処分をどうするか自治体などが対策を進めたことで、現在はガイドラインなども作成されている。

 以前は所有者に確認を取る必要があり、なかなか撤去後の車両の処分が難しかったらしいが、現在は告知後6カ月経過すれば車両は処分できるようになっている。

 だが、登録を抹消する書類以上の廃車手続きは所有者が行なわなければならないため、自動車税が発生し続ける(自治体によっては車検を継続していない場合は自動車税の課税を停止しているところもある)場合もあるなど、問題は残っている。

 そして放置車両については、前述のとおり泣き寝入り状態であるため、法整備を進めて問題解消を図らなければ、この先、大きな社会問題となってしまう可能性がある。

 ペットなどを車内に閉じ込めている場合、虐待となることもあり、生命の危機となった場合に、クルマを壊してまで救助するべきか、判断が分かれることころだろう。

 長期間放置されているのは盗難車両や、故障して修理代がクルマの価値を超えそうな車両など、問題を抱えているクルマである可能性が高い。あるいはドライバーが急病で入院などしてしまったというケースも考えられる。

 クルマの買い取り業者などがクルマの価値を判断し、それを超える駐車料金となった場合には、クルマを代金として回収し、売却できるようにでも法律を改正しなければ、放置車両問題は解決しないのではないだろうか。

 それと警察は検挙率を落としたくないからか、盗難車両(自転車も含めて)の持ち主への返還には消極的な印象を受ける。これも改めていかねばならない問題だろう。

 日本は元々マナーやモラルが豊かな風土であったが、最近はそうでもない、と思えるような事件や報道を目にすることが珍しくなくなった。情報が豊かになった反面、人とのつながりが希薄になって情操教育が疎かになっていることの弊害が、こうした部分に現れている。

 他人に迷惑をかける行為も法制化、厳罰化して対応しなければならないのは、いささか寂しい気もするが、監視社会となって防犯カメラに撮られていても犯罪をする輩も出現している以上、対策を採る必要があるのは仕方ないことだ。

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